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東京結界

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術師たちが東京の結界を守るお話。
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#創作

【断片小説】東京の術師たちの物語14

 俺は気づくと地面に倒れていた。どこだかわからないが、どこなのか気にする余裕もないくらい気持ち悪い。吐きたい。頭痛もするし、酷い二日酔いのようだ。
 俺は必死に頭を上げて天井が回るような視界で周囲を確認する。よく見えないが、すぐそばには誰かがいる気配がした。
 しばらくしてようやく周りの景色が入ってきた。焦茶の木目のフローリングに黒いテーブルが見える。奥の方にはスキップフロアで一段上がっている。そ

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【断片小説】東京の術師達の物語13

「それはできない。」
 四戸は一言だけ答えた。
 この捜査から降りることはできないと言うか。
 今回の事件は四戸にとってかなり危うい。自分の父親がどういう立場かはまだ不明だが、もしかしたら容疑者になるかもしれない。
 そんな状況で私情が入った捜査でもされたらこっちはたまったもんじゃない。俺がコイツの都合に振り回されることは避けたい。
 それに、ここまで頑なに捜査に参加しようとしているのを見ると逆に

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【断片小説】東京の術師たちの物語12

「人の魂魄だ。」
 留火人は随分と落ち着いた声で一言そう言った。
 対照的に紅炎は額に嫌な汗を浮かべている。
 どちらの反応が正しいのか、俺にはさっぱりわからない。
 それよりも、留火人の言葉を正しく処理できていない俺がいた。
 魂魄…。魂魄って、あの、魂ってこと?
 人間が死ぬと1グラム軽くなったから魂の重さは1gだって有名な、あの魂?
 この魂魄には元々肉体があって、そこから抜け出したか取り出

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【断片小説】東京の術師たちの物語11

 柘に着いてきた俺と四戸は、応接間であろう座敷に通される。俺たちにここでしばらく待てとの指示を出した柘は火焔宮の主を呼びに出ていった。
 俺は部屋をぐるっと見回した後、どうしても気になっていたことを四戸に聞いてみる。
「お前、本当は宵業じゃないのか?」
 四戸は俺の問いに眉間に皺を寄せる。
「いや、ほら、さっき言ってただろ。空宵宮に仕えるとかなんとか。」
「さっきの柘だって火焔宮に仕える術師だろ。

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【断片小説】東京の術師たちの物語⑩

 スピード超過に信号無視の危険運転をしてたどり着いたのは火焔宮。いきなり核心をついていくのか?宮殿が絡むならもっと外堀から攻めていかないと。もし間違いがあれば俺たちは後がない。立場どころか命がかかってしまう。
 車を降りて火焔宮の扉へ向かおうとする四戸を俺は呼び止める。
「四戸!待て!待て待て待て!」
「なんだ?」
 鬱陶しそうにこちらを振り返った四戸は腕を組んで俺を見てくる。一応、話は聞いてくれ

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【断片小説】東京の術師たちの物語⑨

 俺が係長の言いつけを守らず、しかも四戸に正式に依頼されたわけでもない。いや、お願いされたが断った。その後何故か俺の車に四戸が乗っていて、いつの間にか一緒にスカイツリーまで来てしまった。完全にやらかした。経緯が有耶無耶すぎる。言い逃れができないと思うと俺は何も言えなくなった。俺は何を言うのが正解なのか考えようと重い思考回路を起動させていると四戸が沈黙を破る。
 「石留警部、申し訳ありませんでした。

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【断片小説】東京の術師たちの物語⑧

【断片小説】東京の術師たちの物語⑧

 殴り合いにはならなかったが、一触即発のムードで四戸と言葉でやり合っていたところを多くの人間に目撃されてしまった。これは何とも恥ずかしい上に特にゴシップ好きな同僚に見られていたことに後から気づいた俺は頭を抱える。
「派手にやりますね〜。」
 林はニヤつきながら俺を見てくる。男のくせにゴシップが好きななのはコイツの術式によるものか。
「派手なのは俺じゃない。アイツだ。」
 ダメだ。今ので完全に悪目立

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【断片小説】東京の術師たちの物語⑦

【断片小説】東京の術師たちの物語⑦

 現場に到着し車を路肩に停めると四戸はスタスタとソラマチ広場へと歩いていく。俺を待つそぶりもなく。俺は慌てて追いかけた。
 すでにショーが始まっているのだろう。広場には人だかりができていた。
 マジックショーと言っても路上でやってるんだからそんなに時間はかからないはず。これが終わるのを待って声を掛けるんだな。そう思っていたが四戸は人混みの中を掻き分けて進んでいく。
 まさか…とは思いながらも、俺は

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【断片小説】東京の術師たちの物語⑥

【断片小説】東京の術師たちの物語⑥

 「そもそも、遺体に火をつけたタイミングがわからない。」
 俺は敢えてボカして言う。明確に言うと四戸に自分の父親がどう殺害されたのか考えさせるようなものだから。あまりに酷だ。本来、身内が絡む事件ならば担当から降りるべきだ。だがそうできない事実があるのか。
 コイツも俺と同じように九曜会の命令で捜査しているのだろう。あまり強くも言えない。宵業の事情かもしれないし。他人の組織には口を出せない。
 だか

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【断片小説】東京の術師たちの物語⑤

【断片小説】東京の術師たちの物語⑤

急に警視庁まで尋ねてきた四戸。何しにきたんだ?俺の身辺調査か?俺が生まれつき能力があって爺ちゃんが死ぬまで宵ノ会に未登録だったことをかぎつけてここにきたのか?何か罰を与えるために?どんどんネガティヴな方向に妄想が広がっていく。俺は沈黙に耐えきれず四戸に問う。
「ただの妖霊部の刑事に宵業が何の要だ?」
 四戸はまた何かを言い淀む。やはり耐えきれず俺は詰め寄る。
「何?あの火災事件を手伝えって?それと

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【断片小説】東京の術師たちの物語④

【断片小説】東京の術師たちの物語④

 宵月と呼ばれた男は跪き頭を垂れる四戸を黙って見つめる。ひんやりとした空気が張り詰めるのがわかった。宵月が発する気だろう。だがその矛先は俺ではなく四戸だ。
 顔を伏せている四戸の表情は分からないが、手がかすかに震えている。俺のソファで優雅に図々しくも自分で珈琲を淹れて飲んでいたあの四戸が震えてるなんて、この宵月と言うか男はどんなに恐ろしい人なんだ?というか、そもそも人間か?人間にしてはあまりにも神

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【断片小説】東京の術師たちの物語③

【断片小説】東京の術師たちの物語③

 睡魔に抗えずにそのまま眠ってしまったらしい。カーテンの隙間から陽が入り込み顔を照らす。眩しくて起きた。時計を見るとまだ6時。あと1時間は寝られる。再び目を閉じようとした時、式神が出続けていることに気づいた。一度解除しようと人差し指と中指を立てて薬指と小指を親指で押さえて空中を横一文字に切ろうとしたその瞬間。
「待て、まだ読んでいる。」
 読んでいる人がいるのか、じゃあもう少し出しておこう。手を納

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【断片小説】東京の術師たちの物語②

【断片小説】東京の術師たちの物語②

帰り道の後半は妖霊の恐怖なんて忘れていた。俺の歌姫テイラー・スウィフトのおかげだ。鼻歌まじりに警視庁妖霊部の部屋へ帰ると係長と目が合う。
 彼女は石留あかね。男社会の警察には珍しい若い女性管理職だ。国が女性管理職を増やそうとしているから、というのもあるが、そもそも、妖霊部という特殊な人間が集まり特殊な事件を担当できる者は限られる。

 男で優秀な術師は大抵、名家旧家で正統後継者として家業を継いでい

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【断片小説】東京の術師たちの物語①

【断片小説】東京の術師たちの物語①

「二度と話しかけんな。」
 俺は怒りを抑えきれず相手を殴り、冷たい言葉を浴びせてしまった。普段の俺ならありえないことだが。この時の俺は侮蔑の目をしていたと思う。反省はしていない。

 ことの始まりは昨日。逆らってはならない人から逆らえない命を受け、一人である現場を調査中だった。
 現着してすぐに、やっぱり断ればよかったと後悔した。
 一般の刑事もそうだが、一人で行動させるなんて普通はありえない。理

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