小林良彦

読んだ本の感想や、原子・元素・原子核のこと、科学コミュニケーションのことなどについて、肩の力を抜いて、書き続けたい。日ごろ勉強したことや考えたことなども雑記として書き連ねたい。たまにはまとまった文章も書きたい。博士(理学)。ヘッダーは硫黄山で撮影。

小林良彦

読んだ本の感想や、原子・元素・原子核のこと、科学コミュニケーションのことなどについて、肩の力を抜いて、書き続けたい。日ごろ勉強したことや考えたことなども雑記として書き連ねたい。たまにはまとまった文章も書きたい。博士(理学)。ヘッダーは硫黄山で撮影。

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とある大学教員の自己紹介(2022年1月5日版)

僕は現在、大学教員として働いている。noteは以前からたまに書いていたのだが、2021年10月から心機一転して再スタートをした。年も変わったタイミングでこれまでの自分を振り返りつつ、自己紹介を書いた。結構長くなってしまったので、目次を見て、気になる箇所を拾い読みして頂けると嬉しい。 これまでの学びと夢と憧れ幼稚園~小学校前半:博士になりたい 幼稚園も小学校も行きたくなかったことは覚えている。それ以外で覚えていることは、親が買ってくれたDeAGOSTINIの『恐竜サウルス』

    • 『「低学歴国」ニッポン』(日本経済新聞社 編 日経BP 日本経済新聞出版 2023)読書感想文

      現代日本の教育は様々な問題に直面している。IT分野を牽引する力はなく、英語力も低い、博士号取得者数も減少傾向。このような現状の日本に、本書は「低学歴国」という言葉と共に警鐘を鳴らしている。 本書は日本経済新聞の連載企画を基に書かれたものである。革新的な取り組みを阻む「教育ムラ」、学力不問入試(総合型選抜や推薦型選抜)の増加、「入るのも出るのも易しい」日本の大学、「ブラック職場」の学校現場、教員の質の低下、、、複数の側面から日本の教育の窮状について取材された内容が書かれている

      • 「肩肘張らずに」「気楽に」と向き合う

        学生の頃、自分の想いとか願いとか悩みとかを年配の先生にぶつけたことが何度かある。「頑張れ!」と背中を押してもらうことを期待していたのに、「肩肘張らずに、もっと気楽にやればいいんじゃないか」という返答をもらっていた。当時は肩透かしにあったような感覚だった。 それから年月が経ち、今では、少しは「肩肘張らずに」「気楽に」生きられるようになったようにも感じる。年齢を重ねたからなのか、経験値が増えたからなのか、理由は定かではない。 もし、学生の頃に戻ることができたとしても、どうせ「

        • 言葉と魂の結びつき

          福島智氏の著書『ぼくの命は言葉とともにある』は好きな本の一つである。 先日、久しぶりに読み返し、「この本に出合えて良かった」と再認識した。以下の文章(元は「先端研ニュース」への寄稿文とのこと)が改めて印象に残った。 「言葉」は魂と結びつく働きをする。心が震える表現だ。言葉によって気力が湧いてくることがある。言葉によって救われることもある。やはり、言葉は魂に結びついているのかもしれない。 もっともっと言葉を大切にしたいと思う。

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        とある大学教員の自己紹介(2022年1月5日版)

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          『能力はどのように遺伝するのか』(安藤寿康 著 講談社 2023)読書感想文

          試験や部活動などの学校生活、就職や転職などの職業選択、はたまた大谷翔平や藤井聡太といった天才のニュースに触れたときなど、社会生活を送っていると、しばしば「能力」について考えたくなるときがある。 本書は、「能力は遺伝か環境か」といった議論について、「行動遺伝学」の分野で蓄積された知見を基に迫る一冊である。 本書では「双生児法」と呼ばれる研究手法によって得られた研究成果を軸に、多くの研究成果が紹介されている。双生児法は一卵性双生児と二卵性双生児を研究対象とし、それらの類似性の

          『能力はどのように遺伝するのか』(安藤寿康 著 講談社 2023)読書感想文

          『地磁気逆転と「チバニアン」』(菅沼悠介 著 講談社 2020)読書感想文

          地質年代に千葉を冠した「チバニアン」という名称が付けられたことは記憶に新しい。本書は「チバニアン」の申請チームの中核メンバーであった研究者による一冊だ。 どうしても「チバニアン」に目が行ってしまうが、本書の大部分は地磁気に関する解説に割かれている。第1章「磁石が指す先には」、第2章「地磁気の起源」、第3章「地磁気逆転の発見」、第4章「変動する地磁気」は地磁気に関する基礎知識や周辺知識について地球科学の歴史に沿って書かれている。地球内部の姿が地震波の研究からどのように明らかに

          『地磁気逆転と「チバニアン」』(菅沼悠介 著 講談社 2020)読書感想文

          『「社会」を扱う新たなモード』(飯野由里子・星加良司・西倉実季 著 生活書院 2022)読書感想文

          本書の副題は「『障害の社会モデル』の使い方」だ。「障害の社会モデル」は、当人の心身機能の制約自体を「障害」とする「障害の個人モデル/医学モデル」に対して、社会環境が誰かの「障害」の要因となっていると捉える立場のことを指す。 近年の「合理的配慮」の推進に伴い、「障害の社会モデル」の認知度も上がっているそうだ。僕自身も「合理的配慮」推進の文脈で「障害の社会モデル」を知った一人だ。 本書は「障害の社会モデル」の誤解・誤用が広まっていることに懸念を抱いている3名の研究者による一冊

          『「社会」を扱う新たなモード』(飯野由里子・星加良司・西倉実季 著 生活書院 2022)読書感想文

          『客観性の落とし穴』(村上靖彦 著 ちくまプリマー新書 2023)読書感想文

          客観性はとても重要だ。客観的な意見や客観的な事実(エビデンス)は何かを議論する際、何かを判断する際に重宝される。そんな「客観性」にも「落とし穴」があるのか、という気掛かりが本書を手に取る動機だった。 本書は客観性が持つ不備などを指摘するものではない。本書を書くきっかけは著者による以下のtweetだったそうだ。 著者の問題意識は上記tweetにもある「客観性信仰・統計信仰」である。本書の中でも繰り返し述べられているが、著者は客観的なものを否定したいわけではない。しかし、(著

          『客観性の落とし穴』(村上靖彦 著 ちくまプリマー新書 2023)読書感想文

          科学は私たちの世界観に影響を与え得る

          その研究は何の役に立つのですか?という質問に辟易している科学者も少なくないだろう。科学者側からすれば、こういった質問には「科学の発見=役に立つはず!?」といった短絡的な考えがあるのではないか、と勘繰ってしまい、答える気も失せるのかもれない。 「役に立ちません!」と言い張るのも一つかもしれない。しかし、これでは匙を投げたようなものである。確かに、科学の発見は、社会に(すぐに)良い効果をもたらす、とか、有用である、という意味で「役に立つ」とは限らない。 しかし、では社会にとっ

          科学は私たちの世界観に影響を与え得る

          事業仕分けと科学者の傲慢性

          もう15年も前の話になる。当時の私は大学の学部生だった。当時の民主党政権は、2009年に行政刷新会議による「事業仕分け」を実施した。スーパーコンピューター「京」などの予算が削減された。「京」に関する議論の中で、蓮舫議員が「なぜ世界一じゃなきゃダメなんですか?二位じゃダメなんですか?」と発言したことが大きな話題になった。 おそらく、多くの科学者はこの件に危機感を覚えた。大学や研究機関の長、ノーベル賞受賞者などの著名な科学者たちが危機感を訴える声明を提出した。例えば、以下のよう

          事業仕分けと科学者の傲慢性

          『犠牲 わが息子・脳死の11日』(柳田邦男 著 文春文庫 1999)読書感想文

          著者である柳田氏は医療分野も扱うノンフィクション作家である。柳田氏の次男・洋二郎氏は自死を図り、脳死に陥ってしまう。そして、11日後にこの世を去った。25歳という若さだった。本書は、柳田氏が洋二郎氏の11日間の死のプロセスに向き合った記録である。 本書では、洋二郎氏が脳死に陥った後の医師・看護師や家族(主に長男・賢一郎氏)とのやり取り、洋二郎氏との思い出、そして、父であり作家である柳田氏自身の心の動きが書かれている。 印象深いのは、本書の各所で洋二郎氏の日記や短編小説が掲

          『犠牲 わが息子・脳死の11日』(柳田邦男 著 文春文庫 1999)読書感想文

          『障害者ってだれのこと?』(荒井裕樹 著 平凡社 2022)読書感想文

          「障害」について知りたいと感じることがしばしばある。そんな感覚と共に、「まずはこれを読んでみよう」と本書を手に取った。著者の荒井氏は「マイノリティの自己表現」を専門とする文学研究者とのことだ。 本書は2部構成になっている。第1部「『障害』とはなにか?『障害者』とはだれか?」では、「障害」や「障害者」に関する歴史、理論、イメージについて書かれている。「理論」パートでは、障害学の知見についても書かれており、勉強になる。「イメージ」パートでは、パラリンピックや24時間テレビなどが

          『障害者ってだれのこと?』(荒井裕樹 著 平凡社 2022)読書感想文

          『ルポ 誰が国語力を殺すのか』(石井光太 著 文藝春秋 2022)読書感想文

          本書で報告されている問題は「国語の点数が低い」というものではない。本書に登場するのは、校内暴力、恐喝事件、いじめ、自殺、不登校、ゲーム依存といった深刻な社会問題だ。そして、それらの問題の当事者となる子供たちは、言葉を得る機会を奪われた子供が少なくない。では誰が彼らの国語力を殺すのだろうか。 文部科学省によると、国語力の中核は「考える力」「感じる力」「想像する力」「表す力」の四つの力によって構成される、とある。つまり、「国語力」とは単なる語彙力のことではない(語彙は国語力の基

          『ルポ 誰が国語力を殺すのか』(石井光太 著 文藝春秋 2022)読書感想文

          『当事者は嘘をつく』(小松原織香 著 筑摩書房 2022)読書感想文

          インパクトのあるタイトルが目に留まったのが、本書を読んだきっかけだ。内容もインパクトのあるものだった。著者である小松原氏は哲学研究者である。小松原氏は大学生のときに性暴力被害に遭った「当事者」だ。 本書は著者の半生が描かれたエッセイである。性暴力被害の「当事者」としての自分、そして、性暴力や水俣病を研究対象とする「研究者」としての自分への葛藤が述べられている。 「第一章 性暴力と嘘」では、著者が当事者として「私は嘘をついているのではないか」という不安について書かれている。

          『当事者は嘘をつく』(小松原織香 著 筑摩書房 2022)読書感想文

          『桝太一が聞く 科学の伝え方』(桝太一 著 東京化学同人 2022)読書感想文

          元日本テレビアナウンサーの桝太一氏は2022年度より、同志社大学ハリス理化学研究所でサイエンスコミュニケーションの研究に取り組んでいる。本書は月刊誌『現代化学』に掲載されたサイエンスコミュニケーションに関する七つの対談・鼎談を書籍化したものだ。 いずれの対談・鼎談においても聞き手は桝氏が務めている。相手は以下の8名である:山中伸弥氏(2012年ノーベル生理学・医学賞)、大隅良典氏(2016年ノーベル生理学・医学賞)、篠田謙一氏・小川義和氏(国立科学博物館)、藤田誠氏(東京大

          『桝太一が聞く 科学の伝え方』(桝太一 著 東京化学同人 2022)読書感想文

          『「私物化」される国公立大学』(駒込武 著 岩波書店 2021)読書感想文

          時代と共に大学の在り方も変化する。イノベーションの創出やグローバル人材の育成といったことは、国や産業界から強く要請されている事柄だろう。そういった要請と併せて、大学にはガバナンス(管理・運営)改革も求められている。 大学のガバナンス改革における中核の一つは学長のリーダーシップの確立である。学長がリーダーシップを発揮し、大学をより良く改革していくことは大学が社会と共にアップデートしていくために必要だろう。しかし、その「リーダーシップ」が学長の持つ権限を肥大化させ、大学を「私物

          『「私物化」される国公立大学』(駒込武 著 岩波書店 2021)読書感想文