マガジンのカバー画像

創作・物語

49
これまでに書き上げた創作作品や、物語風に綴った日常を集めています。楽しいひと時のお供ができたら嬉しいです。
運営しているクリエイター

#小説

透明の美学

何かと何かをくっつける。 それが、僕の仕事。 あるときは、壊れたものを修理する。破れた絵…

吉村伊織
2年前
15

オコッタイマー

胸につけてるマークが言うぜ。 「さあ、ショータイムの始まりだ」 発動時間は30秒。 パパの意…

吉村伊織
2年前
12

げんきえんぴつ

1年生になって最初の国語の授業は、校長先生が一人ずつえんぴつを配ることから始まった。 「み…

吉村伊織
2年前
13

瓶の中の黒電話

「ねえ、みてもいい?」 「ああ、いいよ。」 あやかが聞くと、おばあが答えた。町はずれの日本…

吉村伊織
2年前
15

君に贈る火星の【ショートショート】

花火がドンと鳴る瞬間、ビクッと体が反応した。だけど、おじいちゃんにもらった黒い石をギュッ…

吉村伊織
2年前
16

アナログバイリンガル【ショートショート】

少年と少女が、丘の上のベンチで風に吹かれながら話している。時は、205X年。ふたりの間には、…

吉村伊織
2年前
18

違法の冷蔵庫【ショートショート】

『高級プリン』と正面のタッチパネルに入力し、冷蔵庫のドアを開けた。現れたのは、予約3ヶ月待ちの話題のプリン。 「おぉ、本物だよ。すげえな、これ。」 男は不気味に笑いながら、プリンを食べた。 闇市場で手に入れた冷蔵庫には、空間転送システムが組み込まれている。タッチパネルで入力したものを空間サーチし、どこかの冷蔵庫につながる仕組みだ。 「のども渇いてきたな。」 次は、『アイスコーヒー』。グラスに注ぎ、ゴクゴクと喉を鳴らす。 「夜の楽しみに、酒でも用意しとくか。」 迷いなく『ワ

マロンパフェの下の名前【#2000字のドラマ】

国道沿いのファミレスの、窓側の席に三人は座っていた。女子が隣同士で並び、向かい合って男子…

吉村伊織
2年前
66

まさおくん物語~第4話~

(前回までのあらすじ) 引っ込み思案のまさおは、ある日の下校途中に傷ついたすずめを見つけ…

吉村伊織
3年前
7

夕暮れにリュック

拓海が社会人になって5年目。大学ではどちらかと言えば真面目な学生で、それなりに勉強して希…

吉村伊織
3年前
11

まさおくん物語~第3話~

(前回までのあらすじ) 引っ込み思案のまさおは、ある日の下校途中に傷ついたすずめを見つけ…

吉村伊織
3年前
10

まさおくん物語~第2話~

(前回のあらすじ) 引っ込み思案のまさおは、ある日の下校途中に傷ついたすずめを見つけた。…

吉村伊織
3年前
9

まさおくん物語~第1話~

ある日の昼休み。いつもと変わらない秋の風が吹き、校庭の隅のいちょうの葉が舞った。校庭には…

吉村伊織
3年前
21

鳩が舞い降りた駅

チャリンでも、ハラリでもなく、ドサリ。 お金がそんな音を立てて地面に落ちた瞬間を見たのは、生まれて初めてだ。 10枚や20枚では、作れない厚さだった。「あ、100万円」、とっさにそう思ったのは、駅に向かうバスの前から5列目か6列目の座席で読んでいた小説のせいだろう。ちょうど、偽札騒動に巻き込まれた主人公が、消えた一万円札101枚に思いを巡らす場面になった直後だったから。 まさかその物語から現実世界に札束が飛び出してきたのか、それともまだ小説の世界にいるのか、一瞬頭が混乱し