見出し画像

ヨーロッパと日本の大道芸フェスティバルを考察する。

大道芸フェスティバルとは
その名の通り大道芸のお祭り。
多くの大道芸人、ショーアーティストが一同に集まり
街中を自身の芸で賑やかす。

僕はこの大道芸フェスティバルが大好きです。
もちろんアーティストとして出演するのも
いちお客として参加するのも。

日本全国に、1年間に大小含めおよそ40ほどあるこの大道芸フェスティバル
ヨーロッパには400以上あると言われています。
(両方もっとあるかも。大道芸ファンが認知できる物が、と捉えてください。)

文化的に長く、深くショーカルチャーが根付いているヨーロッパでは
日本よりも一般的に大道芸フェスティバルが受け入れられていて
規模も大きい物が沢山あります。
世界中で最もフェスティバル文化が進んでいると思われます。(違ってたらごめん)

日本でもヨーロッパでも
多くのフェスティバルに出演してきた身として
お互いの違い、特性等を書き記していきます。

-

◇フェスティバルの多様性


ヨーロッパの大道芸フェスティバルには2つの種類があります。

Busking Festival Street Art Festival

一番の大きな違いは投げ銭の有無。
Basking Festivalでは各ショー終わりにお客さんからお金を集い
アーティストはそれを主な収入源とします。

対して、Street Art Festivalでは
ショーが終わった後投げ銭の要求がありません。
お客さんは純粋に各アーティストの作品を楽んだ後、財布を出す事なく次のアーティストの場所に向かいます。

Basking Festivalではアーティストが投げ銭を収入源にしている分
エンターテイメント性、派手さ、笑い、分かり易さを重視したアーティストが多く

Street Art Festivalはもっと自由に、ストリートを劇場のように使った「作品」を演じるアーティストが多い傾向があります。

Basking Festivalは一般的に応募受付型のところが多く、アーティストは自分で応募します。ほとんどの場合交通費やギャランティの条件は皆同じ。

Street Art Festivalは応募よりオファー制のところが多く、交通費やギャランティは交渉でとりきめる。
つまりアーティストは皆自分の作品に値段を付けており、出演アーティストの中でも貰ってるギャランティにかなりの差があったりします。

日本には今の所
このStreet Art Festival形式の大道芸フェスティバルはありません。
全てBasking Festival形式です。
(かなりArt Festivalに近い、この2つの間のようなフェスティバルは幾つかあります。)

その理由は文化的な側面もあるでしょうが
一番は予算の問題だと思われます。

Street Art Festivalを開催するには、べらぼうにお金がかかるんです。
行政か大きな企業がスポンサーに入ってないと、とてもじゃないけど運営できません。

日本各地で行われている「芸術祭」では、国や企業から多くの助成金やスポンサー料をもらい
様々なアーティストの作品を無料、もしくは入場料のみで楽しむことができます。

日本でも、ショーアーティストが中心となった「芸術祭」
開催されるといいなぁ。

-

◇出演アーティストの傾向の違い


ヨーロッパのフェスティバルでは、基本的に
アーティストが同じフェスティバルに何年も連続して出演するという事はありません。
そういったフェスティバルも偶にありますが、稀です。

日本のフェスティバルではそのほぼ全てで
出演アーティストが半分以上前回と一緒という現象がおきています。
つまり、フェスティバルにおけるアーティストの流動制が悪いんですよね。
しかも、別の地方のフェスティバルでもまた半数は同じ出演者。なんてことも珍しくありません。

原因は二つ。

・出演アーティスト数に対して、日本の全体的なアーティスト数が少なすぎる

現在、全国各地にある大道芸フェスティバルは30ほど。
それぞれのフェスティバルの出演者数は、規模にもよりますが20〜80組。
それに対して、こういったフェスティバルに呼ばれるような
日本のトップアーティスト数は150組ほど。(超個人的な概算)

毎年新しいアーティストを呼ぼうとすると
フェスティバルのクオリティがどんどん下がってしまうんです。
そして、どのフェスティバルも「良い」アーティストを呼びたい。

ヨーロッパはアーティスト数が多いのはもちろんのこと
フェスティバルシーズンには世界各国からアーティストが集まってきます。
400以上フェスティバルがありますから、その内3〜4出演が決まれば十分ツアーが組めるんですよね。

日本は島国で、海外のアーティストが気軽にフェスティバルに参加できる環境を作るのが難しい。
フェスティバルのクオリティを保とうとすると、どうしても同じアーティストを起用してしまうんです。

・日本はアーティストにファンがつく。ヨーロッパはフェスティバルにファンがつく。

SNSなどを見ていると、色んな大道芸ファンの皆さんの投稿を目にします。
「今度の〇〇のフェスティバルでは〇〇さんと〇〇さんが出るんだ!絶対いかなきゃ!」
「〇〇のフェスティバル、今年は〇〇さん出ないんだ…。行くか悩む…。」

当然の悩みだと思います。折角なら応援しているアーティストが沢山出るフェスティバルを見に行きたいですよね。

ただ僕はヨーロッパで、お客さんからこの意見を聞いた事がありません。
出演者が誰であろうが、毎年フェスティバルを楽しみにしている方がほとんど。
パンフレットを見て初めてどんな人が出るのかを知り、成り行きで見る人を探す。
もちろんお客さん同士情報交換をしながら、より良いアーティストを探したりもしますが
フェスティバルの何ヶ月も前からスケジュールとにらめっこし
入念に誰を見るかを決める、みたいな方は少ないです。

これはアーティスト個人にではなく、フェスティバル自体のファンだから。
このフェスティバルは毎回レベルの高い人が出演する、無条件で行けば楽しめるという
お客さんからの絶対的な信頼があるんです。

もちろん日本にも、フェスティバル自体に多くのファンを付ける事に成功しているものも沢山あります。
しかし、とある大きなフェスティバルのプロデューサーから
「どうして今年は〇〇さんを落としたんだ!という苦情は毎年寄せられる」
というお話を聞いたことがあります。

なんとも、日本っぽいですよね。

-

◇ヨーロッパでは、公演時間を自由に選べる


全てのフェスティバルが、というわけでは無いですが
ほとんどのStreet Art Festivalでは、アーティストが「何分時間を使うか」を自由に選ぶことができます。

10分しかやらない人もいれば
90分の作品を演じる人もいる。

フェスティバルの運営側が良い!と思えば
何分やってもいいんです。

対して日本のフェスティバルでは、全てのアーティストに同じ時間を提供するフェスティバルがほとんど。
準備撤収を含めて30分〜45分って現場が多いですね。

ちなみに僕の作品はおよそ15分。
準備片付けも含めて20分ほど。
投げ銭をいただく場合でも、長くて25分。

毎回、必ずと言って良いほど時間が余る。
フェスティバルに、不必要な「余白」が生まれるんです。

逆に、1時間やりたい!1時間あれば最高のショーができる!
というアーティストは、規模を縮小しなければいけないので実力を発揮しきれません。

なのでアーティストは皆フェスティバルに出る為
この30分〜45分に丁度良い作品を用意します。

10分が最高の人も頑張って引き延ばすし
90分が最高の人も何とかしてこの時間に収める。

フェスティバルを潤滑に行う為、全アーティストの公演時間を揃える
運営の方々の気持ちも十分理解できます。

もっと自由に、時間に縛られることなく
作品を披露できるフェスティバル
が増えたらいいなーとも思うんですよね。

-

以上、ヨーロッパと日本の大道芸フェスティバルの違いを
僕的に考察した記録でした。
数字的に間違ってる部分があればコッソリ教えてください。コッソリ訂正します。

超個人的な意見ばかりですが、少しでも何かの参考になれば幸いです。

Naoto

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?