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俺と師匠の情熱seitai life season2 全身関節編 2

全身関節セミナーでの自己紹介後。先生の話を聞きながら、ふと俺を整体の道に導いてくれた最初の師匠のことを思い出した。

整体師の前は自動車関係の工場を転々としながら自由気ままに暮らしていた。今よりかなり痩せていたから女性にもモテた。だけど生涯独身で良かったし、仕事も一生工場で日銭暮らしでいいと思っていた。

平凡な日々は突然崩れる。ハードワークとストレス発散の酒の日々、ギックリ腰からのヘルニアの診断決定、そしてリーマンショック。仕事がなくなり腰の手術をするか悩みながら終日満員御礼の職安通い。とりあえず町工場で働けることになった。

震災が起きた。何とも言えない日々が続く。街も職場も通勤の道でさえも悲しみに溢れていたように感じる。活気がない。

あれだけ世界が滅びたらいいのになと、ガキの頃から思ってた俺だが目の当たりにすると自分のことをなんてクズ野郎だったんだと自己嫌悪に陥る。腰のヘルニアも悪化した。そんな時に整体に出会う。

結婚したばかりで子供も嫁さんのお腹の中にいた。仕事も職場の連中とも上手くいかないし会社には未来があるが俺にはないのもわかっていた。

俺には親父がいない。いるけどほとんど一緒に暮らしていない。中学の時に離婚してるが親父の仕事の関係で2年に一度、1ヶ月から3ヶ月会うのが定番。

自分が親父になるということの意味が解らない。何をしたらいい?自分の子供に。

そんな時に通っていた整体の先生の話だけが唯一俺に希望をくれた。生命と人体の神秘、TVで埋め込まれた常識は嘘だと言う。本も沢山貸してくれた。セルフでできる腰の治し方も。イケメンで俺よりかなり若い先生だったが抜群に信頼した。正直、整体に行ってる時しか居場所がない感じだった。

今度は精神的な理由で会社をやめる。鬱だと診断された。今思えばピンチの時は全部ぶん殴って解決してきたが30過ぎるとそうはいかない。やり場のない思いは無力に変わってしまうのだ。元ヤン特有のやつだと思う。飲酒運転でお気に入りの車も助手席がなくなるほどの事故で廃車。

そんな時、通ってた整体の先生が言う。「ヨシナリさん。セルフでそこまで調整できるなら、他の人も治してあげて下さい!同じ様な思いで苦しんでいる人はヨシナリさん以外にも沢山いるんです。私が全力で応援するし教えますからいい整体師になって下さい!」感動した、道が見えた。と同時に無理だろうとも思った。

その先生は県内では有名な大きな流派の中で必死で戦っていた。まぁ、よくあるやつだ。無理矢理任せられて実力勝負の上納金制度。俺の知ってる新宿と一緒だよ。そこに俺はついていけないし、特に金がいる時期だ…。かなり年下だったのも不安だった。

そこでお別れして、音信不通。だけどよく夢に出てきたり近所だからいきなりライバルだ。何回電話して謝ろうと思ったか。流石に今の師匠に会う前には限界で1度電話したがやはり助けてくれと伝えるのは無理だった。

今は大きな流派とも独立して自分の店を構えてあの時の熱意のまま頑張っているようだ。

まぁいつかバッタリ酒を飲む時でもあったら謝罪とお礼を言おうと思っている。

そんな感じだ。俺が整体師になったのは。たいして面白くもないし1番思い出したくない時代かもな。たぶんこの思いは誰にも言ってはいない。それを基礎クラスということで思い出してしまった…。

あの人は何て言うのかな?俺は俺に、良く頑張りましたとはとても言えない。

あの時一緒に先生と戦えば良かったと、少しでも戦力の足しにでもなればと、あの時生活と金に逃げた俺は一体何を手にしたのだろうか?あんなに真剣に俺の人生を救ってくれたのに...。

随分と嫌なことを思い出させるぜ、今の師匠は...。


つづく

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