サイエンスカフェという“場”
サイエンスカフェは日本における科学コミュニケーション活動の典型例だ。その起源は1990年代にヨーロッパで広まった「哲学カフェ」であるといわれている。
日本でも「哲学カフェ」や「哲学対話」といったイベントが多数開催されている。例えば、以下のウェブサイトが参考になる。
日本におけるサイエンスカフェの広がり
科学コミュニケーションが日本で注目され始めたのは2003年ごろのことだ。科学技術政策側からの指摘を契機に科学コミュニケーションという言葉や理念が日本でも広がり始めた[1]。それを受けて、『平成16年度版 科学技術白書』でも、社会と科学者の「双方向的なコミュニケーション」の重要性が説かれた。とりわけ、白書内のコラムで紹介されたサイエンスカフェのインパクトは大きいものだった[2]。それ以降の隆盛は、科学技術振興機構(JST)が提供しているウェブサイト Science Portal内のイベント情報からも垣間見ることができる。
サイエンスカフェはその名の通り、カフェや喫茶店、もしくは図書館などで開催されることが多い。その理由には、科学の専門家でない人たちが参加しやすい場所であることと、話題提供者である専門家が極力権威的にならない場所であることが挙げられる。運営は大学や科学館がしていたり、個人や有志で行っているものもある。これらの要素を持つサイエンスカフェは、大学や研究機関の“見える化”の担い手にもなっている。
サイエンスカフェについては、以下の本間善夫氏による文章も参考になる。
以下には、サイエンスカフェに関する説明文をいくつか列挙した。
サイエンスカフェに関する説明例
サイエンスカフェにおけるコミュニケーション
『平成16年度版 科学技術白書』で紹介されたヨーロッパを中心に広がったサイエンスカフェ「Cafe Scientifique」ではPower Pointによるプレゼンテーションが非推奨だそうだ。その理由は、科学者が自分の言葉のみで話すことにより、参加者に対等な立場であることを感じてもらうためとのこと[3,4]。日本のサイエンスカフェでは、例えば、東京で行われているウィークエンド・カフェ・デ・サイエンス(WE Cafe)では、できるかぎりPower Pointプレゼンテーションを行わない方針で開催されている。
上記では「Power Pointを使わない」例を紹介したが、日本においては、Power Pointプレゼンテーションを用いたサイエンスカフェが多い印象だ※。ただ、ここで大切なのは、Power Pointを使うかどうかではなく、いかに「双方向でかつ対等な科学コミュニケーション」を実現させるか、ということ。「Power Pointを使わない」はその一手法と理解できるだろう。
「Power Pointを使わない」サイエンスカフェは発表者・ファシリテーターにはハードルが高くもある。
科学コミュニケーションする「場」としてのサイエンスカフェ
以下のネット記事が興味深い。
記事内には、“僕個人としてはサイエンスコミュニケーションは科学と触れ合う場(事)として理解しました”という記述がある。なるほど、そういう考えもあるか、と感じた。やはり、「場」が重要。
科学コミュニケーションする「場」の典型はサイエンスカフェなのだが、日常生活の中で科学の話を気軽にできる雰囲気というのも一種の「場」だと理解できる。そうなると、科学コミュニケーションとしての「場」を創出したり、その「場」へと誘うことができる人材が求められる。
科学コミュニケーター(科学コミュニケーションを促す人たち)という人材の必要性、そして、その人材に求められる能力について考えさせられた。
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