サッカーの名監督は、名コピーライターだった
コピーライターは、商品やサービスについて知ってもらったり、買ってもらったり、好きになってもらうための言葉を考えるのが仕事です。そこで必要になるのが商品やサービスをじっくり観察し、その魅力を「発見する力」。
クライアントから「◯◯が売りです!」と言われたポイント以外にグッドなところはないか。「ここは弱いんですよね…」と自信がないところも意外にお客さんにとって魅力につながるのではないか。そんなふうに考えて、商品やサービスと向き合います。
だから商品やサービスのネガティブな面も、「発見する力」次第でポジティブに変えられる可能性があります。そしてこの力を持っているのは、なにもコピーライターだけではありません。
今回はその一人を紹介しましょう。サッカー元日本代表監督の“岡ちゃん”こと岡田武史さんです。
ネガティブをポジティブに変えた岡田監督のひと言
1997年、今から26年前のこと。サッカー日本代表が史上初めてワールドカップ出場を決めました。
その試合で勝ち越しゴールを決めたのは「野人(やじん)」というインパクトのあるあだ名で親しまれていた岡野雅行選手でした。
ただ、岡野選手はそれまで、代表に選ばれたもののなかなか出場機会に恵まれなかったとか。準備してきたのに声がかからず、ベンチを温めていたのです。
ある時、岡野選手はしびれを切らし、当時日本代表の指揮をとっていた岡田監督に「なんで試合に出してくれないんですか?」と詰め寄りました。
すると岡田監督は、こう答えたのです。
「おまえは秘密兵器だから、まだ出したくない」
岡野選手はその言葉を聞いて、大いに納得したというのです。
出番がない=出番を温存しているという発見
わたしはこのエピソードをテレビで見て知ったのですが、岡田監督の「発見する力」に感心いえ感動しました。
答え方を間違えば、起用されないことを不満に思った岡野選手の怒りが爆発しかねない場面。なんたって野人(!)ですからね。
出場できないというのは、選手にとってみればネガティブな状態です。実力が足りない、気に入られていない、など考え出したらどんどん負のループにハマり、パフォーマンスにも悪い影響が出てしまうでしょう。
ふつうはここで「時期を待て」とか「もう少しの辛抱だ」とかふわっとした言い方でごまかしてしまいそうなものですが、それでは相手のネガティブ思考は止められません。
岡田監督は違いました。出番がない状態=出番を温存している状態という発見をもとにして、さらに「秘密兵器」と表現したのです。ここが本当にすごい。広告業界の専門用語で言うと、発見からのクリエイティブジャンプ。「出番がない」というネガティブを出発点として、「秘密兵器」というポジティブに昇華させた大ジャンプなのです。
「発見する力」が歴史を変える
選手から見れば「出番がない」。でも監督から見れば「温存している」。この2つの言葉は、同じ事実を違う視点から表したものですよね。つまり、ものごとを一つの方向ではなく、違う方向から見ることが「発見する力」につながるのです。
そして結果的に、“秘密兵器の野人”が日本代表をワールドカップに導きました。岡田監督はネガティブをポジティブに変えたどころか、日本サッカーの歴史まで変えてしまったのです。
「発見する力」が歴史を変える。わたしもコピーライターとして、この力を磨いていきたいです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。スキやフォロー、コメントいただけると嬉しいです。
文:シノ
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