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機械ではなく機会

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大切なことは、機械を使うことではなく、それを機会として様々なことが広がっていくこと。コミュニケーション機器の導入に際して考えるようになったこのテーマを一緒に考えるきっかけとなるマ… もっと読む
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生体工学の講義の感想に対するフィードバック

生体工学の講義の感想に対するフィードバック

 先日、岩手大学理工学部の生体工学の授業でお話しする機会をいただきました。佐々木誠先生は、私に技術的な話しを期待されたのではなく、指伝話の開発・販売をしていく上でのものの見方・考え方を伝えることが、技術を学ぶ学生たちに役立つヒントがあるとお考えになられたと思います。当日は、特別支援教育に関わる学生や先生たちも聴講してくださいました。

 その日のうちに学生からの感想をまとめたファイルをお送りいただ

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青葉賞をいただいた発表と解説

青葉賞をいただいた発表と解説

 6月29-30日に開催された第46回日本コミュニケーション障害学会・学術講演会で、一般演題発表をしました。

言語コミュニケーションが困難な人とのコミュニケーション機器利用にみる
五十音の呪縛

 この発表に 青葉賞 をいただきました。大会長がおっしゃってくださったように、限られた人による選考ではなく学会参加者の投票によって選んでいたことがとても嬉しかったし、名誉であり責任あることと緊張しつつも

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フランス人は赤ワインを飲むから健康だという件について

フランス人は赤ワインを飲むから健康だという件について

 私の技術的な師匠は、Jean-Pierre Ribreau(JPR)というフランス人です。彼のトレーニングコースの通訳をしたのをきっかけに、技術的なことだけでなく、フランス人の考え方を学びました。フランス人がみんな彼のような考えではないでしょうが、いろんな影響を受けました。

以前 noteに書いた 「自由とは?」 の記事 も彼とのやりとりです。

 今日の話しは、講演の最後に話している「フラン

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「目の前の不便を解消することが先です!」と言った言語聴覚士さん

「目の前の不便を解消することが先です!」と言った言語聴覚士さん

 コミュニケーションのことをいろいろと考えるきっかけをくださった言語聴覚士(ST)さんと、ST x ICT というコンビでいろんな方に出会ってきた中の1つは、緘黙の中学生でした。いつも「ICTは機械ではなく機会だ」と考える力を与えてくださるSTさんです。

緘黙のお子さんの相談 もう5年ほど前ですが、言語聴覚士さんに「緘黙の中学生に指伝話を紹介するので、学校に一緒にいきませんか?」と誘っていただい

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興味あるものだけが見える

興味あるものだけが見える

 私の ”最終” 学歴は、美容専門学校 “中退” です。

 高校卒業後に浪人をして教員養成大学に入り、教育心理を専攻し小学校と中学数学の免許をとって卒業しました。社会人になって10年以上経ってから、美容師免許をとるべく美容学校の夜間部に通いました。学科は修了したものの実技の時間を十分にこなせずタイムアウト。ちょうど仕事が忙しい時で両立は難しかったので中退しました。

街で目につくもの
 教員にな

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はい・いいえで答えられる質問の仕方について

はい・いいえで答えられる質問の仕方について

 昨年度から始まった 失語症者向け意思疎通支援者 の養成講座を昨年度第1期生として神奈川県で受講しました。

 失語症とは、脳卒中や交通事故などにより脳の言語中枢が損傷を受け、言葉が不自由となる状態のことです。話す・聞く・読む・書く・計算するといった言語に関わる日常生活の場面で困難を感じることがあります。

 支援者は、安心して自分らしい暮らしをすることができるように、失語症者の外出に同行したり、

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言葉にしたものは、本当の意思か?

言葉にしたものは、本当の意思か?

「お茶飲む?」
「いまはいいよ」

この会話は、実はシンプルではない。

母のこと
 本当に恥ずかしいことですが、私は母がお肉を好きだったことにずっと気づいてませんでした。お肉だけでなく、うなぎ、お刺身、天ぷら、メロン、ピロシキ、みーんな大好きだったのです。

 子どもの頃からずっと、
 「作っただけでお腹いっぱいになっちゃった」
 「お母さんは、いまはいいの」
 「おいしい?たくさん食べなさい

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ヘルパーさんに見られたくない...

ヘルパーさんに見られたくない...

 身体が自由に動かせず、自分の声で話しができない方から、コミュニケーションアプリの指伝話メモリについて相談がありました。

相談の内容 指伝話メモリのカードは、日常生活に必要な会話のことばだけでなく、メールやメッセージを送信したり、他のアプリを呼び出すために使われています。
 相談の内容は、ずばり、

 ヘルパーさんに見られたくないものがある

 普段は自分で指伝話メモリを操作しますが、時にはヘル

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ことばだけがコミュニケーションではない

ことばだけがコミュニケーションではない

 講演会でお話ししているネタから。

スマートスピーカーに話しかけて電気をつける この動画は、iPadで使うコミュニケーションアプリ・指伝話メモリを操作し、合成音声でAmazon echoに話しかけ、Hueの電球のオンオフや色の変更を行っている例です。

 自分の声を出すことができなくても、指伝話があれば合成音声を使ってスマートスピーカーを操作することができます。もし、画面をタップすることが難しく

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百歳まで頑張ろうって、言ってしまったこと

百歳まで頑張ろうって、言ってしまったこと

 96歳の祖父に「おじいちゃん、100歳まで頑張ろうね!」と何気なく言ってしまったことがあります。何気なくというより、元気を出してもらうために意識して言ったと思います。

 すると祖父は私の方を向いてじーっと顔を近寄らせてこう言いました。

 百までしかだめか?
 その後はどうしたらいいんじゃ?

 あぁ。確かに。やってしまった。優しくことばをかけたつもりだったのに。言われた人にとってどういう意味

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壁にぶつかった時、どうしますか?

壁にぶつかった時、どうしますか?



 ドリルを使って「ガガガガ...」と壁に穴をあけるまこちゃん。

ごりくん「なにをしているの?」

まこちゃん「壁に穴をあけたいの。固いんだなぁ、これが」

ごりくん「どうして、どうして穴をあけるの?」

まこちゃん「だーかーらー、向こう側に行くんだってば。(やっぱりダイナマイトで一気に...)」

ごりくん「じゃぁ、あっちのドアを使えば?」

まこちゃん「...」

目的を見失ってしまう 最

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どっちがパ〜ンダ?

どっちがパ〜ンダ?

 高齢者向けの講演会でお話しする機会があり、その時に登壇されていた特別支援学校の校長先生と意気投合しました。そこから始まったご縁で、特別支援学校のICT外部専門家として学校に通い、先生方や保護者・生徒との相談会をする役割を、いまでも続けています。

 それでも私はやってしまった間違い。

 これは、学校とは別に自宅訪問した小学2年生の女の子。座ったりお話しができないけど、手の動きでスイッチを使って

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使いこなさなくていい!

使いこなさなくていい!

 講演会で、最近のICTを使った便利な生活の様子をご紹介すると、「私もこういうのを使いこなさないと!」「うちの子はYouTubeだけではなく使いこなせるようにさせないといけませんね」とおっしゃる方が少なくありません。
 でも、「使いこなす」っていう高いハードルを自分に課すから大変になるんです。ICTは使いこなさなくていいんです。ただ「使うだけ」でいいです。iPhoneやスマホを持っている方はたくさ

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サンプルカードをみた時の反応

サンプルカードをみた時の反応

 「右側半分、ど〜れだ?」という指伝話メモリで作ったサンプルカードセットがあります。野菜を半分に切った左側を見せて、右側を選んでもらいます。
 これを展示会で見てもらった時、大人の多くは迷わず、そして急いで正解をタップします。

 でも、このカードは、正解ではないものを選んだ時が楽しいんです。:-)

 「これじゃぁ、トマネギ!」

 左がトマト、右がタマネギ、それならトマネギ。そう、これは正解な

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