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正しい言葉

多分、言葉を覚えるもっと前。言語で思考を始めるもっと前のこと。例えばきみは愛という言葉の意味を、今よりもずっと深くそして鮮明に理解していた。人と人とが自らの境界すなわち皮膚を通じて互いにふれあい、体温を交換しあうことで、からだの中に入りこむような存在として、この言葉の意味すること、愛とは愛であることをきみは理解していたはずなんだ。

ところがいつか、きみは言葉を学び、言葉で思考するようになり、言葉を通してでなければ、自分の思いに気づけなくなってしまった。言葉はきみの思考と感情を確かなものとして具現化することができるので、正しく使えば事象のより深い理解を育む上でとても便利なものだけれど、今抱えている心の痛みや感じている疼きを本当に正しい言葉に置き換えることが出来ているだろうか。つい安直な言葉で、抱いた思いを写像してはいないだろうか。

言葉が軽い。そう感じることがある。軽い言葉でふんわりと思いを口にしていないか。もっともっと心と向き合って思いをきちんと理解して、それから言葉にしたいと思うんだ。

言葉の力を信じる者として、言葉にできない思いはないことは一切疑わない。まず心の中に自然と湧き上がる思いがあって、それを自ら理解し人に伝えるために言葉があるはず。

もっともっと自分の心に深く潜って、自分の本当の思いを解ってから、きちんと選んで言葉にしたい。

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