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まさおくん物語~第4話~

(前回までのあらすじ)
引っ込み思案のまさおは、ある日の下校途中に傷ついたすずめを見つけた。まさおはそのすずめを家に持ち帰り、傷の手当てをしてやった。
まさおの世話のかいあって、すずめはすっかり元気になり、まさおも明るく元気になった。そして、10日目のこと・・・

まさおは、学校から休むことなく走り続け、家に帰り着いた。途中でころんだせいで、膝にわずかに血がにじんでいる。でも、そんなことはもう気にならなかった。靴を脱ぎながらランドセルを下ろして玄関に置いたまま、座敷のタンスの前に急いだ。しかし、いつもそこで待っているはずの、すずめがいない。まさおが不思議に思っていると、庭の方から鳴き声が聞こえてきた。

縁側から広がる庭には立派な柿の木があり、すずめはその枝にとまっていた。もう葉っぱは落ちてしまっていたから、すずめはすぐに目に留まった。すずめも、まさおに気づいたようで、チュンチュンと声を聞かせてくれた。安心したまさおは、台所に向かった。今日のおやつは、ドーナッツが用意してあるはずだ。皿ごと縁側に持ってきて、すずめを眺めながら食べることにした。

ニコニコ顔のまさおが縁側に戻って目にした風景は、さっきと少し違っていた。とまっていた枝に、すずめの姿がない。代わりに、どこかから侵入してきた野良猫の口に、すずめが咥えられていた。その光景を見たまさおは、ハッと息が止まり、持っていた皿を落としてしまった。大きな音を立てて皿が割れたのと、まさおがワーッと叫んだのは、ほぼ同時だった。ドーナッツはゴロンと縁側に転がった。
皿の音とまさおの声に驚いた野良猫は、咥えていたすずめを落っことし、塀を飛び越えて逃げ去った。台所にいた祖母も、突然の物音にびっくりして縁側に飛んできた。
我に返ったまさおは、裸足のまますずめに駆け寄った。翼はボロボロになり、まだ生きてはいたが、ほとんど虫の息だった。まさおが両手で拾い上げると、すずめはゆっくりとまさおの方に顔を向け、弱々しく一回鳴いた。そして、そのまま動かなくなった。

まさおの目から涙があふれ、大声で泣いた。手にすずめを抱き、泣きながら裸足のままで、まさおは走り出した。祖母も慌てて後を追ったが、門を出るともうまさおの姿が見当たらない。どうしていいか分からずオロオロしていると、まさおの両親が仕事から帰ってきた。
祖母がわけを話すと、父が母と祖母に夕食の準備をしておくように言って、まさおを探しに出かけた。母と祖母は、言われた通りに夕食の準備に取り掛かった。

ー つづく ー

高校時代に書いた『まさおくん物語』。全5話中の第4話です。第3話に続いて、今回も少しずつ表現を修正しながら書いてみました。

動作の説明だけになっているので、会話文を入れると、もう少し臨場感が出るのかもしれませんね。書きながら思いました。

そして、情景描写。頭の中には、古い日本家屋の部屋の雰囲気や庭の様子が浮かんでいます。それをつかまえて、言葉にして表現できたらいいのに。
まあ、それも、練習あるのみですね。

次で最終話になります。
第1話から、まだ読んでない人は今のうちにどうぞ。

#青春の思い出

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