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イジン伝~桃太朗の場合~

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『イジン伝~桃太朗の場合~』連載投稿を読みやすくするため、この一編をマガジンにまとめます。ご利用下さい。
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2020年2月の記事一覧

イジン伝~桃太朗の場合~XXII

前回記事【 堰を切ったように泣き続ける男に寄り添って昇降口から帰る女は細い腕を彼の背中に…

白庭ヨウ
4年前
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イジン伝~桃太朗の場合~まとめ(XV~XXI)

 バッハ、シューベルト、ベートーヴェン、シューマン、……。豊かな巻毛と不敵な笑み、知的な…

白庭ヨウ
4年前
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イジン伝~桃太朗の場合~XXI

前回記事【 揺さぶる腕がさらに激しさを増して木地川はか細い声で猿野に助けを求める。猿野は…

白庭ヨウ
4年前
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イジン伝~桃太朗の場合~XX

前回記事【 男が出てくる気配を察して猿野は慌てて戸から離れた。木地川を蹴り飛ばすようにし…

白庭ヨウ
4年前
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イジン伝~桃太朗の場合~XIX

前回記事【 猿野は耳をそばだて、ゆっくりと近づいていった。木地川は彼の隣に寄り添って囁く…

白庭ヨウ
4年前
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イジン伝~桃太朗の場合~XVIII

前回記事【 朗は鬼怒井の手の冷たさにぞっとして、目だけ自分の肩に走らせる。彼女はほとんど…

白庭ヨウ
4年前
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イジン伝~桃太朗の場合~まとめ(VIII-XIV)

 犬村は口を拭って袖口についた血を見、顔をしかめた。「どういうこと」  彼女は高く持ち上げられた鬼の片腕を踏み台に、今や大きな繭を形成したもう一方の腕に飛び乗った。繭は少したわんで彼女を受け止める。その間、鬼は硬直して動かなかった。高所から見下ろし、犬村は朗を認め胸をなでおろした。すぐ下まで来た朗は彼女に向けて手を伸ばし降りるよう促した。 「犬村、大丈夫なのか。さっきまでぐったりしていて俺たち心配したんだ」 「大丈夫よ、ありがとう。実は私にもよくわかっていないの。木地川と〈ハ

イジン伝~桃太朗の場合~まとめ(I-VII)

 朗(あきら)は今、「最高」に人生を謳歌している。  十四年の生涯で今日は絶対に忘れられ…

白庭ヨウ
4年前
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イジン伝~桃太朗の場合~ⅰ

第一回~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  朗(あきら…

白庭ヨウ
4年前
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イジン伝~桃太朗の場合~ⅱ

前回記事【朗(あきら)は今、「最高」に人生を謳歌している。  十四年の生涯で今日は絶対に…

白庭ヨウ
4年前
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イジン伝~桃太朗の場合~ⅲ

前回記事【「残念だったな。木地川と犬村はどうした」  朗は飲料で汚れた顔を袖で拭いながら…

白庭ヨウ
4年前
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イジン伝~桃太朗の場合~ⅳ

前回記事【 二人はその場に腰を下ろし、明けつつある空を見上げる。天球面、東西に等間隔で配…

白庭ヨウ
4年前
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イジン伝~桃太朗の場合~ⅴ

前回記事【 鬼は声の発せられた方向へ殺到する。針金状の体がぎらぎらと、なにやら殺気立って…

白庭ヨウ
4年前
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イジン伝~桃太朗の場合~ⅵ

前回記事【 そこには太陽の一つからまっすぐ光が差し込んでいた。ビルの白い外壁と外壁の間に続く狭い道。煙草や錠剤、アルミ缶が所々に落ちている。 「きたね。噂通り外縁っていうのは管理が行き届いてないみたいだな」  猿野は触れることすら御免こうむるというようにゴミの無いところを選んで歩いた。朗はひたすらに前進を続ける。猿野が離れないように彼の腕を掴んだままだ。自然、猿野は引っ張られる形で落ちていた缶を蹴り飛ばしてしまう。 「いって。朗引っ張り過ぎだよ。でもなんでこの缶こんなに重いん