古賀由家

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最近の記事

映画「君たちはどう生きるか」が示す”生きる”とは

それは、 これが公開時、ネタバレ無しで言えることではないかと思う。 この作品には、これまでの宮崎監督作品の要素がほぼ全ての作品からと言ってもいいほど盛り込まれている気がする。 そしてその一つ一つの要素は決して過去の再生産ではなく、すべてアップデートされて盛り込まれていたのだ。 それは一つ一つが複雑なパズルのようにあらゆる要素と絡みあっているので、初見で理解しきるのは難しいと思う。 故に、今作品を理解しきるということであれば漫画からアニメまであらゆる媒体は読んでおくと

    • 「さよなら絵梨」考察「作品の永続性の功罪と感謝」

      マンガ版チェンソーマンを読み終わって他にも色々読み進めていたが、この「さよなら絵梨」は読み終わった途端に 「これは…」 と思わせてくれるほどの衝撃と発見があったので、今回はその考察を垂れ流そう。 はじめに 本作はセリフにない、含みを持たせた演出がとても多く一つ一つ整理して読み進まないと、すぐに頭が混乱してしまう。 そこで、この作品の構造を分かりやすくするために 1. ストーリー 2. 仕掛け 3. 意図 といった順にこの物語を階層・レイヤー構造として解析して考察し

      • 【1年経って】SonnyBoy第3話考察

        3話は最終回への伏線となる重要な回 3話は爽やかな印象受ける回だったが、掘り下げていくと中々重い内容となっていた。 漂流世界で更に漂流 今回の話の軸としては、フリーズ現象もとい黒幕世界が挙げられるが、この ハテノ島→黒幕世界 へのワープは 元の世界→漂流世界 という、2つの出来事を漂流で韻を踏む構成となっている。 3話で長良や希はフリーズしたものたちは自発的に行ってしまったわけではなく、この世界のルールでそうなってしまったという主張をしている。 つまり、逃げ

        • 【1年経って】SonnyBoy第2話考察

          ハテノ島について 青い火→ヤマビコの世界。 要は能力で生成されたものは燃える様になってる。それはヤマビコの能力で出来た世界の中だから説。8話で腫瘍が出てくるが、それはこの世界の外で生じるから消せないのだろう。そして、赤い腫瘍との対比で、ここでは燃え盛る青い炎となってこの世界以外のものを燃やしてしまう。 ・花冠が燃える→これ8話のこだまのものか?だとしたら切ない。 ・ヤマビコが寝てる木は燃えてるしそこに近づくと長良とかも燃えるみたいだ。拒絶が根底にあって、先に瑞穂は受け

        映画「君たちはどう生きるか」が示す”生きる”とは

          【1年経って】SonnyBoy第1話考察

          1年経っても漂流 サニボのHPではONAIRが7月15日とのことなので、これを期に自分の中でこの作品の捉え方がどう変わったか書き記したいと思った。 全部見ている&1年経過による気づき まず見ていて非常に気になったのが明星くんの目的。 ラスト近くで怖い感じで睨む明星くん リーダーでも無いのに罰を下せる この2点が気になったが、ストーリーを全部見た上で考察し直すとつまり、明星くんは校長から事前に知らされた情報を元に、「自分が救世主となってみんなを導きたい」という願望か

          【1年経って】SonnyBoy第1話考察

          SonnyBoy1・2・3話考察「VRカノジョで人生やり直す」

          1話1話最大のカギはやはり、漂流に至るモノローグにあると思う。 職員室で長良と先生が面談している中、希が覗くシーン。 そもそも希は他の先生と話をしているのに、この瞬間に覗くというのはおかしい。そしてちゃんとそれを示すように希が先生からプリントを貰う描写がある。 最終話まで見て思ったのは、この覗いてから長良に話しかけるまでの希はやはりコピーの希だったのだろう。 屋上で話しかけた際、希が長良の名前を知っていたことから、屋上の希もコピーだろう。 本来の希は長良とそもそも話

          SonnyBoy1・2・3話考察「VRカノジョで人生やり直す」

          SonnyBoy12話考察「Don't Say Goodbye 〜〜〜!!!!!」

          ついにSonnyBoyが終わってしまった。 それに対して、「続いて欲しい」「いや終わらないといけない」、 色んな想いが渦巻くのは、この作品でも描かれていた。 それは12話の途中で映るこの「SonnyBoy」そのもののカット集からも見て取れる。 そうして、この映像が出てきた背景を紐解くことで見えてくる、 ・何故この作品に現代物理学が必要だったのか。 ・何故、長良は希との約束を果たせず、希と朝風ENDになってしまったのか。 ・監督の言う「前向きな答え」とはなんなのか

          SonnyBoy12話考察「Don't Say Goodbye 〜〜〜!!!!!」

          Mr.Children 「Worlds end」歌詞考察

          ミスチルの桜井氏は作詞において「無意識に上がってくるワードを並べている」と,何時のインタビューかは忘れたが、そういった趣旨で語っていた。 なので、ここからの考察はあくまで無意識に対して個人的な意味付け、解釈となる。 ただ、「Worlds end」の歌詞を1文1文読み込んでいくと、どうもこの曲は「かなり積み上げて書き上げているなあ」と感じることがある。 それは1番A・Bメロ→1番サビ、1番サビ→2番サビといった感じに、それぞれの歌詞が色んなところと繋がっているように見えた

          Mr.Children 「Worlds end」歌詞考察

          SonnyBoy第11話考察「だから僕らはやっていける。」

          今回は7話から10話までの総集編というか総括というか、やってきたことがここで全部つながるんだと気付かされる回だったなと思いました。 7話〜10話の各話を見ているだけだと各話完結の寓話的私小説といった感じがしたのですが、今回でその答えようのない私小説を最後に全肯定するような内容となっていて震えました。 ぜひもう一度、7話〜10話まで見直してから今回を見てみてください。最高です。 複葉機初めに何かを探す瑞穂のカットから始まる。そこには何故か複葉機が… プロペラは四枚。複葉

          SonnyBoy第11話考察「だから僕らはやっていける。」

          SonnyBoy第10話考察「With or Without You」

          一番はじめに8話でヤマビコが歩いた世界の一つである「光線が飛び交う」世界のカットが入る。 この印象的なシーンは湾岸戦争のような光景であり戦争そのもののメタファーと言える。 つまり、「8話もう一回やります」宣言ということだ。 8話では、ヤマビコ・こだま・戦争という三人の関係を描きながら、ヤマビコが如何に選択を間違え絶望と後悔に至るかを描く回となっている。 そして、この3角関係は実は、長良=やまびこ・希=こだま・瑞穂=戦争という関係でもあるのではないかと考えている。 や

          SonnyBoy第10話考察「With or Without You」

          SonnyBoy第9話考察「創作物に救われても良いんだよ」

          設定やアイテムが全て心象風景今回も8話と同じく心情や時系列の説明がまったくない。 何故この極北の世界にやってきたのか?アキ先生のグループと長良一行が鉢合わせしたのは偶然? 他にも、出てくるアイテム(レーザー銃のおもちゃ、朝風の子供部屋は自分で作ったのか?能力か?)はポンと出てきて説明のないまま消える。 これらは、物語・ストーリーのフォーマットで見ようとすると全くもってワケが分からなくなる。 これを紐解くには、一旦全てを舞台装置、作者の心象風景をダイレクトに伝えるために

          SonnyBoy第9話考察「創作物に救われても良いんだよ」

          Sonny Boy第8話考察「死にゆく日本と、どうすることも出来ない私」

          これは完全に日本の話だそもそもこの作品の概略をば、 舞台は現代。8月16日の夏休み、たまたま学校にいた生徒が突如として学校ごと真っ黒な世界へと漂流してしまう。 ただ、その真っ黒な世界では「超能力」が使えて ・重力 ・電気 ・瞬間移動 と色んな能力が使えるのだが、今作の主人公“長良“が、あらゆる異世界を移動できる「世界ワープ」の能力に目覚めたことにより、黒い世界から無人島へワープし、そこから、その能力を駆使して元の世界への帰還を試みようとする。 というのが大きな話の流

          Sonny Boy第8話考察「死にゆく日本と、どうすることも出来ない私」

          Sonny Boy 第7話考察「目標の喪失とそこからの立ち直り」

          1話から6話までは”帰還”が目的に話が進んでいたが、6話のラストで実は漂流したのは”世界の仕組み”により弾かれていてそもそも帰還出来ないことが明らかになり、その弾かれるきっかけ、トリガーとなったのは主人公の能力であることも説明された。 そうして、この折返しの7話から漂流メンバーは、この”帰れない”という不条理が支配する異世界の中で、戸惑いはしつつも自分たちの居場所を見つける旅に出かけることを決意していく。 それはある種、目的を見失い自己喪失に陥った人がどう立ち直っていくか

          Sonny Boy 第7話考察「目標の喪失とそこからの立ち直り」

          現在放送中のアニメ「Sonny boy」がすごい。

          今クールも半分折り返しにきてますが、ここで第6話にてとんでもなく大ハネした作品があったので、急いで記事書きます。ほんと見たほうが良い。 そもそもどんなアニメ?おおまかに言えば、 「異世界モノの皮を被った超絶リアル志向アニメ」 似てるシナリオのアニメでいえば 「無限のリヴァイアス、シュタゲ、ビッグオー」 といった感じで、一見ポップなビジュアル・作風に対して実はとてつもなく重いハードSFをやってるのがすごい。 今、物語構造としては一番複雑になってる作品だと思う。 そ

          現在放送中のアニメ「Sonny boy」がすごい。

          sonny boy 第5話感想と推察「能力の追求は問題解決の手段にはならない」

          ※見た前提で書いていきますのであしからず。 概略序盤は4話の続きからではなくいきなり昔のパックマン的な画面からスタート。 話を追っていくと、先生が出てきたけれども、だからといって今までの日常から急に180度転換する様子なことになっていないようだ。 ただ、アキ先生は少しずつ生徒を自分の目標に向かって誘導しようとしていくことから、クラスに対して静かな侵略が進んでいる。 その一方で、生徒会で事情を知ってそうな彼も何か準備していて、その裏では謎の声が長良に「まだ間に合う」と助

          sonny boy 第5話感想と推察「能力の追求は問題解決の手段にはならない」

          sonny boy 感想「能力主義に隠れた人たちの発見と尊重」 第4話から今後の展開予測

          ※視聴前提で話します。 冒頭のワープした世界、実は元の世界じゃない説まず話を整理すると 前提1・ツーブロックのエースくん:元の世界では有能な野球部のエースくん、tだこの能力世界では無能に近い分類。 ただ、エースくんはその事実が認められず、自分が認められる世界への帰還を求める。 そんな中、長良が元の世界へ帰られる能力(エースにとって有能の証)を手にしてしまう。 4話冒頭の会話から、長良は野球部員として全国のかかった大会で戦犯級のミスをしていながら能力は一丁前に身に着け

          sonny boy 感想「能力主義に隠れた人たちの発見と尊重」 第4話から今後の展開予測