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活動を見ていて、おおっ!と思う瞬間

今でも忘れられない、印象的な出来事があります。それは、3年保育「幼児の学校」事業を始めて間もない頃のことです。子どもたちと近くの海に行きました。その時は潮が引いていて、潮溜りが現れ、その潮溜りの中で小さな魚がたくさん泳いでいました。

魚を捕るのが好きな4歳の女の子が、小さな網を片手に魚を追いかけていましたが、魚の逃げるスピードが速く、なかなか捕まえることができません。しばらくすると、急にぴたっと網を止め、今度はもう一方の手で魚を網の方へ追い込もうとした。お、追い込み漁か?私は、そう思いながら黙って見ていましたが、やはり魚を捕まえることができません。しばらく続けていましたが、そのうち、網を置いてどこかへ行ってしまいました。

さすがに諦めたのかなと思っていたら、海藻をたくさん持ってやってきました。そして、網の中にその海藻を入れたのです。私は、何をやっているんだろうと思い、その子に思わず「どうしたの?」と尋ねました。すると「網を魚に見られている。だから海藻で隠すの」と言いながら、再び魚を捕まえることに挑戦し始めました。この様子を見ていて、私は、おおっ!これだ!こういうことが起きることを期待していたんだよ!と思いながらニヤニヤしていました。

社会人になって仕事に取り組んでいる時、前例を参考に行う仕事は簡単だけど、新しいことを一から生み出すことは難しいということを思い知らされ、今まで勉強してきたことはなんだったんだろうと、振り返りました。受験戦争を勝ち抜くための勉強は正解のある問題に速くたどり着くためのトレーニングをしていて、試験はその勝負をしている場だったと考えるようになりました。しかし、大人になって社会に出た時には、正解のない問題だらけです。そこでは勉強のように正解に早くたどり着く訓練は活かされないのではないか?むしろ、子どもの時から正解のない問題に取り組む体験を積み重ねる方がいいのではないか?というふうに考えるようになりました。

自分がやりたいと思っていることに取り組んでいると、うまくいかないことがあってもそう簡単には諦めません。どうやったらうまくいくだろうかと考え、他のことを試し、その反応を見て、またうまくいかなかったら、考えて次のことを試す、そんな繰り返し、試行錯誤が生まれていきます。その試行錯誤こそが、正解のない問題に取り組む体験といえます。だからこそ、海で魚を捕まえようと試行錯誤している4歳の子を見た時に、まさにこれだと思ったのです。

そのためには環境が大事です。子どもたちの好奇心や関心を程よく刺激する環境、それは土や水や木や火にいつでも触れられる環境であり、虫や魚などの生き物がそばにいる環境です。私たちはそういう環境を「自然豊かな環境」と呼んでいます。「自然豊かな環境」で子どもたちの好奇心や関心から始まる「やりたいこと」をやる、この組み合わせによって、正解のない問題に取り組む試行錯誤が生まれていくのです。これからも、そういう体験が生まれる場を作り続けていきたいと思います。

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