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【書評】スノーピーク「好きなことだけ!」を仕事にする経営

スノーピークのグランピング体験をしてからというもの、すっかり同ブランドやアウトドアにハマってしまいました。
アウトドア用品はもう一つの家を用意するようなもので、キッチン、照明、家具、寝具など揃え始めるとキリがありません。「沼にハマる」という言葉の意味を初めて体感出来た気がします・・
そんなスノーピーク代表、和製版スティーブ・ジョブズともいえる山井さん初の著書をさっそく読んでまとめてみました。

〜以下、本文より抜粋〜

スノーピークの「真北の方角」を一言で表現すると、それは「ユーザーの笑顔」である。  スノーピークは現在のオートキャンプにおけるライフスタイルの原型コンセプト「ドーム+タープ+SLS(スノーピークレイアウトシステム)」を創った会社として知られる。オートキャンプとは、SUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)に乗り、移動して行うスタイルのキャンプだ。スノーピークが1988年に提唱するまで、日本はもちろん世界のどこにもなかったスタイルである。そして、この新しいキャンプの楽しみ方に合致した製品を「世界で初めて」「どこにもない」にこだわりながら作り、市場を切り開いてきた。

オートキャンプが日本発、スノーピーク発だと知って驚きました。コンパスで絶対にブレない「真北の方角」=スノーピークの信念という表現が素敵。

多くの企業は経営戦略を決定する上で市場を調査し、同業他社の取り組みを研究したりしながら、「競合に対してどう手を打つか」といったマーケティング戦略に力を注いでいる。しかし、最初のテントで分かるようにスノーピークはこうしたマーケティングを一切行ってこなかったし、これからもそのつもりはない。他社の製品をベンチマークして研究したところで新しい製品は生まれない以上、スノーピークがそんなことをする必要はないからだ。マーケットの状況から判断するのではなく、自社のミッション・ステートメントから考えていき、それを具体的な戦略に落とし込む形でビジネスを展開している。「世の中にない製品」を作るタイプの会社であるため、「今ある製品」には全く興味がない。

徹底したこだわりや信念で、独自の市場創出のために、マーケティングすらしないという強気の発言は、成功したから言えるのだろうなと思いつつ、そうやって成功していること自体がやはり凄いですね。
山井さんの徹底的なユーザー視点の製品開発と、ファンとのコミュニティを大切にするという信念が、ブランドコミュニティを成熟させて、コアユーザーが中心となって広めていく口コミマーケティングの成功例を創り出したのでしょう。

これは製品の保証をしない、という意味ではない。正反対だ。保証期限を定めることなく、永久に製品の保証をしている。最初からそのつもりなので、わざわざ別に保証書をつける必要がない。  永久保証だと知ると「本当にそんなことができるのか」と驚く人がいる。だが、私からしたら、メーカーとしてそれだけ自社製品の品質に自信を持っているし、当然のことをしているだけだ。保証の対象にしているのは製造上の欠陥にまつわることで、例えば、スノーピーク製品のパーツが外れたら、製造上の欠陥になるから無料で取りつける。

スノーピークといえばこの無期限保証は有名ですね。精密機械ではなく原因を突き止めやすい道具、かつ燕三条という職人の集まる地域だからこそ実現出来た制度だと思いますが、その強みをシンプルにユーザーへ届ける姿勢は脱帽です。

スノーピーク製品の販売ルートはすべてのアイテムを扱い、スノーピークの社員がスタッフとして常駐する「スノーピークストア」、スノーピークが認定する「スノーピークマイスター」がいて多くの製品を扱う「ショップインショップ」、主力商品のみ扱う「フラッグシップショップ」などに分かれている。いずれも問屋を介さない直接取引だ。このうち、中心になるのが全国に約 60 店ある「スノーピークストア」で、売上高の8割を占めている。

それぞれの業態の違いを初めて理解しました。最近は平塚ららぽーと内にある直営店に足繁く通っていますが、スノーピーク、モンベル、コロンビア、ロゴスが連なっていて、このワンフロアだけで大抵のモノは揃います^^

私は面接の場面で、応募者が持っている資質を総合的に見ることを心がけている。「アウトドアが好きかどうか」「スノーピークが好きかどうか」と同時に、「主体的に動けるかどうか」や「周りの社員とうまくやっていけるかどうか」といったことを重視している。

スノーピークの製品は、一人のスタッフが全工程の責任者になるといいます。だから一つ一つが作品のようなクオリティで満足出来るわけですが、それを作る社員に求められる水準は非常に高そうですね。

これ(ネットやデジタル社会)に対して、アウトドアはあくまでリアルな出来事に満ちている。キャンプでは誰もが自然と向き合うことができる。テントの中に寝ていると夜、獣の声がする。星を見たり、焚火をしたりしながら、自然の時間をゆったりとすごすことができる。オートキャンプの場合はファミリー単位でそんな時間を共有できる。アウトドアにもカメラやパソコンなどのデジタルデバイスを持ち込めるが、むしろ自分が文明とは切り離されていることを楽しみたい。

情報が溢れて繋がりすぎている現代病の反動で、本能に立ち返る為にアウトドアにハマる人が多いのかも知れません。ネット系出身のキャンパーも多い印象です。

経営とは何かと問われたら、私は「常識の集積と創造」だと答える。卓越した常識あるいは原理原則を見抜く力といってもいいかもしれない。このため、定型化したセオリーを知っていたほうがいいに決まっている。その意味では、ドラッカーをはじめ、定評のある経営書は繰り返し読むようにしている。

NewsPicksの佐々木さんもおっしゃっていましたが、斬新な経営者ほど、歴史に裏打ちされた古典をしっかり読んでいるんですよね。大切なのは創造性だけではなく、土台となる普遍性でもあるといえます。

ミッション・ステートメントを重視してきたスノーピークの「武器」は、経営者である私、そして企業としてのスノーピークに3つの選択の自由があることだと思う。すなわち誰に対して、どんな製品を、どんな形で売るのかを決める自由だ。この3つの組み合わせをどうしていくかを考えることこそが経営者の仕事だといえる。

市場に迎合する自由ではなく、自ら市場を創る自由を貫き通した山井さんの経営術は、ローカルからグローバルへ発信するグローカル企業の参考になります。






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