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まさおくん物語~第1話~

ある日の昼休み。いつもと変わらない秋の風が吹き、校庭の隅のいちょうの葉が舞った。校庭には、今日もボールを蹴って遊ぶ少年たちの姿があった。そんな当たり前の風景を、いつものように教室の窓から眺めている一人の少年がいた。まさおだった。まさおは、引っ込み思案で、その日もみんなの仲間に入れてもらえず、たった一人で教室からみんなの姿を見ていたのである。

その日も別に変ったことはなく、学校の終業のチャイムが鳴り、みんなそれぞれに話しをしながら教室を出ていった。一番最後に、まさおも教科書をランドセルに入れて教室を出た。

学校から家までの約2キロの道を、まさおはいつものように歩いて帰った。校門を左に出てしばらく歩くと、道路の両側には田んぼが広がり、まさおの家のある地域に至るまでの1キロから1.5キロほどの間には、家は一軒も建っていなかった。一人で石を蹴りながら帰っていると、ちょうど田んぼの道の中ほどに来たとき、道路の真ん中で何かが動いているのが見えた。まさおは一瞬立ち止まったが、すぐにかけだして動いているもののところへ行った。それは、一羽のすずめだった。何があったかは分からないが、すずめは羽にケガをしていて、飛べずにもがいていたのだった。まさおは、そのすずめがとてもかわいそうに思えたので、やさしく拾い上げ、家に向かって走り出した。

家に着くと、タンスの前にイスを持ってきて、その上に置いてある救急箱を下ろし、すずめの傷口に消毒液を塗り、包帯を巻いた。巻き終わると、底の浅い箱の中にタオルを敷いてその上にすずめを置き、台所からご飯粒を2,3粒持ってきて食べさせてやった。すずめはおいしそうにそれを食べ、食べ終わるとしきりに羽を動かして飛ぼうとしたが、ただバタバタするだけでうまく飛ぶことはできなかった。まさおは、そんなすずめの動作を、寝転んでほおづえをつきながら、うれしそうに見つめていた。

ー つづく ー

なぜか、心の片隅に、ずっとあったお話しです。

どういう経緯でそんなことをしたのか思い出せませんが、高校時代に、友人何人かと創作物語を書いて教室の後ろに貼りだしていました。勢いに任せてルーズリーフに書きなぐり、特に書評をするでもなく読み合ってクスクス笑う。それも青春の1ページだったんでしょう。

やがてクラス替えがあり、卒業もして、一応持ち帰った物語たちは、そのへんにあった袋に詰め込んで半透明の衣装ケースにいろんなものと一緒に入れ込んだまま、ずっと実家の押し入れで眠り続けました。
何年か前に実家に帰った時に、そのままの姿で衣装ケースの奥で眠っていたのを掘り起こしてこちらに持ってきて、その中から取り出したのが今回の『まさおくん物語』です。第1話から第5話まで、学生時代の貴重なノートを5枚も使って少年の物語を書いていました。まさか、25年の時を経てインターネット上に公開するなんて、米粒ほども考えもせずに。

そんな様子がかわいらしく思えて、今日のnoteの題材にしてみました。
ひらがなと漢字の表記を一部修正しただけで、内容も描写もそのままの状態です。今ならもう少し豊かな描写ができると自信を持って言えたらいいのだけれど、そんなに向上していないようにも思えてきて、苦笑いしてしまう複雑な心境です。

5日連続にはならない予定ですが、せっかくなので終わりまで書いてみたいと思います。
5日分のネタを見つけたんだねと思って、お付き合いくださいませ。

※illust by:Mizue.O さん / イラストAC

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