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まとめ

24
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記事一覧

詩|嵐よ

大好きな嵐が
窓の外で唸って
木々は横倒しに
はしゃいでいる

鍵を開けたいのに
鍵を開けたいのに
内側から叩いても声が届かない深海水槽みたいに
「大丈夫だよ」って
届いているのかな

嵐よ
身体の前から後ろへ
風を通したいの
ほら
水をあげたいの
早くしないと
草が枯れてしまう
野原が死んでしまう
なのに
走っても
回っても
逆立ちしても
ついてくるだけの

空 洞 。

鍵を開けたいの

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詩『吐き出す息よ白くあれ』

熱ばかりあって温かみはない
炎天下の締め切った部屋で
縛り上げられているようだ
生ぬるい水では火照った身体は癒えん

ああ!
吐き出す息よ白くあれ!
細く長い溜め息に
命灯らんのならば
世情氾濫のままに
なんとつまらんことか

幼き病の全能感よ
キャステルパルトの響きの良さよ
社会の可笑しさに
染まった今こそが病
ああどうか狂える薬をおくれ
熱に魘されているのだ

いかん!
不幸にも恵まれ切ったこ

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詩│ジオラマ

ゼリーで固めて作った小川を
線路の下に潜らせた

自分で育てた街すがら
地図に頼らず100kmの旅
甲府の山裾、星を辿った

歩いた街は覚えてる
植えた草木も覚えてる
ベンチを求めて遠回り
7歳に見たきらきら星が
袋小路の魔法屋に

寂しさ植えてお花を咲かそ
手帳を裂いて折り紙にしよ
やりたいこと全部ほっぽり出して
予定にないことだけしていよう

袋小路を選んだ好きを信じよう

黒砂糖の詩

ただ今日という日を仰ぎ見んことを!
明日も我が身よ健やかなることを!
口寂しさは備えてあるというのに
飲んでも渇く夢のように
心現実にあらず!
掬うておるのに森の声が届かぬ
腹は食えば満たされるというのに
なぜ此れを満たす食いものが見えぬ
獣も泣くというのか!
食えぬ!
食えぬ!
食えぬ!

「どうして泣いてるの?」と聞かれても
赤子だってわからんから泣くのじゃ
お乳か?
おねむか?
よしよしか?

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詩│柔らかくて痛い

毎日空がきれいなら
この高鳴りもなかったでしょう

毎日幸せいっぱいなら
この涙もなかったでしょう

生きるために昨日も食べたけど
正直感謝はしてません

毎日墓へ通っていたら
あなたのことを忘れてしまうよ

草むらの上で書いています
おしりの下が傷みました

愛とは己の神経を
少しだけ移植すること

茎をなぞってつまんだ時
少しだけ痛くなること

けれど誰にも迷惑かけず
生きることなどできません

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詩│生き様

たい焼きは背びれから食べる派です
昔からなんですけどね、なんでなんでしょうね
なんだか先延ばし感ありますよね
腹びれと迷いますが、いきなり腸から行くというのは、何か大切なものを失ってしまいそうでね
いやその前に横長になってるものを横から行くなんてね、あはは、あんこがこぼれそうですよね、ケバブを下から行ったらこぼれますからね、あれは元々こぼれる設計ですけどね
気づいてしまったからには一旦リセットで

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詩│余命

元から分かっていた
明日には終わる
何が嫌なわけでもない
幾月か過ごした家の
鍵をカチャっと閉めた時
失くしていた喪失を思い出した

生きるという当たり前の
写真には映らない眼の揺らぎ
何一つ決められないまま
逆再生ボタンが押される

北アルプスに朧月
曇天の下、囲むような黒い影
懐に入り込んだ23時
白波の立つ川沿いを歩く

詩|宇宙の果てのおじいさん

昔はゴミ溜めすら宝の山だった
だけど中学生のある日
そこにおじいさんが捨てられているのを見つけた
それもひとつじゃなくふたつ、みっつ、よっつ。
音もなく、
すべて分かってしまった気がした

どうでもいいことと
どうでもよくないことが
分かった人生はもう終盤戦

今日は、
君の胸のほくろに期待した
公表してしまえば
世界は驚くと思った

今日は、
夜の河川敷に期待した
危ないと聞いていたが
寒くなっ

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詩|擦らないより

君の声に背中を押されて
ガラスを突き破ってみたけど
だだっ広い高台に風が抜けるだけ
きっともう手遅れなんだ

思うままに話しても
手を繋ぎ合っても
壁がこすれるだけで
こんなもんなのかと
夢で見ていたほど
変わることもなかったけど
昨日までとは声の向かう先が
ほんのちょっとだけ違うんだ

隠したいことがあるわけでもないのに
続く言葉に詰まるのは
君だからではないって
明日さえわからないから
簡単に

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詩│シャッター

午前二時の空が光った
薄肌色の太陽が昇った
葉っぱの縁がくっきり降った
柔らかいとこを汚された

電車がホームに滑り込んできた
わたしは悲しかった
今何時ですか
車掌は言った
終電後の臨時便だよ
わたしは悲しかった

詩│る。

「きょうかしょ」にはふたつ
いまのところ、やっつ
。がある
ぜんぶぬりつぶしきって
きょうかしょはもう
えんぴつまみれ
すきなひらがなは、る。

詩│鈍雨

雨が好きなんじゃない
森が好きなのだよ
洗濯板背負って
泥まみれの旅
葉っぱの先へ
ごくごくごく
指の先まで
潤ってさ
あとは
もう
ぼ─

街の雨は疲れるね
ドレスコードはぺかぺかの服
たらい回しの光が眩しい
傘で乱反射してもうわけがわからないよ

やっぱり

森が好きなのだよ
洗濯板背負って
泥まみれの旅
枯れ葉の音と
木の葉の音と
指の先まで
喜んでさ
あとは
もう
ぼ──

詩│あんた

わかる?わからんでしょ
って怒りたい

わかるわけないじゃん
って怒られたい

袖を引っ張って
肌に触れて
ああ、やっぱりあんたしかいないんだ
って
ひと月ぶりに思いたい

隣にいようとしないでほしい
思い出そうとしないでほしい
おもっっっきり、
嫌いになろうとしてほしい
どうせ。嫌いになれないから

すごい自信だね
って笑われたい

そりゃそうだよ
あんたを誰より見てんだから
って
笑ってやりた

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詩│欠けた



子どものように傷つけて
大人のように悔いる

子どものように抱きついて
大人のように離れる

子どものように夢を見て
大人のように正す

大人は可哀そうだと思った



何か
大切なものが欠けている

それは
思う気持ちだとか
考える力だとか
そういう能力の話ではなく

月の裏っかわのような
瞳の裏っかわのような
赤色と緑色のような
みんなが当たり前に見ている
美しいと思う感情
感動するス

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