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SonnyBoy第10話考察「With or Without You」

一番はじめに8話でヤマビコが歩いた世界の一つである「光線が飛び交う」世界のカットが入る。

この印象的なシーンは湾岸戦争のような光景であり戦争そのもののメタファーと言える。

つまり、「8話もう一回やります」宣言ということだ。

8話では、ヤマビコ・こだま・戦争という三人の関係を描きながら、ヤマビコが如何に選択を間違え絶望と後悔に至るかを描く回となっている。

そして、この3角関係は実は、長良=やまびこ・希=こだま・瑞穂=戦争という関係でもあるのではないかと考えている。

やまびこ:どうすることもできない

やまびこは1・2・3話あたりの長良によく似ている。

こだま:やまびこに外の世界へ飛び出すよう促す。ヒカリ。

戦争:本当の問題を突きつける

瑞穂もまた、3・5話にて長良に語るのはまさしく「本当から逃げるな」だった。

今回でもその要素が多様に含まれる回となっている。

舞台設定

それはウニとこんぶが続く世界であるような描写に

灯台と駅舎がある。

そして駅舎

STRINGと書かれた貨物牽引車が。

スクリーンショット 2021-09-24 0.04.42

調べるとどうやら、北海道で使用されているDD51牽引機「北斗星」らしい。

【だが、貨物牽引車であるにも関わらず、旅客として運行されている。

この辺は現実よりも、イメージを先行させたのかもしれない。】→よく見たらちゃんと旅客でしたすみません。

実際に、ホームのカットでは駅員が列車に満杯の生徒を無理やり押し込めている。

生徒の服装は、夏服から冬服までさまざま。

きっぷはどうやら駅員が管理する昔のタイプだ。

掲示板も、電光ではなく、紙の垂れ幕。

どこまでも昔のイメージが貫かれている。この絶妙に電化されていない感じは9話でも述べた作者の幼少期のイメージが大きのではないだろうか。

そして、この一連のカットは東京の満員電車よろしく現実のような描写となっている。

構成は現実とはチグハグだが、その実態は現実と酷似。

ここまでくると、どっちが現実のようにも見えてしまう。

ここだけで世界が構成されている。

心がよめる

骨折ちゃん(能力リストには”つばさ”と記されている)は今回のキーパソン。

能力は相手の心が読める「モノローグ」。

正確には相手の思考が物語のような語りで聞こえる。

バレたら仲間はずれだから、1円玉が額にくっつく特技を能力と言いはった。

「誰だって、自分が考えてること聞かれたら良い気しないもんね。(テヘペロ」

ばれないことに自信あり。なぜなら気持ちがわかるから。

疑われそうになっても軌道修正出来る(エッヘン顔)。

ただ、待ち合わせには早く来すぎたりと、自分の変に張り切りすぎるとことに恥じらい。

それは、好きな朝風くんと待ち合わせしてるからだ。

そこで、今まであったことを振り返る。

アキ先生の義務教育はバス移動であらゆる世界を探検するサマキャンだった。

終わると、二等兵五級の称号と、戦地への招待状を貰う。

階級に等級もへったくれもないし、戦地への招待状を貰うのも不可解。

それに、結局それで何か変わっただろうか?

骨折ちゃんにとっては、それで問題はないが他のメンバーにとってはそうではなかった。

解散

そして、解散してからお別れ会的な打ち上げをするメンバー

爽やかな顔で綺麗事言うが、なんにもなれないと言う加賀くん(チキチキ速報見ていた彼)。

「結局何者にもなれなかったな。

みんなより自慢できるのも皆勤賞だけだし。俺これからどうなるんだろう。」

電車・何者にも成れない。

もう今回はピングドラムです。

ピンドラでも、運命の乗り換えで選ばれた人、選ばれなかった人が出てきました。

サネトシ先生のセリフは、まさしく3話で黒幕に閉じこもった後にアキ先生に付いていく生徒達(加賀くん、youtuber)そのもの。

「世界はいくつもの箱だよ。人は身体を折り曲げて自分の箱に入るんだ。ずっと一生そのまま。やがて箱の中で忘れちゃうんだ。自分がどんな形をしているのか。何を好きだったのか。誰を好きだったのか。だからさ、僕は箱から出るんだ」

「人間っていうのは不自由な生き物だね。 なぜって。だって自分という箱から一生出られないからね 。その箱はね。僕たちを守ってくれるわけじゃない 。僕たちから大切なものを奪っていくんだ 。たとえ隣に誰かいても壁を超えて繋がることもできない。 僕らはみんな一人ぼっちなのさ 。その箱の中で、僕たちは何かを得ることは絶対にないだろう 。出口なんてどこにもないんだ。 誰も救えやしない 。だからさ、壊すしかないんだ。 箱を。人を。世界を。」

だからこそ、ピンドラでは「運命の果実を一緒に食べよう」、見つけて上げることで救いがあることを描いた。

だけれども、今作では3話で見つけたはずの彼らは何のフォローもないので、アキ先生に縋っていってしまう。

さながら、サネトシ先生に付き従う企鵝の会のメンバーのように。

自己承認を満たす

チラチラ見ながらオレンジジュース飲むつばさちゃんかわいい。

目線の先には朝風と男子たち。

「神様に認められたんだろ。エリートコースだ。やっぱ朝風はすげえな。」

「等級でマジ、俺らの自慢だよ」

「どうってことない」

現実でもよくある言葉だけで本心のない会話。

(俺にいい言葉をかけてくるやつをみてると気持ちいい反面、どこか不安を感じる)

気持ちい反面、不安

それに対して男子たちは

(単細胞が偉そうに、失敗しろバーカ)

だが、そんなことは朝風も分かっている。

(こいつらは嘘を付いてるんじゃないか。誰にでもいい言葉を描けてるなじゃないか。でもいいんだ。俺はお前らと違うから。月とスッポンどころじゃない。クソと便器だ。)

「今日も乗ってますね。」

それを能力で盗み聞きしている骨折ちゃんはスマホのメモアプリで

『モーニングウインド恋のメモリー 523日目』

と題したメモを取る。なぜこのタイトルかは分からないが、骨折ちゃんがロマンチストであることは分かる。

「これは私だけが知ってる本当の朝風くんその物語。」

ウキウキで書きこむつばさちゃん。

そこに近寄る加賀くん

とっさに隠しちゃうんだなスマホ。ワイは見てるで。

「ぼ、僕のスピーチどうだったかな。」

「うん、立派だったよ。」

造ったような、ちょい自信なさげな感じの声で清楚感出そうとする骨折ちゃん。

本当は快活そうな子なのに、表面では演技して生きている。

また、男はこういう自信なさげな女の子に対しては変に舞い上がってしまうもの。

男子は女子と話す途端、急激に視野が狭まり超絶主観的になる。

そして、どうしようもないクソアピールをしてまうから、「そういう猫かぶり止めてくれえええ」とこのシーンを見ていると心の声が暴れだしそうになる。

その思い上がりをこのシーンでは心が見えることを視聴者と共有させることで、視聴者を強制的に俯瞰へと押し上げる。

そして、耐性のないチェリーボーイはその反作用で悶え苦しんでしまう。

カガくんを責めないで

「そ、そうかな?なんかこう言うの苦手で…」

(あぁ、今日もかわいいな。もうすぐ会えなくなるんだ。告白するんだ俺。あぁ、でも怖いな。

まずデートに誘お、え)

男女ともに、奥手なタイプはこういう思考になりがちなのだ。それを面と向かってブツケられる(骨折ちゃんと視聴者に)のは辛い。

まるで断罪されているような気分だ。話しかけてごめんね、という言葉しかでない。

だからこそ人は自分の箱から出られなくなる。

「お、あれ?」

気づくと骨折ちゃんは居なくなっている。

そして、場面転換。外へそそくさと逃げ出してきた骨折ちゃん。

「はぁ、あんなの見てらんないよ。

でも私も加賀くんと同じだ。何だか私って気持ち悪いな。」

加賀くんもキモいってことなんかああん?

カガくんを責めないで

ただ、加賀くんを見ていると、朝風くんに何も言えないでモジモジしている自分と重なって見える、今の自分さえも強制的に俯瞰させられるから自己卑下してしまうのだ。

カガくんが報われる世界線はあったのだろうか?多分ない。

根本的に合わないことに関しては、カガくんや骨折ちゃんにとってもよくないことなのかもしれない。

ただそれを知る機会もないというのは辛いね。

付いてくる朝風

そこへ朝風くんが近寄ってくる。

「あ、どうしたの?」

そうしてまた声を作ってしまう骨折ちゃん。

それが朝風くんに気にもかけてもらえない原因なのに、それでも選択肢がそれしかない骨折ちゃんもまたどうしようもなくカガくんであり、この片思いの連鎖はどこまでも通じない。

それは朝風も同じであった。

「いや、最近希と連絡取ってるか?

別にあいつが気になるとかそういうのじゃないんだけな」

(アイツ今何してんだろ。会いたいな)

今回は9話と同じく一方通行な想いの連鎖で構成されている

「何も出来ないくせに、また偉そうにしてんじゃないか?」

思春期ボーイの一種、ハネッカエリボーイ。

こんなヤツ居ないだろと思っていると割といたりするタイプ。

(朝風くんは希が好きなのだ。漂流してからずっと)

そこから近況を探る朝風に、より興味を引くように誘導する骨折ちゃん。

「元気みたいよ。長柄くんたちとハテノ島にいるみたい。」

「まだあんな島にいんのかよ。」

「長良、あのクズ。あいつが変なこと言い出したせいで。」

ここで、何かを思い出したのだろう。

「そうだ、お前に頼みがあんだけど。俺の仕事手伝ってくれないか。」

(ちょうど雑用を探してたんだ。こいつってあれだろ、人に頼りにされてるとこ見たこと無いし、誰かの役に立てるって聞いたら簡単に喜ぶはずだ。)

声を聞いて、んん。と難色を示しかけるも

「ちょうど進路で悩んでたの。私なんかで大丈夫かな。」

と喋るときは常時演技をしてしまう骨折ちゃん。相手の心が読めても、そこから自分へと好意を向けさせるようなテクニックはなかった。

空気が読めても、読めすぎるが故に一歩引いたような対応しか出来ない。

現実のあるあるを尽くこのシーンで落とし込んでいる。

それは以下のコメンタリーの「誰しもが持つ得意・不得意をアニメならではの表現に置き換えているだけですね。」でも語られている。

そんな作られた骨折ちゃんの話し方に対し

(こいつ俺のこと好きだろ。はぁあ、モテたいのはこいつじゃないんだよな。)

とあっさり調子づいてしまう朝風。実は、骨折ちゃんの手のひらで踊っているだけだが、当の骨折ちゃんは手のひらに乗せても掴むことが出来ない。

それは自分の心持ち次第だろうか?それとも経験が足りないから?

ある人は中学からだって付き合ったりしている。この出来不出来も能力だったりする。

「別に返事は今じゃなくていいんだ。ちょっと考えといてよ。」

「うん。ありがと。」

(意地っ張りでわがままで、ちょっと性格悪いけど

変だよね。話す度に傷つくのに

それでも私は朝風くんが好きなの。漂流してからずっと)

話す度に、本当の朝風くんを思い知らされ、自分の理想がズタボロになる。でもそんな朝風くんから離れられない。

そうなったのは、能力があったからこそ。能力で人の心を覗けるようになって、初めてひどいことを言う朝風くんに惹かれてしまった。

それは自分にないものを埋めてくれるからだろうか?

キレ味のある言葉を断定して言い切ってくれる人に惹かれる。

こんな経験は誰にしもあるのではないだろうか。

だが、そんな朝風くんもまた、心の声で漂流前からキャップからずっと見下されていたことが分かる。

惹かれる彼の発言の根底にあるのもまたコンプレックス。このコンプレックスの埋め合いが今回のキーなのかもしれない。

過去回想

そうして、骨折ちゃんは過去の朝風のことについて振り返る。

4話の飛び込みシーン。俺のこと見ろ俺がみんなを守ってんだと希に思いを密かにぶつける朝風の気持ちを知ってしまう。

(もう今までの俺とは違う)

そうして、彼の近くにいながら心の距離がどこまでも離れていくことを実感していく。

(すげえなあいつに見せたら喜ぶんだろうな)

サマキャンにて、クジラが空を泳ぐ幻想的な場面を見る朝風。

そんな彼をほほえみながら見る骨折ちゃん。

さらにそれを流し目で見る加賀くん。そして後ろではバス点検してる生徒(興味なし)。

まとめると、

加賀くん→骨折ちゃん→朝風→希→長良?

という構造になっている。

そして、9話での希とのやりとりも振り返る。9話は10話のための下準備であったのだ。

(俺は希を守りたいだけなんだ。)

(そうすれば希も俺を見直して、俺を振ったのもホントの俺を分かってないだけだ。)

希を守れば、希は自分を見直して付き合ってくれる。ホントの俺はそんなチャラい男じゃないぜ。守りたいだけなんだぜ。

そう思っているからこそ、

「あいつはお前らと行かないほうが良い」

希を振り回す長良・瑞穂と距離を取らせようとする。

そんな報われようのないやりとりに、うつむいてしまう骨折ちゃん。

そして今までの回想を終えて駅での待ち合わせに至る。

「朝風くんの片思いは失恋で終わったらしい。」

「私はいつか彼が世界から見放されて一人ぼっちになって最後に自分のところに落ちてくる。そんな日を妄想する。分かってるから、朝風くんが醜い私のとこに来てくれるはずがないって。そう、世界が変わらない限り。それは自分が一番わかってる。だからせめて。」

このセリフはいわゆる「恋愛工学」というやつのセオリーまんまである。

恋愛工学では、「本命を落としたくば、セフレでも何でも良いから絶えずその人の側にいて、その人が彼女と分かれたり病気して見放されたとき、いわば底値のときに買い叩けばいい」と恋愛対象を投資対象として扱うのが主な特徴だ。

だが、そうして付き従っていても何も変わらないことは骨折ちゃんは痛いほど思い知らされた。

そして、自分が変われない・世界が変わらない、内外の問題を解決できないと思っている骨折ちゃんは希ならと願望を託そうとする。

そう思いながら見つめる写真には、友達とのツーショとみせかけて、何かしら朝是が入ってる写真ばかり。

そこに通知、アキ先生という文字

またもや回想。

ぬいぐるみをみながら、「アキ先生のおっぱい…」と思う朝風。

9話にてぬいぐるみを捨てきれない朝風は、その幼児性の象徴を眺めながら、まさしく母性の象徴であるブーブにすがりつきたくなる。

それに対して、

「あの人が朝風くんを悪い方に引き込んでく。

朝風くんのことなんともおもってないくせに

彼の能力だけが目当てなんだから」

アキ先生の本心は

(ああ、メンドクセ)

「体が目当てなんでしょ」に対する「私の能力が目当てなんでしょ」。

「早く別れたほうが良いよ絶対!」

自分はどうすることもできないのにアキ先生は簡単に籠絡してしまう。

思い切りの良さ、大胆さを持てないからこそ、アキ先生に嫉妬混じりで否定しようとする骨折ちゃん。

実は操られているだけの朝風

一方、朝風は神と出会う。

パルテノン神殿の柱みたいなものがある。この場所は明星もいたとこだ。

「今、この世界の存在を脅かす者がいる。それは戦争だ。君に戦争を止めてほしいんだ。彼を殺して欲しい。コレは今まで誰も成し遂げてはいないことなんだ。君がこの世界に死を作るんだ。君なら出来る。」

8話で戦争は神殺しを目指していることをヤマビコは告げた。そして、神もまた戦争を殺そうとしている。

8話での戦争とヤマビコの関係が同一のように見えたのと同じように、神と戦争もまた同じ関係(誰の心の中にも飛び出せないヤマビコと、消し去りたい戦争がいる)のかもしれない。

だが、自分では殺すことができないのか、朝風の能力を使おうとする。

何故、誰も成し遂げられないのか、朝風にしかできないのかは不明。

だが、おだてられた朝風は誇らしげな顔をしている。

ここでもまた、朝風はアキ先生や骨折ちゃんと同じように、思惑に乗せられて動いているに過ぎない。

この本当の自分を希に見せようとすればするほど、実は自分を構成するものが他人の思惑しか無いという構成はなかなか辛い。

能力遺物

このやり取りの終わりにソーセージ二本が映る。

もう一本がもう一本の右上に乗ってる。

これが何なのかよく分からなかった。

だが、コメントで「荘・誠司=ソーセージ」と見てようやく気がついた。

ビジュアルだけになると意外と気づかなくなるもんだなと。

だが、この二本のソーセージ遺物が何の能力を持っているか不明だし、当然説明もない。

なので、ここでは今回の話のテーマ・能力遺物を強調するための映像的伏線として捉える。

待ち合わせ

再び、骨折ちゃんの解説から。

静止した存在の私達はもう先に進めない。

ウニとこんぶの上にレールが敷かれていて、その先には海が続いている。

セリフとイメージの両方で説明。

「みんなやることも、やれることもない。列車の行き先も与えられる役割も敵が誰なのかも分かってないんだ。ここにはぼんやりとした不安だけがある。」

9話ラスト、サクラのあくびを見てる際の回想。

「私達は死なないはずなのに

でも朝風くんは自分が世界を変えられると思ってる。俺にしか出来ない偉大なことに取り憑かれてる。

私に朝風くんを変えることは出来ないから。」

ここでも、自尊心を餌に弄ばれていることを説明する。

そして、希が気になってしょうがない朝風をみてがっくしな骨折ちゃん

ながらパート

ハテノ島もかなり沈んできている。水位が上がってきている。

もうじき沈むということだろう。

9話での成長により、サクラも自分が瑞穂に束縛していたことに気づいて反省したのか、ヤマビコ経由で能力の説明をしてもらう。

とらが注文げんが運ぶ、サクラが元の世界からコピーを担当。

そこで、自分を複製してと頼む瑞穂。

ただ、倫理観があってネコは複製しようとしない→9話の悲劇を繰り返さない説

そして、ヤマビコは漂流の原因は長良と同じく、無意識の内に関わってるだけだから、サクラだけでもないと推測。

となると、何もしてないことになる瑞穂。

そこで、瑞穂の能力について考える長良。

「ラジダニは猫の気持ちを見落としていた。だから瑞穂自身の可能性に気づけなかたのか。」

「僕たちは決まってしまった漂流に囚われ続けている

瑞穂の能力は静止(生死)に関わる能力かもしれない。」

この世界の要素、時空(過去未来から引っ張ってこられる)・静止(壊れても元通り)、時空は長良だとしたら静止そのものは瑞穂か。

「あのときこのことを知っていたら結果は変わっていたかもしれないな。」

ヤマビコがそういう。

決心する希

長良と希が二人で歩くとき、

「私も一緒に行こうかな。」

迷っていた希がついに決心する。それは9話の長良のセリフ

「僕は君のおかげで変われたから、
 君がヒカリを見せてくれたから、
 帰ろう。           」

が大きかったのかもしれない。

そこへ着信が、そこには骨折ちゃんからの誘いが。

「気になってた。

スマホきらいじゃないの。」

1話でスマホをもらっても叩き割った希が、連絡を取るためにスマホを使う。

「そうなんだけどね。」

どこにいるかも分からない中で、どうしても話さないといけないからしょうがなく持ったのだろう。

そして、再び主観が骨折ちゃんに移り、骨折ちゃんが希とだけ本音で話せていたことを告げる。

それは、彼女は心を覗いてもずっと本音で喋ってたから。

9話のラストで見送る希は

「私はわたしの心に従うそう決めたんだから。」

迷いが晴れて、さっぱりした感じ。

「希なら朝風くんを(変えられる)。」

そんな彼女を見て、そう確信する。

世界を変えられると思ってる朝風

自分が変わらないと朝風はこないと思ってる骨折ちゃん

つまり、希を使って変えようとしてる骨折ちゃん

そうして3人が重なる

こんぶとウニの海岸を歩く

「おぉ、でかい。」

「仕事のジャマだ。」

本心ではないことをいい、それを利用していく骨折ちゃん。

次第に調子づく朝風は尊大な態度で

「世界平和のために悪者退治」

と豪語する。

「やっぱ朝風くんはすごいね。」

またしても機嫌を取ろうとする骨折ちゃん。

それを睨む希

活躍するとこみたい。見た〜い。

乗り気ではない希にも、ウインクでアイキャッチ

今回は骨折ちゃんの思惑通りにことが運びそう。

この世界”戦争”

ヤマビコから聞いていたのとは違うような世界に来た一行。

そこに、アキ先生登場。

予定が狂い骨折ちゃん「やなやつ。」

ここで、挿入歌が流れる。

ここでは映像と歌詞両方で、心象描写しているので、両方とも追ってみる。

歌詞

どんな魔法でも 私の心はあけないよ 
どんな魔法でも 私の心は奪えないの oh
今私ができる ことはまっすぐに生きること 
今私が出来ることは目の前を信じること 
君のことは 愛してるけど 私のものではないんだ 
世界で私は生きてるけど 染まったわけではない
私は誰にもつかめない風になりたい 見えない心を見つけたい 
昨日とも会えないのならちゃんとした別れをして 
ちゃんと始まり見つけて ちゃんと私を信じて 
今日を吹くのだ ah さようならだね 
ほら 今日を歌を歌えるから

カネヨリマサル「今日の歌」

映像

急斜面を上がる一行。

したり顔な朝風。

そこで息切れしながらもなんとか追いつかなきゃと急ぐつばさちゃんがコケてしまう。

ぐねって足を残念そうに見つめるつばさちゃん、朝風は気にせず前へ。

あって、焦って顔が曇る。そんなおり、希が手当してくれる。

真顔でなんか言う希に、ハハハそうだね的な顔をするつばさちゃん。

そうして希から手当を受け、それを待つアキ先生と朝風。

あくびするあき先生。朝風は崖見てる。

そんな興味なさげな二人を見てまた落ち込むつばさちゃん。

(ここでサビに入る)

バッグの中の何かが気になった希、それにきづくつばさちゃん。

それを見て笑顔になるつばさちゃん。

それで希と話しながら登ることに。

そして再び一人で前を向いてあるくとき、9話の長良のセリフを反芻するつばさちゃん。

「それを決めるのは朝風じゃない。」

それを見てハッとしてるつばさちゃんのカット。

そこから、若干アゴを引いてペース上げるつばさちゃん

歌詞と映像をあわせて考えると、どうやら骨折ちゃんは朝風が好きであっても、彼に染まってるとかそうではなく憧れとしての彼の幻想を追っているだけに過ぎない、最後には線引をちゃんとしてますよという宣言をしていることが分かる。

頂上にたどり着いた一行

余裕そうな朝風と汗書いてしんどそうなつばさちゃん

どこかアンニュイなかおをしているアキ先生のアップがくる。

アキ先生の声は見せないようにしている。

そして、頂上からはどこまでも続くような渓谷が

そして渓谷を能力で下る一行

そこで同じ速度で落ち続ける男を発見

うわってなるつばさちゃん

近づいてみる一行

「こいつが戦争なのか?」

8話での戦争は腰に二重のベルトをまき、右足にも何か巻いてる。

だが、この人は何も付けていないし、そもそも顔の作りやら何やらが違う。

ただそれは、主観によって、世界によって変化するものなのかもしれない。

なぜなら戦争は自分の負の部分なのであろうから。

だが、「この人、空っぽだ」と気づいた(声が聞こえてこない)つばさちゃん

そして気づくと、アキ先生だけがこちらを見つめている。

そして聞こえてるのが分かっているの前提で思念を送る。

「私は知ってるぞ」

なんか口裂け女っぽい感じ(影と口元)で怖い。

崖の上のハンモックで、絵葉書をかきはじめる希。

何故ここで止まる必要があったのかは分からないがレトルト、キッチンバーナー、といった登山グッズがたくさん出る辺り趣味の世界で構成されている?

こんぶで出汁とってるのも細かい

それが何を指し示すかは不明だが、この作品での絵作りは整合性というよりも舞台設定としての役割が大きいので、少なくとも二人で話すシーンを作るために、この舞台設定をしたのだろう。

「どうしたの?なにかあった?駅であってからずっとおかしいよ」

「あのさ、私。」

希で朝風を変えたい骨折ちゃん。おそらくそのことで色々告げたのだろう。

また場面が変わり、足場がるとこに立つ(最初からそうすればいいところを敢えてそうしているという舞台設定)。

「退屈な世界だな

戦争はどこにいるんだ。」

今見た男は朝風にとってはどうにも戦争には見えなかったようだ。

「戦争を見つけたらどうするの。」

ここで希が仕掛ける。

「ん?どうしたんだよ」

またかといった調子の朝風。

「戦争だからって殺すの?」

この世界において殺す動機がそもそも失われているのではないか。

だが、朝風は自己肯定感のために懲罰する。

「ここには警察も軍隊も居ない。誰かがやらないといけない。それが俺だ。」

そんな朝風に希

「戦争が何かもわかってないくせに」

ヤマビコから話を聞いた希にとって戦争の正体が何か分かっていた。

だから紋切りのようなことを言う朝風に本質を問う。

「んんぅ〜」

言葉に詰まる演技

「死を作るってなに?あんた神にでもなったつもり?」

ここで、先程告げられた神との会合内容について問いかける。

「おあ?なんでお前がそのことしってんだよ。」

「その女が全てお見通しだからだ。」

「こいつは人の心を読む能力を持ってる」

ここでずっと黙っていたアキ先生がついに発言する。

そして慌てだす朝風。

「全部わかんのか?俺の気持ちも、今考えてることも。」

顔を見ず「ごめん」

対して顔を赤らめる朝風

女子二人は黙りこくっている

壁を殴りつつもアキ先生の胸にうずくまる朝風。

依存から抜け出せない。

「あいつら俺を笑ってたのかよ。」

「ヨシヨシ」

頭を擦る先生。

「尺度を変えるとよく聞こえるんだ。

あの女の声が。私の能力で相対的にね。」

5話での「私の相対性と相性がいい。」といい分かりそうでよくわからない能力だが、これを現実世界に落とし込んで考えると、相手との距離感が分かるとかそういうことなのだろうか。ズレを補正していくと相手の言わんとすることが聞こえてくる的な。

そして、アキ先生は敢えてここで自分の能力の説明をした。

中途半端なことを言うと、朝風が逆上するのをよく分かっているからこその発言だろう。思春期ボーイの心をよく掴んでいる。

思春期ボーイに必要なのは母親だったのだ。骨折ちゃんは強い母にはなれなかった。

そこに希から通知がくる

つまり、怒りのあまり二人をほっぽって朝風は出ていってしまったのだ。

それで「どうしよ」ってことで黙ってたのかもしれない。

文言は、

「私達だけじゃ帰れないから
迎えに来て
決着をつけよう」

トーク履歴

そして、希のスマホ画面には、

あれわたしのりゅっく朝風に
あずけてなかったっけ?
もう着いてんだけど
返事くらいしろよ
もう大丈夫だから
どんだけ心配したと思ってんだよ
お前のそういうとこ
気をつけたほうがいいよ
私達だけじゃ帰れないから、迎えに来て
決着をつけよう

時間間隔がどれだけ開いてるかは分からない。

だが、そのやり取りはとても一方通行な感じだ。

SMSではわりと素直な朝風。それに対して物凄く突き放したようなメッセージしか返さない希。

この本命の子に送っても、どこまでも脈がない感じのする履歴はかなり来るものがある。

朝風もまた、骨折ちゃん、加賀くんと同じだったのだ。

その履歴を見て、つばさちゃんは驚く(おそらく決着のこと)。

そして、希は得意そうにスマホを崖に投げ捨てる。

つまり、最後のシガラミだった朝風と決着を付けられることで、必要に無くなったということだろう。

スッキリした感じの希

それに対して、自分も捨てようか悩む骨折ちゃん

黒画面に自分が映るのを見て

数刻したのち無表情からほほえみで、同じく投げ捨てる。

骨折ちゃんのスマホの中には、朝風くんへの執着(写真、メモ)で溢れている。

その執着を黒画面に映る自分を見たことで捨てる事ができた。

骨折ちゃんにとっての”箱”から飛び出す第1歩になったのだ。

そして、一緒に笑う。

次に絵葉書が映る。

絵葉書の内容

この世界『戦争』
どこまでも続く崖、そこは真っ赤
全てが陶器で出来ている。鳥の絵 鳥や植物全て
ここには、深くてどこまでも続く大きなキズがある。
ヤマビコの言ってた戦争や彼が持つ能力『キズアート』...(親指で隠れてる)

隠れてる部分は多分、「と違う」とかかもしれない。

能力遺物である絵葉書。

「それも能力遺物なんだ。」

「うん、長良からもらってきた。」

クッキーをかじりながら話す。

「私にはコレぐらいで丁度いい。」

はがき裏書き。

つばさに付き合ってたどり着いたこの世界『戦争』
朝風の言うにはここに戦争がいるらしい
ねこちゃんの回想ボックスに
P.S 昆布が大量に手に入ったので帰ったら湯豆腐にしましょう
ねこちゃんと湯豆腐の絵

おそらく、FROMとTOに名前を書くと自動で送られるのだろう。

SMSに対する絵葉書。希にとっては送るだけのものが良いということなのだろう。

「この崖、ホント世界にできた傷みたいだね。」

キズアートは心の傷が具現化した宝石のような結晶。

対して、ここでは線のように引かれた渓谷の一番下に血のような赤の川がある。

「うん、ヤマビコが言ってた戦争とも重なる。」

心の傷がここにはある。

「でもさ、戦争って本当に起きてるのかな。」

いるのかなではなく起きてるのかな?戦争を知らない子どもたちの、子どもたちの、子どもたちからのメッセージ。

戦争といえば、国と国同士の争い。だがこの世界に国も戦争もあるのか?

だが、8話をベースに考えると、戦争とは何も国同士でもないし起きるものでもない、自身の中に吹き荒ぶ嵐なので、簡単には見えない。

「私も思ってた。あの駅でたくさんの声を聞いたけど、誰も戦争を知っている人はいなかった。」

誰も戦争を知らない。でも、神やヤマビコは知っている。ヤマビコも神も数千年昔からいる。

つまり、この世界において戦争を知るのは昔の人だけ、だが今もなお神は戦争を殺そうとしている。

そして、8話で戦争が言わんとするのは内と外の問題の解消、自己の問題の解消と外へ飛び出すこと。

だとすれば、神が戦争を殺せないのは自分が外に出られないから、内にこもってしまうから、問題を朝風に解決してもらったりしようとしたりと、自分で解決できないことが一番の問題なのかもしれない。

だからこそ、この問題の最後の解決点は校長=神の自己解決にもあるのかと考えたりする。

そしてカットが変わり、食べていたクッキーは残り2枚となる。

朝風との決着

そして、下から上へ上がってきた朝風との決着(7話の長良っぽい)

睨まれたと思って、思わず下を向く骨折ちゃん

「あんたの心の中なんて、能力を使わなくたって分かるんだ。」

圧をかけられた骨折ちゃんのフォローにも見える

「バカにして、誰のおかげでここに居られると思ってる。今だってそうだ、ちょっとぐらい…」

褒めて欲しい朝風。周りは褒めてくれるのに、肝心の希には全く…

そして、周りの褒め言葉も実は全部嘘っぱちであることを前半で見せられているので、朝風に拠り所が全くないという辛い展開に。

骨折ちゃんですら本当に朝風のためではなく、自分の理想の朝風を維持したいがために動いている。

胴上げ落としみたいな感じなのかもしれない。朝風がどこまでも不憫に見えて仕方ない。子どもであることを許してくれない不条理な世界。5話で言った「ひどい世界だったんだ。誰も俺に優しくなかった。」に対して、表面上は優しくても実はここもひどい世界であるという皮肉。

「私があんたを振った理由を教えようか。私は朝風を尊敬できない。だから付き合えない。」

そんな朝風を一言「尊敬できない」で一刀両断する希。

「みんなだって、神だって俺のことを認めたんだぞ。」

そのみんなが、自分に嫌味を言っている(アキ先生含め)、もしかしたら神でさえも…

そんなのは承知で、なけなしの材料をぶつけるしかない朝風。それに対し、

「人がどうこうじゃない。あんた自身が決めた価値の話だ。」

自分が決めた価値がない、ブレブレのやわな自我は希にとっては気味悪く、尊敬には全く値しなかったのだろう。

今回出てきたトゲトゲのウニと、その下にあるブニブニでヤワヤワな昆布はもしかしたらそんな朝風の心象風景を映し出しているのかもしれない。

「私は帰るよ。たとえ自分が死んでいようとも。私は自分の運命を受け入れる。」

ここにいればずっと生きながらえることだって出来る。それでも、元の世界へ帰り、死んでいることが分かってでも行く。

普通であれば選択できないことであるが、希にとってその決断が出来ないことそのものが死んでいることと同義であるならば、外へ出ようと色々することが生きているということだし、それに悔いを感じないということを、8話でのヤマビコの回想、9話での長良の告白により確信したのだろう。

この辺りの絶望と葛藤は、かする程度にしか見えない(独白がない)ので、希に非常に感情移入しにくい構成になっている。

だが逆に、希にフォーカスして感動物語にしてしまった途端、この作品のメッセージは崩れてしまうのだろう。だからこそ、必要最低限の機微を写し取ったのかもしれない。

「俺はお前ほど強くは生きられない。与えられた能力でしか自分を肯定できなかった。」

そんな希を視聴者よりもずっと見てきた朝風は、その発言を受け止めた上ですっと自分の本音を打ち明ける。

それを聞いて、何か感ずることがあったのか、骨折ちゃんハッとなる。

つまり、骨折ちゃんもまた他人の心を全て見えたことで、テヘペロしたりとどこか皆を上から見下ろして、そこから関係を進めることが出来なかった。

「俺はお前みたいになれない。だから、追いかけてたのかな。」

下を向いて言う。与えられた能力による空虚な肯定感を埋め合わせるように、本質的な肯定感を求める。

「でも、それも今日までだ。」

前を向いてちゃんと面と向かって言った朝風

覚悟を決めた感じ。本当に必要だったもの(他者との関係の構築)を認識し、希への執着を捨てることを決めたのだろう。

「そう、分かった。ならこれでさよならだ。」

そんな朝風を見て骨折ちゃん。

「やっぱり朝風くんを変えられるのは希だけだった。」

そうして、つばさちゃんが9話リバース中にて、うずくまる希に話しかける長良のシーンで

「今度は僕がヒカリを見せるんだ」

と心のなかで決心して微笑む長良。男前すぎる。

1話のどうしようもない捻くれ者だった長良が、希との出会いにより

2話の鳥の問答→4話の球審→5話の魚釣り

で、段々と成長していって、遂には希にヒカリを見せられるようになった長良。

中盤での山登りのシーンでも長良が浮かんだように、骨折ちゃんは長良くんのように変わりたいと思っていたのかもしれない。

それこそが自分にとっての世界を変えるということにも繋がるのだろう。

「じゃあ、終わらせよ。戦争を。」

決着が付いたからか、ここで実務の話に取り掛かる。

「おぁ?」

「この世界の攻略はあんたにしか出来ない。それは認めるよ。朝風はこの世界から選ばれんたんだ。」

本音を言ってくれたことで、ようやく認めた希

朝風は、右下を向きハンと鼻息をもらし「何だよ急に」みたいな顔をする。

伝説のラスト

崖に立つ。

下には血のような赤が。

「ここには大きなキズだけが残ってる。彼は時間を過ごしすぎたんだ。もう止めてあげよう。」

落ちたときに風でなびく髪や服。それが地面について三角座りしてるときですらそうなっている。

それを朝風の重力の力でもとに戻す。

すると彼がいたとこにリボルバーだけが残る

そして素晴らしいピアノの曲が流れ出す。

何かしら思うところがあるか希、少しうつむき加減に見る。

リボルバーを拾う朝風

このカットで、血は白色に変わっている。

男一人を女3人が眺める構図、そこに渓谷の僅かな隙間のような白い一線が映える美しい構図。

リボルバーを眺める朝風

右手で上に向けて持っている

それがカットが変わり→の方向に銃口が向くように映る

そして、若干時計回りに画面が回転する。

すると希が立っていたとこが崩れる(陶器が割れるSEが入る)。

驚く骨折ちゃんに、動じないアキ先生。

「ったく。」

左手で能力を使い、持ち上げようとする朝風。

手が上がり、ちょっと下がる(動きで演技)。

画面フェードアウト。そこに校長の語りが、

「心の奥底は自分でも覗けない。」

言い方が良い。

「心の奥底は(タメ)自分でも(まさかと驚く感じ)覗けない。」

真っ白いとこに左手をかざしながら背中から落ちていく希

「ちょっと、朝風くん!」

なにしてんだ!という感じで。

「ほぁ…?」

ちょっとタメて、つばさちゃんの方を見つめる

心ここにあらず。

言われてようやく自分が何もしてないことに気がついた。

そうして、放心したままボーッと下を見る

そして信じられないかのように左手を見る

「俺、どうして。」

ズパーン!

いった瞬間に切り替わって校長が振り向き、すぐさまガンマンの早打ちのようにリボルバーを打つ

「偶然に生まれる能力の結晶。美しいと思わないか。」

戦争と同じようなことを言う。

→8話で戦争もガンマンのように鳥に発砲する。

能力の結晶が美しい。

→心の傷の腫瘍の具現化。それが結晶になる。それが美してくて集めたい。

つまり、校長の心にも戦争がいる。

校長ですら受け入れ難い本当として戦争がいる。だが、全部内なる自分であるがゆえに、
それを否定したい。だから、言動が著しく似てくる。

そしてご多分に漏れず、校長は神であるはずなのに自分で戦争を殺せない。なんで?

基本お願いベースだ。つまり、校長もやまびこみたいに外に出れないのだろう。

地面に降り立つとコンパスだけが残っている。

EとSの間を針が指している

そのとき、朝風の向きはコンパスの文字のNと同じ。

「ほぁ…ほぉ...」

うなだれる朝風

言葉も出ない。

「私は本当の朝風くんを知ってると思ってた。だけど違ってた。」

これは11話にて、「希は朝風くんを信じていたのに」と逆説的に朝風が希を信じられなかったことを示すメッセージがあった。

8話のフォーマットで考える

ここで一番の核心に迫るのだが、今回の第1カットは戦争を表す8話の背景だった。

つまり、この10話もまた8話と同じ構成であると考えると、今回外に出られないのは

・骨折ちゃん
・朝風

となる。そして、それぞれの立場から8話の 

やまびこ=外に出れない・こだま=ヒカリを見せる・戦争=本当を突きつける 

この関係を当てはめてみると

骨折ちゃん:骨折ちゃん=やまびこ、希=こだま、朝風=戦争
朝風   :朝風=やまびこ、アキ先生=こだま、希=戦争

になるのではないかと勝手に想像する。

骨折ちゃんは長良が希のおかげで変われたように、
朝風も希で変われたのだと思ったのだろう。

ただ、彼の本心にとって希こそが戦争だったのだ。

自分にないもの、本当のことを突きつける存在としての希。

そんな彼女を欲していた反面疎ましく思っていたのだろう。

思春期ボーイにとって最も受け入れがたいものは純真さや決意。

だからこそ11話にて、やはり朝風は希が死んだ理由を長良に求めて、長良に子どもみたいな中傷を送りつける。何も変われていなかったのである。

そして、この三つ巴の関係を強調するように、ものすごく無表情に見つめるアキ先生。

朝風は結局アキ先生に囚われ続けることを示しているのか…

存在証明

画面が切り替わってねこが鳴く

「ニャ〜。」

音楽がここで終わらないのが良いね。これだけで終わらない。

島に届いた2つのハコがガタガタなるのをネコ3匹、ヤマビコ、長良、瑞穂が見つめている。

鶏が鳴いている。

それを木の棒で造った吊り下げ台で吊るす。

「右が瑞穂が注文した鶏で、左が僕が頼んだやつだ。」

「ね、ホントにやんの。」

長良は鶏を殺そうとする。

前を向いていた瑞穂が、右下を見て目を逸らす。

長良が鶏に手をかけたとき、

「やっぱダメ!」

そう叫びこっちを見る

そして、ナイフが腹を通るカットが入る

切れ味の悪そうな金属音が響く

暗転の後、2羽とも刃が通ったことが分かるように、地面に血が滴り落ち、鶏は黙り込む。

再び瑞穂は右下を見つめる。

「瑞穂は誰かが死ぬのを見たくなかったんだ。」

血の付いたナイフにアップ。真に迫るものがある

「今夜は親子丼にしよ。ちゃんと食べてあげよ。」

そういった瑞穂を眺めるサクラ。おそらくそんな瑞穂の成長を感じたのだろう。

時間を置くと、右の鶏だけが再び鳴き始める

それを見た長良は何かを確信した顔をする

そしてEDへ。

鶏殺しと希

長良がコピーを頼むとそれは静止の範疇を超えて、ナイフを通すと死んでしまう。

この実験からこの世界での死は、長良がコピーしたものなら、今あるコピーを置き換えることで十分もたらされることを示している。

そして、9話での消滅に対し、今回は他者への殺害が大きなテーマになっている。

長良は自分たちの帰還の手がかりを掴むために鶏を殺す。

「瑞穂は誰かが死ぬのを見たくなかったんだ。」

鶏に対して誰かというのは何だか少し違和感だが、つまり瑞穂の能力がやはり静止を与える能力で、長良が頼んだものにはそれが効かないということなのだろうか。

ただ、ここで敢えて実験シーンを最後の方へ持ってきたのは、希が消えるシーンと関連をもたせたかったのだろう。

朝風は、またかといった感じで希を救うが今回は力が入らなかった。

それはある種見殺しにしたのかもしれない。心の傷である赤い川だったところ(落ちたときは真っ白な何もないところ)に落ちる。

ただ、静止しているならば物凄く痛いで終わっていたはずである。何故、能力遺物化したのか?

まず、ソウとセイジが消えた後、ソーセージの能力遺物が残った。

8話の戦争が語るキズアートもまた心の傷=別のこの世界であることから能力遺物であるといえる。

つまり、何らかの形で別の世界に取り込まれてしまうと能力遺物化してしまうのかもしれない。

希の場合は傷があったところに落とされてしまった。そうして傷に取り込まれたと考えると死んだことと合点が行く。

だが、赤い川はリボルバーの能力遺物が残ったときから消えている。

なので、具体的にはあのリボルバーで打たれたことで能力遺物化したのではないかと思う、あの崖崩れふくめて。

そしてその引き金を引いたのは朝風なのかもしれない。無意識の内に引いてしまった。

だから助けることもしない。

長良たちは自分たちの活路を見出すために鶏を殺し、朝風は現状維持をするために希を殺す。

生きているか死んでいるか。コピーか本物か。

2つの鶏が並べられていることはそのまま、長良と朝風の対比を表しているのかもしれない。

そうして、両者にあるどうしようもない断裂が、世界に出来た傷ともいえる渓谷のように、深く刻まれ違いを明確にしていく。

だからこそ、ピアノの曲とともに映し出される血のナイフが生死の生々しさを力強く訴えている。

まとめられない

とここまで、話を全部追ってみたが、追うだけでは結局、今回の話がなんだったのかがよくわからない。

・骨折ちゃんの恋物語?
・希の立ち直り
・朝風の完全なる失恋
・長良、死中に活を見る

色んな要素が被さっているためメインの話が見えてこない。もしかしたら今回はメインテーマがなかったり?と思ったりもした。

ただ、タイトルは「夏と修羅」であるから、宮沢賢治の「春と修羅」よろしく、「心象スケッチ」として朝風の心理の危機を描き出したのかもしれない。

それを表すように、希が絵葉書に傷跡のスケッチを描く。

もし朝風の内面をスケッチのように描き出すために、骨折ちゃんや希という役者が配置されたのだとしたら。

つまり、自分の心は自分でも覗けないように、他人の内側まで覗ける骨折ちゃんですら覗けないことを描くことで、朝風の中に潜む、表面的な”思春期ボーイ”とは違う朝風自身のうちにある”修羅”が描き出されたのかもしれない。

それは8話のヤマビコの後悔とはまた違った破滅の形と言えるだろう。

結局の所、骨折ちゃんも朝風も自分の世界から出ることが出来なかった。それが希の消失として描かれる。

そして、その根底にあるドロドロとした感情の生臭さを象徴するように、最後の長良が握る血のついたナイフが登場する。

自分が生きるために他者を犠牲にする。動機はなんであれ。そこにある強烈な何かが今回のテーマだったのではないかと最後に思ったりする。

希がいてもいなくても、もうここから先は生きていけない。

今回はそんな、板挟みの叫びを刻むような回だったと思う。


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