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イジン伝~桃太朗の場合~

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『イジン伝~桃太朗の場合~』連載投稿を読みやすくするため、この一編をマガジンにまとめます。ご利用下さい。
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記事一覧

イジン伝~桃太朗の場合~まとめ(XXXXX~XXXXXVI)

 屋上からは世界のすべてが見える。朗たちが住んでいる世界は真っ二つにした団子みたいな半球…

白庭ヨウ
4年前
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イジン伝~桃太朗の場合~XXXXXVI

前回記事【 彼らは校門を出ると敷地を囲うフェンスに沿うようにして走った。街は校舎を中心に…

白庭ヨウ
4年前
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イジン伝~桃太朗の場合~XXXXXV

前回記事【 朗の家は学校からさほど離れていない郊外にあった。この表現に矛盾があると猿野に…

白庭ヨウ
4年前
1

イジン伝~桃太朗の場合~XXXXXIV

前回記事【 彼らが昇降口から出ると不気味な音が聞こえた。かすかな、それでも確かな一音の連…

白庭ヨウ
4年前
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イジン伝~桃太朗の場合~XXXXXIII

前回記事【「一体どうしたっていうのよ。そんな怖い顔をして」  突然猿野の隣の女子が声を震…

白庭ヨウ
4年前

イジン伝~桃太朗の場合~XXXXXII

前回記事【 朗はもと来た道を駆けに駆けた。鬼怒井がこの国の最高権力者に就いたとき以来、“…

白庭ヨウ
4年前

イジン伝~桃太朗の場合~XXXXXI

前回記事【 屋上からは世界のすべてが見える。朗たちが住んでいる世界は真っ二つにした団子みたいな半球で、円周部で天と地が交わりその先はない。閉じられたドームの中にいるようなものだ。この学校が世界で最も高い建築物だから見晴らしは格別なのだが、屋上にはめったに生徒がやってこない。  というのも、天球上に配置された九つの太陽が日没までじりじりと照り輝くからで、日陰を探そうにも一つの太陽から隠れれば残り八つの太陽に晒される有様なのだ。朗は脱いだ学生服を羽織るようにして日差しを遮ってはい

イジン伝~桃太朗の場合~まとめ(XXXXIII~XXXXIX)

「このあたりのはずなんだけど」  教室に戻るのではなく、犬村は教室棟の端へと朗を導いた。…

白庭ヨウ
4年前
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イジン伝~桃太朗の場合~XXXXX

前回記事【「もうやめなよ。まずはここから離れよう、ね。ハカセが来たらそれでもうみんなおし…

白庭ヨウ
4年前
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イジン伝~桃太朗の場合~XXXXIX

前回記事【 話し終えた猿野はぶるっと体を震わせ次いで朗と犬村を交互に見た。 「ハカセはき…

白庭ヨウ
4年前
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イジン伝~桃太朗の場合~XXXXVIII

前回記事【 何しろオレたちはもうすぐこの廊下を渡りきるところだったから、ハカセはほとんど…

白庭ヨウ
4年前
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イジン伝~桃太朗の場合~XXXXVII

前回記事【――ハカセが校長室に向かって来てるのがわかってオレたちは急いで引き返そうとした…

白庭ヨウ
4年前
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イジン伝~桃太朗の場合~XXXXVI

前回記事【「大丈夫」  木地川が振り返って四つん這いになった猿野に寄り添った。嘔吐の内容…

白庭ヨウ
4年前
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イジン伝~桃太朗の場合~XXXXV

前回記事【 一人は背の低いやせっぽちの赤鼻少年で、もう一人はひょろひょろした眼鏡の少年。そして二人とも着ている制服はあちこち擦り切れて、そのボタンのいくつかが取れてしまっていた。ほつれた糸が淋しそうに生地から生えている。  二人はまさかそこに誰かがいるとは思っていなかったので口を開けたままびくりと体を震わせた。反射的に胸の前で腕を交差させたときに辛うじて糸と繋がっていたボタンが外れて飛んで朗の前に転がる。 「お前かよ」  心底うんざりだ、というのが丸裸な声色に赤鼻の少年はむっ