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フランス人は赤ワインを飲むから健康だという件について

 私の技術的な師匠は、Jean-Pierre Ribreau(JPR)というフランス人です。彼のトレーニングコースの通訳をしたのをきっかけに、技術的なことだけでなく、フランス人の考え方を学びました。フランス人がみんな彼のような考えではないでしょうが、いろんな影響を受けました。

以前 noteに書いた 「自由とは?」 の記事 も彼とのやりとりです。

 今日の話しは、講演の最後に話している「フランス人は赤ワインを飲むから健康である」ということについてです。

 私が若い頃、フランス人はランチでもワインを飲む、いつも飲む、水のように飲む、と日本で言われていました。実際にフランスに行ったらその通りでした。:-)

 Jean-Pierreと赤ワインと健康の話しになった時に彼がしてくれた話しです。

 フランス人は、赤ワインを飲むから健康だ、ということを聞いたある国の科学者が、赤ワインエキスを抽出したタブレットを作った。これなら仕事中にも運転中にも服用できる。いつだって健康になれるってことだ。
 しかし、それが愚かだ。そう思わないか?
  赤ワインというのは、今度の金曜日に娘が久しぶりに家に帰ってくる、それなら美味しい肉を食べよう、牛のステーキがいいかな、ラムもいいな、ワインは何が合うかな、生牡蠣を食べるならドライな白ワインも必要だな、とか、ワクワクしながら考えて準備してその一週間を過ごして、金曜日には美味しいワインを一緒におしゃべりをしながら飲む。どんな生活していた、大変なことはないか、面白いことはあるか、といって笑いながら時間をかけて食事を一緒に楽しむんだ。
 だから健康なんだ。赤ワインが健康の薬ではない。赤ワインはきっかけなんだ。
 それをなんだ。タブレットだ?
 「今日、お父さんは仕事で家に帰れないけど、夕食の時間にみんなでSkypeで顔をみながらこのタブレットを一緒に飲もう。」
 これで健康になるか?   

 私はコミュニケーションのためのアプリ「指伝話(ゆびでんわ)https://www.yubidenwa.jp/)を販売しています。指伝話はまさに赤ワインです。コミュニケーションのきっかけです。

 「指伝話を導入すれば、コミュニケーションがうまくいくんですね?」って聞いてくる人もいますが、「そんなことはない」です。もちろん、コミュニケーションのきっかけになると信じて、指伝話はいろいろと考えて作っています。でも、その子と話しをする時に大切なのは、その子と話しをしたいと思う気持ちであって、指伝話ではありません。

 アプリがあれば喋れる、スイッチが使えればこの子はなんでもできるようになる、視線入力ができれば自由になんでもできる、ロボットが解決してくれる、だからなんとかして欲しいと言われることもあります。それは道具の機能の話しであって、その子がその人が、心を開いて気持ちを伝えるかどうかはまた別な話しです。

 もちろん、道具はきっかけになります。でも道具を使うことにだけ気持ちが向かってしまう人が多いように感じます。悪気もなく、間違いでもないけれど、大きな勘違いになってしまいます。

 高級ワインでもてなせば彼女の気を引ける
 ワインの知識があることを見せればみんながすごいと言ってくれる
 この包丁を使えば料理がうまくできる
 あのオーブンがあれば上手に焼ける
 この靴があれば速く走れる
 あの楽器があればいい曲が演奏できる
 あの掃除機があれば部屋がきれいになる

 みんな間違いではないけれど、そうじゃぁないですよね。

 ワインは高級であるかどうかより、誰と飲むかが大事です。

 コミュニケーションで大事なのは 機械 ではなく 機会 だと私は思います。

いただいたサポートは、結ライフコミュニケーション研究所のFellowshipプログラムに寄付し、子どもたちのコミュニケーションサポートに使わせていただきます。