NPB公式試合球

いかにして自分はスポーツ観戦好きになったか

父がスポーツ観戦好きだったせいで、子供の頃からやけにいろんなスポーツを観に行った。

野球・サッカー・大相撲・ボクシングタイトルマッチといったメジャーなスポーツにはじまり、ラグビー・バスケ・バレー・陸上・マラソン・アイスホッケー・フィギュアスケート・体操・卓球など、なんでも観に行った。

まあ単にそれだけだったら、一度くらいは行ったことあるよと言う人がいるかもしれない。
が、ウチの場合は頻度も多かった。
そしてどの競技も、とくに応援しているチームがあるわけではなかった。
説明が難しいのだが、スポーツ自体への愛をもってスポーツを観ていた、というのが一番近いと思う。

スタジアムのチケット売り場に置いてあるポケットタイプの年間予定表をもらってきて、「このチームはまだ観たことがないから」という感じでカードを選んでは、観戦計画を立てる。

とくに旧国立競技場には、サッカーやラグビー、陸上の国際大会などで一体何度通ったか分からない。
相撲は国技館でやる本場所だけでなく、神社での奉納相撲なんかも観に行った。
プロ野球ではファーム(2軍)の試合をわざわざ見に行ったり、「高校野球の東京都予選が面白い」と言って近所の草野球場に行くことまであった。

父は野球だけは巨人ファンだったが、球場として実は東京ドームよりも神宮球場のほうが好きで、あの雰囲気を味わうためにヤクルトの試合でも観に行ったりしていた。
だから私も今でも神宮の雰囲気のほうがリラックスできる体質だ。

ある時、私の勤めていた会社が福利厚生でヤクルトの年間シート(普段なかなか座らない内野のいい席)を保有することになって、チケットをもらえる順番が回って来た時は、初任給をもらった時よりも「親孝行できたなー」と思った(笑)。
そして観に行った試合で、なんと父の両ひざの間に真上からスポーンとファウルボールが落ちてきたのだ。パッと両手を出せば簡単に取れるような状況だったので、「来る、来る、取れるー!」と周りの風景がスローモーション映像になった。しかし、横を見ると父はなんと唐揚げを噛み切っている真っ最中で手が離せず、それを取り損ねたのだが、転がったところを私が拾ってめでたく”プロ野球公式試合球”を手にした。
「これでさらに親孝行できちゃったなー」と思ったものだ。

松ヤニで少しベタついたあのボールは、今も大切に持っている。

当初父は、私にいろいろなスポーツの面白さを知って欲しいという教育的な思いがあったのか、それとも単に自分が観たいものに私を連れまわしていただけなのか、今となってはナゾである。
ただスポーツ観戦に出かける時はいつもワクワクしたし、行くたびに豆知識が増えて楽しかった。
知識が増えると、次に観に行くときはもっと面白い。だんだん見方が深くなっていって、行きも帰りも話が尽きない。
子供の頃は連れて行ってもらっているという感覚だったのが、大きくなってからは父といろいろなスタジアムの門をくぐりながら「趣味が合うってこういうことなんだろうな」と思うようになった。

ちなみに母はまるっきりの無関心で、ほとんど呆れ気味であった・・・

ともかくこうして私はスポーツ観戦が好きになっていった。

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