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ジュークとハタチの同窓会【フォトギャラリー短編】

「先生、お元気ですか。私、立岩です。小学校4,5年生のときに担任していただいていました。」
若い女性からの電話。何のセールスかと思ったら、思いもよらない同窓会の誘いだった。私は、小学校の教員をしている。

「担任していただいた先生に、できるだけたくさん連絡しているんです。急だと思いますが、みんな楽しみにしてるので、参加していただきたいです。」

若い女性は、小さくてまじめな印象のあの女の子だった。そんなにはしゃいでいた印象はないけれど、電話越しに、礼儀正しく、今の生活を楽しんでいる様子が伝わってくる。

あれから、10年か。4年生のころのあの子はちょうど10歳だったから。
「みんなハタチになります。ぜひ来てください。」

迷ったが、行くことにした。私の他にも何人かの先生方が参加されるという。
会場に向かう電車に揺られながら、心が躍っていた。
あの子は、どんなになっているのだろう。あのことは覚えているだろうか。
今はどんなことに夢中になっているのだろうか。将来は何を夢見ているのだろう。

ハタチかーーーー。いや、まだこの時期、誕生日を迎えていない子もいるぞ。

ふと一抹の不安を感じた。これは、本当に大丈夫か?
「先生も一緒の同窓会、未成年飲酒!」
新聞の朝刊の見出しが浮かんできた。不祥事だ。これはあってはならない。
きちんと注意しておかなければと思いながら、道を急いだ。

会場に着くと、立岩さんが受付をしていた。
立岩さんは、大きくかわいく成長していた。花柄のドレスでにっこりとほほ笑んだ。道ですれ違ってもわからない。けれど、あのころの面影はしっかりと残している。懐かしい笑顔だった。
「先生、来てくださってありがとうございます。ここが受け付けです。
みんなには身分証を見せてもらっているんですよ。まだハタチじゃなくて、お酒飲めない子もいるから。先生はハタチ以上ですよね」

なんて、気が利いているのだろう。
楽しいことに夢中になれるだけではなく、モラルもきちんと守れる子たちだったな。
「先生は、十分ハタチを超えてるよ」
立岩さんは笑っていた。

私は、安心して酒を飲んだ。たくさんの教え子とも近況を語り合った。
立岩さんとも一緒に写真を撮った。

この子たちの将来は広がっている。
ハタチ、よい響きだ。
分別ある大人の響きだ。


(お礼)tukamatterさん、素敵な写真をありがとうございました。長いときを経て、再開する喜びがありますね。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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