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#002 / 海獣の子供


「見つけてほしいから光るんだよ」


公開当初から気になっていたけれど結局劇場には足を運べず2年が経った今、やっと観させていただきました。
STUDIO4℃様の作品は、恥ずかしながらはじめてでした。

絵柄が繊細で、でも迫力があって、どこか、ぐ、と歯を食い縛っているときのような、馴染みのある力みを覚える。日常の中の、異世界のような日常、そんなアニメーションに見えました。

直感的に、“いのち”を感じる物語でした。
誰かが死んだり生まれたりという描写は多くはないのに、この壮大ないのちの中に、数多のいのちが渦巻く宇宙を、簡易的に体験しました。

人間は、言葉にすることでしか、自分の気持ちを伝えられない。それはとても豊かで重要で、決して疎かにしてはいけないと思う瞬間に溢れているけれど、言葉はあまりにも無力だと感じる瞬間もまた同じようにある。
言葉にしなくても伝わればいいのに、って思ったり、言葉では伝えきれない、って思ったり。
その狭間で、今日も人間をやっているのです。


作中、鯨は、海の中で歌を歌い、海の生き物たちに様々なことを伝えていました。
その歌には、もちろん、人間が理解できる言葉はない。

同じように、大地や風、海や空は、言葉を持たない。
でも、いのちのことは、よく知っている。

世界には、言葉以外のものでわたしたちに働きかけているものが、数え切れないほどある。
形を借りて、そこに流れるいのち。
音を辿って、蘇るいのち。
温度を帯びて、わたしたちを包み込むいのち。

生命の誕生や宇宙に目を向けると、壮大なあまり、つい怯えてしまう。到底理解できない。わからないことばかりなことに、また怯える。
この映画を観ている間に、そんな気持ちにさせられるシーンがありました。


観終わってしばらくして、金子みすずさんの『蜂と神様』という詩を思い出しました。

-「蜂はお花の中に
  お花はお庭の中に
  お庭は土塀の中に
  土塀は町の中に
  町は日本の中に
  日本は世界の中に
  世界は神様の中に
  そうして そうして
  神様は小ちゃな蜂の中に。」ー

神様は、宇宙は、全てのものの中にある。
映画とリンクして、余計にそう思わされました。
出会えてよかったと思える作品がまた増えました。

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