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ある日の姫村家(『ストロベリーとシガレット』こばなし)
※本編読了後推奨
「寝袋」
「それはさすがに」
「あぁ、アウトドア感ゼロだもんね」
「いや、そういう意味じゃなくて」
「それがいちばん場所取らないじゃん」
「いちいちちゃんと畳むと思う?」
「思わない」
「……。それに」
と目の前のソファに転がる塊を見下ろす。
「……千年さんが入ると、死体袋に見える」
礼が無言の肯定ののち、顔を上げてベランダに目を向けたので、蛍は先回りして「そこはなしで」と
藍より深く(『愛の巣』こばなし)
※本編読了後推奨
夜明け前、仕事を終えてベッドに潜り込む時、ほんの一瞬目を覚ます幸の無防備な顔が好きだ。
開花のタイミングを間違えて戸惑う花弁のような瞼を何度か瞬かせて、ふらふらと蛇行した視線がふとこちらを捉える。
その無添加の眼差しを、青灰色の闇の中で息を詰めて受け止める数秒が好きだ。
焦点が定まりきらないうちに安心したように再び閉じていく瞼の速度や、穏やかなままの呼吸や、抱き寄せると
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