【エッセイ】４月１日

　アポを取り、銀行へ融資の相談に向かった。

　フードトラックをやると言い出し、初めて訪れたのが2021年2月。あれから約1年。「僕の事業なんかきっとちっぽけな扱い額なんだろうな」と恐縮しながらも、いつも親身になってくれる信金さん。

　打ち合わせもそこそこに、先方から「実は今日付で異動になりまして…」と言われてしまった。僕にも昔、スーツの営業時代なんてのがありまして。取引先社長に「担当が変わることになりまして…」なんて死ぬほど言っていたはずなのに。こうして十数年ぶりにその言葉に触れ、しかも挨拶される側になるとは。事業主としての自覚がまた芽生える。
　とっさのことに返答がすぐに湧かず、数秒後にやっと、新天地でのご活躍をお伝えした。そして時間差で「あ。今日は4月1日か。」とジワった。

　家から歩いて行ける祇園の支店。行きの道ではいそいそと観光客の間をすり抜けてきた。

　帰り道。顔を上げてみたら、青いスーツ、入学式の看板、爽やかに刈り上がった襟足など景色が全然違って見えた。そしてさっきまで余裕のなかった自分が少し恥ずかしくなった。

　満開の桜の木もあれば、枝先に、蕾がまだたくさん付いているものもある。

　新生活。新社会人。ご入学。ご栄転。

　すべての方々、おめでとうございます。

　そしてこれから、
　何卒よろしくお願い致します。

　🌸🌸🌸