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Part1 2024年度共通テストの概況

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♦登壇者♦
代々木ゼミナール教育情報センター     顧問・主幹研究員 坂口幸世
代々木ゼミナール教育情報センター        主幹研究員 奥村直生
♦司会♦
代々木ゼミナール教育情報センター教育情報推進室  リーダー 木戸 葵

木戸 代ゼミ教育総研チャンネルをご覧いただきありがとうございます。
今日は「大学入試最前線!~2024年度共通テスト&最新動向~」という
タイトルで、共通テストなどの最新情報をライブ配信でお届けいたします。
 

 本日は、まず「Part1 2024 年度共通テストの概況」がどうだったのかについて、つぎに今年の入試がどうなっていくかというところで「Part2 2024 年度入試最新動向」を、そして、「Part3 2025 年度新課程入試の注目トピック」ということで、これからの入試を見渡せる盛りだくさんの内容でお届けしてまいります。

Part 1
2024年度 大学入学共通テストの概況


木戸 1 月 13・14 日に行われた今年の共通テストの志願者数は 491,914 人、そのうち現役生が 419,534 人、既卒生は 68,220 人 という志願状況となりました。
全体の人数は年々減少していて、今年ついに 50 万人を切るという結果となりました。割合にしますと、現役生の志願率 45.2 %、現役生の占有率 85.3 %ということで、既卒生の割合も年々減少していて、今年は 13.9 %となり過去最低となりました。
 


続いて男女別の割合も見てみたいと思いますが、女子割合は徐々に増加していて、男女比の差は縮まりつつあります。こちらは現役生のデータとなりまして、棒グラフは男女の差を表しています。

次にご覧いただくのが既卒生のものになります。

既卒生も差はどんどん縮まっていて、女子割合が約 3 割に迫ってきていて、男女差も縮まっていることがお分かりになるかと思います。
そこで、奥村さん、男女の比率の差が縮小しているということがデータからもわかりますが、どういったことが要因として考えられますか。

奥村 年々女子の比率が上がっているということですが、ちなみに前々身の共通 1 次における第 1 回目の女子比率は 24 %でした。ですから、そこから較べると女子の比率はだいぶ上がってきています。
ただし、現役生は 12.6 ㌽が 9.6 ㌽に狭まってはいますが、現状まだ 10 ㌽近くの差があるわけで、女子の比率が男子に追いついているところまでは行っていないことは確認しておいたほうがよいと思います。

浪人の方もかなりまだ差がありまして、上がっているとはいえまだ 40 ㌽以上の差があります。
女子比率が上がった背景には、もちろん男女格差の解消とか、大学入試においては 4 年制大学に行こうとする志向とかキャリア志向とかがあるかとは思いますが、まだ差があるということです。

坂口 大学だけでなく短大まで含めた進学率はむしろ女子の方が高いというところまでいっている。これはおもに大学の一般入試を目指す人という括りのなかの話ですから、まだこれくらいの差がついている、ということだと思います。


木戸 こちらは、共通 1 次から第 4 回の共通テストまでの志願者数の推移のグラフです。
今回 50 万人を切ったとお伝えしましたが、これは 32 年ぶりです。1992 年も 50 万人を切っていましたが、そこから増加をして、減少をして、今回 50万人を切るという結果となりました。

坂口さん、志願者のピークとなったのが 2003 年です。
そこから 20 年以上経って 50 万人を切りました。最近、“共通テスト離れ” という言葉を耳にしますが、やはり減少は少子化が主な要因になるのですか。

坂口 共通テスト離れとは、むしろ言えないのではないでしょうか。
なぜなら現役志願率はまだ上がっているわけで、今回も 45.2 %で去年より上がっている。
1992 年に受験人口のピークを迎え、その後受験人口が減っていったのに、
センター試験の志願者が増え続けたのは、私立大学でセンター試験利用が急拡大していったから
です。
“受験人口が減る、センター試験の志願者は増える”という時代があったのですが、私立大学の利用拡大が行くところまで行ってしまうと、そこで止まってしまうわけです。

今の状態では基本的には受験人口の減少、高校生の減少、18歳人口の減少に大体合わせて、共通テストの志願者も減っていく、ということになると思います。
ということは、もう増えることはない・・・と言い切っていいかはわかりませんが、たとえば大学進学のベネフィットが急に増大してくれば、そこで変わってくるし、逆に大学進学のコストが下がっていけば、受けようとする人が増えてくる。たとえば、大学教育の無償化とか・・・。

木戸 よく話題に上がっていますね。

坂口 その無償化が一部の大学だけでなく、全大学がそうなるとか。
あるいは私立大学のごく一部の定員だけが共通テストを使うのではなく、殆んどすべての方式で共通テストを必須化していくような入試が広がれば、また状況は変わってくると思いますけどね。

奥村 その点は、私大連が共通テストの実施の前倒しを何年か前に要望を出していますが、まだ実現していません。そういうスケジュールの問題もあるのですが、坂口さんがおっしゃったように、そこまでしないと増えないと思います。

坂口 早稲田大学の政治経済学部だとか、上智大学の併用方式だとか、あのような入試が全大学に広がっていけば、国公立はもちろん私立大学の志望者でも必ず共通テストを受けなければいけないというふうになるわけですけれど、それは現実的には難しいでしょうね。


 木戸 次に、大学入試センターから平均点の中間集計が発表されました(1/17)。集計数は志願者の約半分の 216,475 人分となりますので、そこから数字が変更していくこともありますが、平均点がアップしたのが 20 科目中12 科目、ダウンしたのが 8 科目となっています。
国語はセンター試験から5年ぶりに平均点アップとなり、また公民は倫理政経を除き平均点がダウン、理科は化学基礎を除きアップしています。

これを見ますと、文系型よりも理系型の科目選択者のほうが平均点はアップするのではないかと言われています。
さらに得点調整実施の可能性は低いと思われます。
坂口さん、中間集計の数字ではありますが、この平均点の状況を見ていかがでしょうか。

坂口 共通テストとなり 4 年目となりました。これまでも課程の切り替えのときは、難易調整が上手くいかず、難しすぎたり易しすぎたりしたケースがありましたが、共通テストが 4 年目になって、どう出せば平均点はこうなる、ということが大体わかってきたんだろう、と思います。
ただ、生物はプラス 7.26 点になっていますが、去年の得点調整を考えれば15 点くらいプラスになるわけです。
相当作り方を変えたのか、というと実はあまり変えていない。部分点を与えてそれで平均点を上げようとするようなテクニックも身につけてきたのではないかと思います。
来年は新課程になりますので、難易調整がまた難しいところが出てくると思います。

木戸 ここで安定したかと思いきや、また新課程に変わって、平均点のアップダウンがあるかもしれない、ということですね。



 

代ゼミの教材研究センターで問題分析したものをホームページの方にもアップしています。そちらの分析を簡単にまとめたものがこちらスライドになります。

1日目については、特に難しくなったと話題にのぼったものとして日本史、倫理、政治経済がありますが、英語リーディングは共通テストに変わってから一番難しくなったということでニュースでも報じられています。
赤字になっている部分が特に注目していただきたいところですが、難しいと分析されているものには資料の読み取り問題が多かったり、読解力を要する問題であったり、というような傾向があります。

2日目は、難易度がとくに難しくなったと分析している科目は無く、昨年並み、あるいは易化したものがあります。中でも注目していただきたいのが数学のⅠAとⅡB、そして物理
数学のⅠAは 2018 年の試行調査と類似した問題が出題されたり、ⅡB は数値計算より本質的な理解を問う出題が多かった、ということで、より共通テストらしい出題がなされたことがわかります。

★分析・問題・解答はこちら

★問題・解答はこちら

 

 

木戸 今回注目したいポイントとして世界史Bの「連動式問題」を取り上げたいと思います。スライドにありますように、選んだ番号によって解答番号13 、14 の解答が変わるという問題が出題されていて、点数を取りやすいような感じになっていますが、奥村さん、今回の共通テストの出題形式で注目しておきたい点はありますか? 

奥村 連動式問題は共通テストになる段階でいろんな試みをしようと言っていたもののひとつですが、今回ようやく出した、ということです。
4 回目となった試験全体を見ますと、もともと言われていた「思考力・判断力・表現力」を測るとか、社会生活や日常生活に出てくるような場面とか資料を複数用いて読ませるなどのコンセプトは、先ほどの平均点同様、出題がこなれてきたと思います。

ただ、4 年目になってちょっと気になる点もありまして、一つは、国語の試験において前身のセンター試験的な出題があちこちに見られた、ということです。来年からモデルチェンジを予定している国語が、逆に先祖返りしているということです。いったいこれは何なのか、ちょっと疑問です。
その方向性が来年以降どうなっていくのか。
来年は、毎年出すよと言いながら今回結局出なかったいわゆる「実用的な文章」がいよいよ出るわけですが、そういうことと合わせて考えると、今年の出題はどうなのかな、とちょっと思います。

もう一つ、細かいことですが、さきほど申し上げたいろいろな新しい試みの中に「会話文」を使うというのがあるのですが、今年よく見ると、化学と物理は会話文を使った文章を出していないのです。
過去さかのぼると、物理は去年まで出していた。化学は共通テストになってから出していません。
ということで、出している科目と出していない科目があります。
私は必ず出せとは言いませんが、科目によって足並みがバラバラなのかな、と。
複数の資料を用いて解かせるやり方も、それぞれの科目が創意工夫して頑張っていらっしゃるのでしょうけれど、方向性がバラバラで、いろいろな科目を解く受験生からするとかなりヘビーで厄介な、というよりも、はっきり申し上げて、面倒くさい部分なのかなと思います。

4 年経って、来年から新学習指導要領に基づく試験になるので、出題の形式ややり方を一回、全体を通して見直すとか統一感をとるとかを、大学入試センターの方で少し考えた方が良いのかもしれません。

坂口 その会話文が結局、量を増やしてるわけですよね。
それを読み解いていって、そこから情報を拾い集めるということがあるので、それが全体の難易度に影響している可能性がありますよね。

国語では複数の文章で問題を作るというのがありますね。
受験生にとって厄介という話がありましたが、作る方もたぶん厄介だと思います。関連する2つの文章を持ってきて、それで問題を作るというのは、なかなか難しいんだと思いますよ。
ですから、去年の問題では、梅崎春生の文章と電球の新聞広告をセットにしたりとかかなり無理なことをしていて、今回も大問 1 は生徒の感想文を出題する人が創作して、「はい、複数の文章ですよ」として出しているわけですよ。
それから、大問 3 の古文(擬古文)では 2 番目の文章を最初の文章の解説文を出題する人が創作して、しのいでいますが、かなり無理があります。

ひとつの文章に対して生徒の感想文というセットは、センター試験の時も出ていました。先祖返り的な部分はその部分もあるのかもしれません。
理想は高いけれど現実的にはどうなんだ、という疑問符が付いた高大接続改革の一つの側面が、こういうところに出ているのではないかと思います。

奥村 複数の文章を在るもので持ってこようとすると、これは奇跡に近いんですね。ネタ切れのようなことが起こっているのであれば、それは問題でしょうね。

坂口 源氏物語のようなものであれば、いくつもそれについての文章はあるでしょうけれど、今回の擬古文みたいなものを持ってくると、それについての文章を探したって見つからないんじゃないかと思うんですけれど。

木戸 これからは問題作成の持続可能性のようなものも問われてきそうですね。

<次回に続く>


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