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人材育成の過渡期(後編)〜マネジメントこそ外を知る〜

前編「人材育成の過渡期(前編)ヒントはアグレッシブな公私混同?」からの続きです。前回は趣味や移住からビジネス機会の創出を図る二人の若手を例に、旧来の働き方観からのリセットの重要性を取り上げました。ベンチャーブームにあやかり、深夜残業も休日出社も厭わず、夢中になって仕事に取り組んできた、私たち80年代生まれ世代。部下や後輩にあたるさとり世代、あるいはZ世代が大切にする価値観や働き方観を活かしながら、どうマネジメントするとよいのでしょうか。

自分の受けた教育をそのまま与えてはいないか

人の育成は、自分が受けた教えや考えの影響をどうしても強く受けるものです。他の過程で成長する姿が想像つかず、やり方もわからないからと、自分の体験を下の世代にも押し付けてしまいがちです。彼らの言い分を、若さや経験の浅さを理由に「お前は何もわかっていない」と切り捨てたり、本人の得手不得手や特性、業務環境の変化(デジタル化など)を考慮せず、マネジャー自身が当時できたことができなければ気が済まなかったりといったことはないでしょうか。
無論、マネジャー側に悪気はありません。本当に改めさせなければならないことがあって、あえて厳しく接する場合もあるでしょう。けれども本人のスキル習得のスピードアップや成長の最大化を図るうえで、自分が受けた教育が最善の方法かというと、また違うはずです。アプローチに工夫の余地はあるはずですし、年長者が過去に固執したことで、若手の可能性を奪ってしまうようなことがあってはなりません。特に異端で奇抜だけど、才能の塊ともいえるような人材ならばなおさらです。

脱・囲い込みで、新たな機会を見出す

私たちの頃とは受けてきた教育のフォーマットは確実に変化し、さらには今後ますます多様性が進む中で、マネジャーは若い人たちとどのように接するのが最善なのか。私自身もまだ、明確な答えを持ち合わせているわけではありません。ただ少なくとも、次の時代を背負って立つ人たちの能力を開花させこそすれ、潰すことだけは避けたいと考えています。
けれども会社は教育機関ではありません。人の育成は、あくまで事業や組織の成長のために行うものです。それに個人の性格や特徴に合わせてマネジメントのアプローチを調整したとして、それが単なるえこひいきや好き嫌いによる態度の違いであってはなりません。
とはいえ育成は人の関わりによって行われるものですから、個人の偏りが生じるのもまた事実です。どんなに客観性を意識したとしても、どうしても“その人の味”が出てしまう。それはカレーライスやみそ汁の、家庭ごとの違いのようなものかもしれません。
若手は社会での体験を通じて、さまざまなことを吸収する時期にあたります。変化の激しい多様性や価値共創の時代を迎える中、特定の組織、あるいは誰かの教えに偏った温室育ちの状況は、かえってリスクが大きいといえるでしょう。
となると、私たちマネジメントする側が意識すべきは、囲い込みを回避することに尽きるのかもしれません。所属するチームの外、また会社の外側と接点を持つことで、自分たちの置かれた状況を客観的につかむ、いろんな価値観や方向性に触れて新しいアイデアやビジネスにつなげる。このプロセスは、まさに前半に紹介した二人の若手の仕事術にも重なります。

“よその家の考え”にたくさん触れよう

我が家の子育ての話になりますが、新治家では意識的に親以外との大人と交流させるようにしています。
たとえば保育園では着替えの仕方やトイレの使い方など、家とは違うルールを教わります。また友達と揉めたときの対応も先生によって変わるでしょうし、相手のご家庭と我が家では判断が分かれるかもしれません。保育園に通わせる時点で、新治家ルール100%で育てることはほぼ不可能です。
それならば、とにかく教えのシャワーを浴びさせて、絶対的な教えはないことや、状況や条件によってベストな判断は変わって来ることを体感してもらうことのほうが大事だと思っています。保育園の外でも、キャンプは新治家だけでなく他の家族と一緒に行く機会が多いのですが、結果的に、“よその家の考え”に触れる体験につながっています。
家の話が長くなりましたが、社会人も意外と同じではないでしょうか。
25Holdingsは良くも悪くも小さな組織ですから、アウトソーシングや社会人インターンの力を借りなければ会社の機能がストップしてしまいます。けれどもそれが内に閉じるのを回避させるのにつながっていて、かえってよいのかもしれません。

成長の二極化にどう対応するか

最後に懸念点も。若手だからといって、誰もが仕事とプライベートの両方をうまく融合させ、充実した働き方ができているわけではありません。若いうちは仕事観だけでなく、生きる力やコミュニケーション力もまだまだ未熟なところがあります。むしろがむしゃらに働く時期を経ることで、人として成長し本当にやりたいことが見えてくるというのが多数派な気もします。盲目的に働くのはよくないとブレーキをかけたことが、成長の妨げになるというのも考えものです。
キャリア自律が叫ばれる中、主体的に動ける人と与えられることに慣れきった人の間で、成長の二極化が進むことは容易に想像がつきます。放っておけば自立できる若手はともかく、“手を差し伸べることが必要な若手”をどう底上げしていくか。この課題も折を見て考えてみたいところです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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25Holdings Japan 合同会社 Country Manager >> https://jp.25holdings.com/
ジェイキャンプ合同会社 代表社員 >> https://jcamp.co.jp/

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