【コラム】今思えばアウティング。
アウティング(Outing)…本人の了承を得ずに秘密をバラすこと。カミングアウト(come out)は「本人が誰かに打ち明けること」ですが、アウティング(outing)は要は「バラす」ことです。
※2015年にゲイだった大学生が友人にアウティングをされ自殺した事件は僕としてもセンセーショナルでした。
昨日、差別をテーマにした本を読みましたという投稿をしたので、自分の差別体験も少し振り返ってみました…
■「あなたのことをもっと知ってもらいたくて」
高3の頃。信頼していた女性の友人にゲイであることをカミングアウトしました。その友人は泣いて僕の話を聞いていましたし「そんなこと言われても、私は友達を辞めないからね!」とかなんとか言っていました。
でもその数週間後に別の友人数人から「ねえねえ、あなたって男のこと好きなん?」と聞かれビックリしました。とっさに濁しましたが(当時の僕にはそれくらいしかできなかった)、僕には確信がありました。
それはその女友達の彼氏だったし、
それはその女友達と僕の共通の親友でした。
「だって、あなたのことをもっと知ってもらいたくて!私の大切な人達だし信頼できるからきっと大丈夫!心配しないで!」
と。
当時の僕にとってカミングアウトは一大決心でした。「じゃあなんで事前に一言僕に言わなかったの?」と聞いた僕ですが、『怒り』よりも既に、『諦め』や『絶望』の方が大きかったと思う。その上で、「僕はこれからこんな世の中に出ていかなきゃいけないのか」という『覚悟』のようなものが、その時生まれたのかもしれません。
僕の方から遠ざかりました。
■「お前、きしょいよ」
同時期。僕は変わろうとしていた。
本当に、僕が信頼できる数人にだけカミングアウトしたつもりだった。それでも話は広まっていたらしい。
僕は高校卒業後に親友を一人亡くし、その葬儀の日に久しぶりに同級生にたくさん会った。その式の最中、知り合い程度の男子何人かに囲まれ「なあ、お前って男のこと好きなんよな?聞いた。きしょい。」と言われた。それをただ聞くだけで、口に出さなかった奴もいた。
僕は震える声で「それ今、関係ある?」と言い、遺影の親友と目を合わせた。彼は僕がゲイだと普通に受け止めてくれていれくれていたから亡くしたのは今でも悔しい。
それ以来、その男子らとはまさか会ってもいない。
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―—そんなことで心底嫌な気持ちになったこともあったなぁと......
『アウティング』というと大そう凄い犯罪のように聞こえるけど、別に構え過ぎる必要もないと思う。
日常会話の中でも「私の(僕の)友達さ、今度紹介してあげるよ!こういう仕事してて、どこどこに住んでて、結婚してたけど最近離婚したから独り身だし、あんた、釣っちゃいなよ!笑」とか勝手に人の情報なんてペラペラしゃべちゃうもの。
ただ、聞き手に変なバイアスを持ってもらうのは困るので、そこはちゃんと最終的には本人とその”他人”とが知り合って信頼関係築ければいいんじゃないのって思う。
僕は今の友達のことは信じてるし、彼ら彼女らが僕の知らないところで「こういう友達がいてさ~・・・ああ、ちなみにゲイなんだけど・・・」とか言ってくれても全然いい。
むしろ最近では、たまに現れる、僕をイジメてくる奴を、僕がほっときゃいいと思っていたら、周りの友人らが憤慨して蹴散らして「そんな奴、地獄に落ちろ!」と一斉に呪いをかけてくれることが大変に心強い(笑)有難う。
『アウティング』という言葉さえなかった時代。
『アウティング』という言葉が確立された時代。
そしてまたなくなればいいと思う。人を紹介するのはとっても日常的なこと。