冬、綺麗なままで
春に溶け混じり、汚れていく冬を嫌って、このままで、と願った。
凛と澄む空に浮かぶオリオンを眺め、シリウスに目を細めて、この時間がずっと続いて欲しいとも願う。
時間は残酷だ。
いつも、僕を否応なしに置き去りにしていく。
行く先の見えない明日は、いつだって身勝手に訪れ、やがて去っていく。
さよならを嫌う僕を、置いてけぼりにしていくんだ。
一日の中で何度もさよならを繰り返して、生きている。
その全てが哀しく、寂しい。深まる孤独感に飲み込まれていく。
小さな否定を繰り返しながら、僅かな我慢を積み重ねて、別れていくから哀しく、寂しくて、孤独なのだ。耐えがたい痛みを伴って……。
――いつか、僕からさよならを連れ去って。
可惜 夜-Atarai Yoru-
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