夜無の詩

がはは

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詩|ほどほど賛歌

今日は、 ほどほどに空は曇ってて ほどほどにやりたいことがあって ほどほどに心がほぐれていて ほどほどになんだか悲しくて ほどほどに今朝の夢を覚えていて ほどほどに他愛もない話を聞いて ほどほどにおなかが空いていて ほどほどに疲れが溜まってて ほどほどにパンケーキが美味しくて ほどほどに世界の真実がわかってて でもどれも言葉にならなくて 昔に戻ったみたい。 何にも生まないけど 何にでもなれる 赤ちゃんみたいなやつ でもこれじゃ生きていけないんだよなー って声で引き戻される

    • 詞│大三角

      星降る夜に同じ月を見た 電話が僕らに星座を架けた キンキンに冷えた夜の公園 桜の燃えカスに仄白い月 真っ白に輝く僕だけの星 君とを結ぶ線の上 ビルも林もこの街も 箱根の関所も1号線も アルタイルより明るい街に 幻に見たガソリンスタンド 夢に出て来ぬ有象無象は 駆け抜ける熱で溶けていけ 例え不時着しても もう止まらない 君の元に行く理由なんて 決まってんだろ 東の空よ 沈まぬ月よ 恥じらいの炎を絶やすな

      • 詩│カニ

        カニには生まれ変わりたくない だって、かゆくても、かけないから まごのてみたいな手、してるのに 殻がかたくっていけない って ぼくの脳みそと同じじゃない たまに 開封したてのヨーグルトみたく かき混ぜたくなるのに 骨に囲まれていて ぼくの手にゃ届かん あんた、もみほぐしてよ もみもみ もみもみ ってさ かわりに背中、洗ってあげよか?

        • 詩│ジュピカの石版

          動かず引っ張る太陽と 世界を旅する彗星と どちらが幸せなんだろう なりたいものはみんなあるから 大きな声で言えないけど さりとて星と違うのは 僕らはみんな生きているから なろうと思えばなれること 物を捨てれば旅ができるし 自分になれれば光りだす ちなみにもひとつ違うのは 僕らはみんな生きているから 惹かれ合っても別れること

        詩|ほどほど賛歌

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          19本

        記事

          詩│生き様

          たい焼きは背びれから食べる派です 昔からなんですけどね、なんでなんでしょうね なんだか先延ばし感ありますよね 腹びれと迷いますが、いきなり腸から行くというのは、何か大切なものを失ってしまいそうでね いやその前に横長になってるものを横から行くなんてね、あはは、あんこがこぼれそうですよね、ケバブを下から行ったらこぼれますからね、あれは元々こぼれる設計ですけどね 気づいてしまったからには一旦リセットで もう一度目の前にたい焼きを置きます さてさて あーやっぱり考え変わりまして 首筋

          詩│生き様

          詩│怠け者の戯言

          パラグライダー中に産み落とされたのか 羽がないからどんどん落ちていく 重力に逆らえないのも弱いからなの? そうじゃないでしょ 怒鳴り声のゴミ屋敷で 勉強なんてできるわけないじゃないか 努力できるのもやっぱり才能です運です 引いた当たりくじをみんなが使い切る世界ってあまりに薄情 子ども相手にしゃがんで話すのって、それって、みんな、愛じゃなかったの? 募金は自己犠牲じゃなくて娯楽です快楽です 余裕があればそりゃ優しくできるさ 心があるならその身を削ってみてください

          詩│怠け者の戯言

          詩│酸素

          押し倒されて沈んだ湖の底 枯れ肌の葦に絡みつく泡 力の抜けた首筋は 君の親指を受け入れている 小さい頃に見た新緑を いまだに探していた 仕方がなかったボールペン 擦り切れた消しゴム跡 ぐちゃぐちゃに破けるのは、君 朦朧とした意識の奥に ぼんやり光る相対的な、緑 束の間の酸素 君の弱さをぼやく 「もう」 優しい人 足を君に絡ませる 涙を君に舐められる

          詩│酸素

          詩|袋小路

          嫌われまいと、袋小路 何度も通ったけものみち 小枝を折って森を抜け 右に行っても左に行っても 同じところにたどり着く 「ごめん」って送るか半日悩んだ 君の返事が届いたら 「なんだ!思い過ごしか!」 安心なんてできないけど 今はちょいと考えるのは後回し 考え出したら同じとこに着くから

          詩|袋小路

          随筆|北アルプス鉄道

          1.煌めき 昨晩の雨のせいか、松本の空は冴え渡っていた。 北アルプスの急斜面にも陽ざしが照り付ける。 今にも雪崩が起きるのではないかというほどに山肌の重さを近くに感じた。 濁って白波が立った薄川から一羽のオオバンが穂高へと飛んでいった。 貯金に余裕もないので、今日は散歩でもして一日を過ごそうかと考えていたが、ふと遠くまで“電車をやる”ことを思いついた。 今思えばすでに北アルプスに心が奪われていたのかもしれない。 早速、駅のパン屋で自家製カレーパンを購入。 そのあと切符売り

          随筆|北アルプス鉄道

          詩│余命

          元から分かっていた 明日には終わる 何が嫌なわけでもない 幾月か過ごした家の 鍵をカチャっと閉めた時 失くしていた喪失を思い出した 生きるという当たり前の 写真には映らない眼の揺らぎ 何一つ決められないまま 逆再生ボタンが押される 北アルプスに朧月 曇天の下、囲むような黒い影 懐に入り込んだ23時 白波の立つ川沿いを歩く

          詩│余命

          詩|宇宙の果てのおじいさん

          昔はゴミ溜めすら宝の山だった だけど中学生のある日 そこにおじいさんが捨てられているのを見つけた それもひとつじゃなくふたつ、みっつ、よっつ。 音もなく、 すべて分かってしまった気がした どうでもいいことと どうでもよくないことが 分かった人生はもう終盤戦 今日は、 君の胸のほくろに期待した 公表してしまえば 世界は驚くと思った 今日は、 夜の河川敷に期待した 危ないと聞いていたが 寒くなってやめた 今日は、 君の首筋に期待した 自らの手で殺めれば 何かが変わると思っ

          詩|宇宙の果てのおじいさん

          詩│サーフボード

          売れる理由が分かったときに 作家は売れなくなるんだってね なんかもうやる気が起きません 愛だの恋だの安心なんてありません 上に投げて落ちてくるのはみんな石ころ だからって動けなくなってる僕も石ころ まとまったお金がほしい でもお金があったら 大抵腐るんだよね 腐りたくもないなあ 人は本来陸の生き物 すぐに疲れて眠くなる

          詩│サーフボード

          詩|憎っくき仮面

          君はもう充分に苦しんだ 孤独を痛いほど味わった 自分でも分かっているはずだ なのにどこにも抜け道がないこと 空に向かって叫んでも 消えるどころか増していく 誰かに聞いてほしかっただけ 返ってきたのは好奇の目 優しいはずの人生が 憎しみばかりになっていた 諦めて。諦めて。諦めきれない 諦めて。諦めて。諦めきれない 中途半端な、現実逃避 中途半端な、人生ごっこ 君はもう充分に味わった 仮面のままじゃ愛されない 自分でも分かっているはずだ なのにどこにも捌け口がないこと 水平

          詩|憎っくき仮面

          詩|擦らないより

          君の声に背中を押されて ガラスを突き破ってみたけど だだっ広い高台に風が抜けるだけ きっともう手遅れなんだ 思うままに話しても 手を繋ぎ合っても 壁がこすれるだけで こんなもんなのかと 夢で見ていたほど 変わることもなかったけど 昨日までとは声の向かう先が ほんのちょっとだけ違うんだ 隠したいことがあるわけでもないのに 続く言葉に詰まるのは 君だからではないって 明日さえわからないから 簡単に信じて欲しくもないけど 心の奥を覗き合って 二人で無理だねって 笑い合ったから

          詩|擦らないより

          詩|映画館にも波は来る

          映画館にまで達した津波 不愉快だ 不愉快だけど、これでいいのだ あの頃しまったおやつ 賞味期限は切れていた 腐葉土で詰まった排水パイプ いくら水を飲んでも消えなかった頭の詰まりが 薬ひとつでごぽごぽ流れ出て行く 割れたガラスの間から 僕が外に溶けていくから 心臓はおやつの生産を開始した 油を呑んで死んだ人っているのかな あの世と現世の輪郭がなくなるのなら それはきっと正しいこと。 きっと正しいこと。

          詩|映画館にも波は来る

          詩|本能

          窮屈なガラスに象られた生きた軌跡 足掻いたそのヒビが美しく見えるのは 備わった本能なんだって気づいたのは 拳がガラスを貫いた後 血に染まった拳はずきずき 夢が現実になってふわふわ それを向こうで待つ人がいること どろどろに溶けた先には、音