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是枝裕和さんら映画監督6人が、立場利用した性暴力に反対。

映画監督の是枝裕和さん、諏訪敦彦さん、岨手由貴子さん、西川美和さん、深田晃司さん、舩橋淳さんの6人は3月18日、「私たちは映画監督の立場を利用したあらゆる暴力に反対します」と題した声明を発表した。

これに先立ち、3月9日に週刊文春は、俳優で映画監督の榊英雄氏に性的行為を強要されたと訴える複数の女性の告発について報道。榊氏が一部の女性と関係を持ったことを認めた上で、性行為の強要は否定したと報じている。

(HUFFPOST 2022年03月19日の記事より引用)

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私が東京のシナリオ学校で脚本修業していたころ、某老舗映画会社のプロデューサーは平気な顔で「あの女優とヤッた」「あの監督はあの女優と出来ている」という話を武勇伝のように喋っていました。監督より、プロデューサーのほうが異性へ「枕営業しろ」と命じていたように思います。

いまはもう、そんな時代ではありません。そんな穢らわしい現場で良い映画、オモシロイ映画は創れません。

この6人の監督の宣言が、日本映画界を浄化してほしいと思います。

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【映画監督たちの声明文】

私たちは映画監督の立場を利用したあらゆる暴力に反対します。

映画監督による新たな暴力行為、性加害が発覚しました。報道されている行為、その内容は決して許されるものではありません。被害にあわれた方々がこれ以上傷つくことがないこと、また当該の映画監督の作品において権限のある立場の関係者は、その現場で同様の問題がなかったかを精査すること、もしあった場合には被害者のために何ができるかを検討することを望みます。「映画に罪はない」と拙速に公開の可否を判断する前に、まず被害者の尊厳を守ることに注力すべきです。
 被害者への誹謗中傷、二次被害、三次被害につながらないための配慮が、メディアにも、私たちにも求められます。

 映画はひとりの力で作ることはできません。監督だけではなく、プロデューサー、技術スタッフ、制作部、演出部、そして俳優部、多くの関係者の協働によって一本の映画が成立します。だからこそ、互いの人格を尊重しあうこと、仕事上の大切なパートナーであるという意識を持つことが必要です。
 特に映画監督は個々の能力や性格に関わらず、他者を演出するという性質上、そこには潜在的な暴力性を孕み、強い権力を背景にした加害を容易に可能にする立場にあることを強く自覚しなくてはなりません。だからこそ、映画監督はその暴力性を常に意識し、俳優やスタッフに対し最大限の配慮をし、抑制しなくてはならず、その地位を濫用し、他者を不当にコントロールすべきではありません。ましてや性加害は断じてあってはならないことです。

 撮影現場の外においても、スタッフや俳優の人事に携わることのできる立場にある以上、映画監督は利害関係のある相手に対して、自らの権力を自覚することが求められます。ワークショップのような講師と生徒という力関係が生まれる場ではなおさらです。
 以上のことを、まずは私たち映画監督の立場から書きましたが、プロデューサーや助手を率いるスタッフも、十分に気をつけなくてならないことです。パワハラやセクハラはジェンダーを問わず誰もが加害者、被害者になりえますが、映画業界がいまだに旧態依然とした男性社会であること、性差別が根強いことを考えれば、キャリアのある男性から率先して自身の特権性を省み、慎重に振る舞わなくてはなりません。さらに、その価値観を当然として受け入れてきた女性の監督、プロデューサー、スタッフもまた例外ではないでしょう。

 映画の現場や映画館の運営における加害行為は、最近になって突然増えたわけではありません。残念ながらはるか以前から繰り返されてきました。それがここ数年、勇気を持って声を上げた人たちによって、ようやく表に出るようになったに過ぎません。被害を受けた多くの方がこの業界に失望し、去っていった事実を、私たちは重く受け止めるべきではないでしょうか。
 私たちには、自らが見過ごしてきた悪しき慣習を断ち切り、全ての俳優、スタッフが安全に映画に関わることのできる場を作る責任があります。そのために何ができるかを考え、改善に向けたアクションを起こしてゆきます。

 私たちの声明にご賛同頂ける方は、是非 action4cinema@gmail.com までメッセージをお送りください。
 最後に、イギリスのロイヤル・コートシアターにおいて、2017年にセクシュアル・ハラスメントとパワー・ハラスメント防止策として劇場で働く人々に向けて掲げられた規範の一部を抜粋、引用します。

「私たちは、自分が持っている権力に責任を持たなければならない。
自分より弱い立場にある人たちに対して、
その権力を不当に行使しないこと。
自分の欲すること、それを欲する理由、
それを手に入れるために自分が何をしているか、
そして、その自分の行動がどのような影響を与えるかを考えること。
創作のためのスペースは、安全でなければならない」

是枝裕和、諏訪敦彦、岨手由貴子、西川美和、深田晃司、舩橋淳(五十音順)

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