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【5分で学ぶマーケティング】企業の頭脳を司るマーケティングの役割-USJの事例より


5分で学ぶマーケティングシリーズの概要

こんにちは、じょーじです。普段は企業外部のブレインとして東証一部企業・業界トップ企業のマーケティング支援や、Youtuberを機軸にしたビジネスプロデュースを行っています。

今回から、マーケティング初心者向けに、「5分で学べるマーケティング」と題して、「マーケティングってそもそも何?」「マーケティングって何ができるの?」という始めの一歩から、「マーケティング戦略の基本的な考え方」「マーケティングフレームマークの基本的な考え方」までしっかり学べるようにnoteを執筆いたしました。

できるだけ実際の事例を元に読者の方がイメージしやすいよう、1トピックに1ケースの事例を元に紹介しています。

このnoteを読むとわかること

このnoteでは主に2つのトピックをUSJの事例を元に取り扱います。

-マーケティングが企業において果たす役割

-マーケティングが企業の「頭脳」「心臓」としての役割を果たすために大事な1つの視点

この2つのトピックをしっかり理解すれば、漠然とした「マーケティング」のイメージが明確になり、マーケティング関連の書籍の理解がスムーズになったり、マーケターとして活動しているビジネスマンの発言や言動が理解しやすくなります。

では早速本題に入りましょう。

まず第一のトピック「マーケティングが企業において果たす役割」について。マーケティングを学ぶに当たって、そもそも、企業がマーケティング・マーケターにどんなことを求めているのか?というところをクリアにしていきます。

企業はマーケティングに、「頭脳」「心臓」としての役割を期待する


-トップライン(売り上げ)をあげることが至上命題

利益を追求する組織体としての企業は、「入っていくお金」と「出ていくお金」の差額としての「利益」をあげるために行動します。(コーポレートファイナンスの話になるので詳細は今回割愛します)

まず、マーケターに求められるのは「入ってくるお金」すなわり「売上」のトップタインをいかに上げていくか?というところです。

(例)USJの元CMOに求められたミッション

USJのV字を手掛けた日本でもトップクラスのマーケターである森岡さんがCEOに求められた第一の仕事は「トップライン」すなわち売り上げを大きく伸ばすことでした。USJにとって売り上げを伸ばすための最大要因である「集客数」をどうしたら伸ばせるか?というところに全神経を集中させ、様々なデータを集めながら独自の分析を行います。

-企業の頭脳・軍師として役割を果たす際に必要な「ビジネスのドライバー」


売り上げを大きく伸ばすにはどうすればいいのか?と考えるにあたって、マーケターは

ビジネスが「伸びる・伸びない」の本質を見極める

ことに最も時間と精神力を使います。

ビジネスの伸びる・伸びないを左右する本質である「衝くべき焦点」を「ビジネスドライバー」と呼びます。

ビジネスドライバーでないものにいかに注力しても、ビジネスは好転せず的外れなものに時間とお金を割くという事態になりかねません。


「ビジネスドライバー探し」として、「どこで戦うか」を見極める

企業の頭脳として、最初にすべき役割は「どう戦うか」の前に、「どこで戦うか」を正しく見極めることです(cf.戦術と戦略の違い)。

「どこで戦うか」という問題を取り扱う「マーケティング戦略」の考え方に関しては、シリーズ後半の「マーケティング戦略の考え方」のnoteで取り扱います。

(ex)USJをV字回復させた「ビジネスドライバー」

USJの元CMO森岡氏がV字回復の着眼点としたビジネスドライバーを3点紹介します。

大きく分けると

1.ターゲットの客層の幅

2.TVCMの質

3.チケット価格の値上げ

の3つになります。


順に追って見ていきましょう。

当時のUSJの課題、課題解決のためのアクション、アクションをとった結果の順でご紹介していきます。


-USJのビジネスドライバー1:ターゲットの客層の幅

課題:USJが対象とする客層の幅が狭すぎる

→最大の問題は、「映画ファンだけのパーク」というUSJ側の無意味なこだわり。ただでさえ、USJのある関西市場は関東市場と比較して1/3の大きさにも関わらず、客層を自分で小さく設定していた。

アクション1:ブランディングの変更

→ブランドを「映画の専門店」から「世界最高のエンターテインメントを集めたセレクトショップ」に昇華。

映画だけではなく、アニメやゲームなどのより幅広いブランドをUJSに投下。

アクション2:最大の弱み「低年齢の子供連れ家族の集客」を強みに変える

→ファミリー向けエリアを投入。客層の幅を拡大するともに、生涯来場回数も増やした(幼児の状態、親になる、祖父母になるのタイミングで来店できる)

cf)顧客生涯価値(LTV)の最大化

アクション3:客層の地理的な拡大

→集客を関西に7割依存する体制からの脱却のために、「3万円の川」(東京から関西への交通費)・「30万円の海」(海外からUSJへの交通費)を出してでもUSJに来たくなる理由を作る必要性がある。

→ハリーポッターエリアに巨額の予算を投じる

cf)USJのハリーポッターエリア

cf)当時のUSJの売上800億円に対して450億円の予算を投じた


-USJのビジネスドライバー2:TVCMの質

課題:ディズニーと比較しても「悪くない」品質のCMだが、一級品と呼べ流レベルではない。潜在的なお客様を逃している。

→USJに来場する本質的な理由をCMで捉え切れていないため、CMを改善すれば集客を大きく改善できる可能性あり。

→中長期的にTVCMを中心としたプロモーションでブランドを強固にしていく(ブランドキャンペーン)が必要。

アクション1:CMの開発

→来場意向調査で従来の数倍の強さを発揮するCM開発

アクション2:新しいブランドキャンペーン

→「世界最高を、お届けしたい。」という新しいブランドキャンペーンを

立ち上げ、継続。


cf)プロモーションとは?

販売を促進するための様々な活動。マスメディア広告、無料サンプリング、PR(第三者にメディア上で自ブランドを紹介してもらう)、SNSの拡散を狙った販促施策などがある。


-USJのビジネスドライバー3:チケット価格の値上げ

課題:「チケット価格」が世界基準の半分以下の値段。チケット価格の改善に客単価向上の大きな伸び代あり。

→当時大人一人5800円という価格は欧米先進国と比較して半額以下の価格。日本のテーマパークの品質は世界最高。一方で、土地代・建物代・人件費などのコストは世界で一番高い。

アクション:チケット価格の値上げ

→チケット価格とチケット販売数の両方を上げて会社を往復ビンタでもうけさせる。(値上げして販売数を伸ばすのは誰でもできるが、一流マーケターには値上げしながら販売数を伸ばすことが求められる)

→値上げしながら販売数を伸ばすためにできる1つの方法:先にブランド価値を顕著に高めておいて、価格弾力性をできるだけ小さくしておく。

(cf)価格弾力性とは?

1%価格の値上げに対して、何%売り上げが減少するかという反応度のこと。小さければ、値上げを断行しやすくなる。一方でテーマパークは、価格弾力性は比較的に高い市場。(なくなっても生活に必須のものではないため)

(cf)プライシングの重要性

マーケティングにおいてプライシング(価格施策)がいかに重要かということをご説明します。

価格は、売り上げを左右する重要な要素であることに加えて、顧客からブランドへの評価そのものであるため、値決めは極めて重要な課題。


次は、第二のトピック、「マーケティングが企業の頭脳・心臓としての役割を果たすために求めれる1つの視点」についてです。USJのV字回復の中で、TVCM、プライシング、需要予測の精度、PRのやり方などを大きく変えてた森岡さん。一方で無数の変化の中に本質的な共通項があります。共通するたった1つの視点とは?

「頭脳」「心臓」としての役割を果たすために求められるたった1つの視点


-「消費者視点」こそがV字回復の原動力

例えば、P&Gは「Consumer is boss」という価値観を信じている企業です。

これは消費者視点に限りなく近く、「消費者の方を向いて消費者のために働け」という意味です。

消費者視点の会社であるということは、難しい判断の機軸に「どれだけ消費者価値につながるのか?」という1点につきます。

逆に、会社側のいかなる事情も消費者価値につながらないのでれば、一切意味がないと腹を括った意思決定ができるのが消費者視点の会社です。