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不審者が飛んでいます

最近近所に不審者らしき人影がいる。
毎晩、人が寝静まった夜遅くにひとりで何かしているようだ。

耳を澄ますとヒュンヒュンと何かムチのようなもを回している音が聞こえる。
目をこらすと小刻みに揺れている。

パチンッッッッ!


「いってっっっ!」


怪しすぎる。夜中の公園でひとり紐を振り回すやつなんて聞いたことがない。

待ってくれ通報はやめてくれ。


違うんだ。僕だ。


自白する。僕なんだ。


ランニング10kmを毎日やっても全く腹筋が割れないのでなわとびを始めた。
なわとびなんて小学校ぶりだ。
鉄腕アトムのテーマに合わせて校庭でやっていた。

あの光景、なわとびを知らない人が見たら腰を抜かすだろう。



なぜなわとびを選んだのか話そう。
腹割りたいなら腹筋やれよという意見は一回置いておこう。
(腰が痛すぎて続かないのだ)


以前話した通り僕はテラフォーマーズという漫画が大好きだ。
その中で特に鬼塚慶次というキャラが好きで、彼はボクサーだ。



いち学生のくせに二階級制覇のプロボクサーに憧れるなんていい度胸である。
それに加え、「KATSU!(あだち充)」という漫画も好きだ。
美人の同級生水谷に近づくべく、主人公の活樹がボクシングを始める話である。
あだち作品の中では知名度こそ低いもののファンをうならせる隠れた名作的ポジションの作品だ。
(QあんどAも好きだぞ)

その中で美人の水谷(家がボクシングジムで彼女自身超強い)が元ボクシング部の船田にボディに入れたところで

「効くでしょボディー、1年間走り込みもナワ飛びも腹筋もやってない人には。」

と名台詞を吐く。
その作品を読み返して僕は「よし、ナワ飛びやろう」と思った。

見てられないくらい単純だ。


僕はボクシングがやってみたい。
でも今はジムの入会金を払うだけのお金もないので100円のなわとびに甘んじている。
お金が貯まりジムに入ったらなわとびの成果を発揮したい。


久しぶりにやってみるとなわとびはめちゃくちゃむずい。
10km走った後のゴボウ足と大学1と称された僕の跳躍力の低さが相まって全然続かない。
5分と持たない。


ネットには5分×6セット(インターバル1分)と書かれていた。
くやしい。
何ヶ月か続ければ5分間飛べるようになるだろうか。

そして何年か続ければあの大空を飛び立てるだろうか。



国語の教科書に載っていた「ちいちゃんのかげおくり(あまんきみこ)」という作品を覚えている方はいらっしゃるだろうか。
かげおくりとは自分の影を10秒間見つめた後すぐに空を見ると影の形が空に映って見えるというものだ。

その授業中に、実際に校庭でかげおくりをやってみようということになった。
みんな各々「すごい!」「見える見える!」と感想を言い合いちいちゃんに思いを馳せたものだ。

しかし僕は何度やってもかげおくりができなかった。
僕の影は地面に張り付いたままだ。
理科の授業中にルーペで友達の靴を燃やしかけて超怒られたT君ですらできていた。くそう。

先生に「できた?」と聞かれ僕は「できたできた!」といって真っ青な空を見上げたことがあった。
大人の階段を登った瞬間だった。


あの時のことは今でも悔やまれる。
なわとびを極めた暁には影どころか全身を送ってやりたい。
「ちいちゃんのかげおくり」ならぬ「ようちゃんの全身おくり」だ。
怖すぎる。妖怪全身おくり爆誕だ。


とにかくなわとび頑張ろう。


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