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あのときの脇汗を忘れない。
少年は、イライラ棒がしたかった。
ただそれだけだった。
*
その日は、廣井くんの家に数人で遊びに行ったんだ。廣井くんの家に遊びに行ったのは初めてだった。廣井くんは、勉強熱心で真面目、ちびまる子ちゃんのキャラでいうところの丸尾くんみたいなやつだっだ。
廣井くんは、やたらと塾に行きたがる。だから、その日も16時半までという約束だった気がする。そこまで仲が良かった覚えはないけど、なぜか廣井くんの友達選考に通過して、彼の家にお邪魔したんだ。
3LDK+サービスルームのベタすぎるファミリータイプのマンションの一室。玄関左手にあるサービスルームは、物置みたいになっていた。廣井くんが飽きたであろうおもちゃがほったらかしにされていた。
そこにイライラ棒のおもちゃがあった。
ボクはすぐに気づいた。
テレビ番組「ウッチャンナンチャンの炎のチャレンジャー」の人気コーナー。電撃イライラ棒。ずっとテレビで見てたやつのおもちゃバージョン。ずっとやってみたかったおもちゃだ。
![](https://assets.st-note.com/img/1689316978145-JuaZMKim8p.jpg?width=800)
*
「あ!イライラ棒あるやん!」
食い気味にいうた。キャラ的に声を張り上げるタイプではないボクがイライラ棒にガブリと食いついた。
「やりたい?それおもんないで」
そんな感じのことを廣井くんは言ったんだ。瞬時に空気を読まなければいけなかった少年よよは、小声で「そうなん?なんかごめん」とでも言ったんだ。
*
結局、プレステの「ぷよぷよ」で遊んだ。家にゲーム機がないボクに、家にゲーム機ある勢を相手は厳しいものがある。圧倒的な力の差を感じた。みんなに「ぷよぷよ」でボッコボコにされた。最後は、皆の美しい連鎖をただただ眺めている観客でしかなかった。
*
16時半になった。
皆帰らなければいけない。
皆が帰る。
ボクも流れに乗って家を出る。
が。
エレベーターで一人後悔していた。
脳裏を霞むイライラ棒。。。
イライラ棒がしたい。。。。
・・・
「ごめ!忘れもんした!先帰っといて!」
一緒に帰るはずの友達に嘘をついて、一人廣井くんの部屋に戻った。
*
廣井くんには「家の鍵忘れた」とかなんとかテキトーなことを言った気がする。「やれやれ」と家に入れてくれた廣井くん。「一緒に探したいけど、ボクは塾の用意があるから」と部屋に帰っていった。
廣井くん、ナイス。
少しの間、部屋から出てくるなよ。
俺は、廣井くんが酷評したおもちゃで遊ぶぜ。
*
ついにこの瞬間が来た。
ずっとしたかってんイライラ棒。
ウッチャンナンチャンありがとう。
イライラ棒。。。。
やってみた。。。。
人の部屋で一人でイライラ棒。。。。
シーン。。。である。。。
シーン。。。
・・・・
・・・・
・・・・
ミスった。
と同時に。
ギャオオオオオオオオン!!!!!
と音が鳴る。
「アキラー!何してんの塾のじか。。。」
現れたのは、廣井くんのお母さんだった。
イライラ棒を握るワイと廣井くんのお母さんとバッチリ目があった。
・・・
廣井くんのお母さんは、状況を察したのか優しく微笑んだのち、一言。
「もう一回遊ぶ?遊んでてええよ」
と声をかけてくれた。
その瞬間、脇汗。
びっしゃびしゃである。
「す、すみません。帰ります」とかなんとか言ってそそくさを帰った。
それはそれは顔を真っ赤にしながらそそくさと帰った。
少年は、イライラ棒がしたかった。
ただそれだけだった。
けど、なにか悪い事した気がした。
とりあえず早よ現場から逃げないと。
チャリンコで家に帰った。
もちろん立ち漕ぎで。
・こぼれ話
イライラ棒懐かしい。
ゲーセンにもあったよね。
炎のチャレンジャー懐かしい。
1995~2000年の放送なんかぁ。。。
小学校の頃、みてたなぁ。。。
・最後に一曲
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