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私の心は私が守ってみせるからね

自分ではない誰かの人生を擬似体験できたり、現実逃避できたり、生きるうえでのヒントをくれたりするのがフィクションである小説であるなら、エッセイは、自分以外の人間の感性や生活を覗き見できる宝箱のようなもの。私にとって、小説やエッセイはそういう位置付けになります。

この記事では頑張って厳選したおすすめのエッセイを書き留めておこうかと思います。エッセイもかなり好きなので、選ぶのに苦戦しましたが、ジャンルや作家さん問わず紹介しちゃいます。

小説のおすすめの記事は、以前書きましたが殴り書きのような感想だったけれど、たくさん読んでもらえて嬉しいです。ありがとうございます。

ではさっそく。長くなるとだれてしまう気がするので、だいぶ割愛して感想や推しポイントを書きますが、本によっては長くなってしまうかもしれません。

では素晴らしきエッセイの世界へレッツゴーーーー。(?)


・春になったら苺を摘みに/梨木香歩

梨木さんは、「西の魔女が死んだ」という小説からかなり大ファンになってしまい、エッセイも読んでみようと、試し読みしたのがこちらです。ほんとうにエッセイか?と思ってしまうような、小説のような、そういった世界観や暮らしが綴られているエッセイです。

外国で暮らす様子や、そこで出会った文化、人々のことが細かく、梨木さんが感じた感情と共にきれいに真っ直ぐに、美しく綴られています。

エッセイってあまり現実逃避という感じはないと思うのですが、梨木さんのエッセイは、現実味も現実離れもどちらも感じられて好きでした。自分まで外国でそこに住む人々と暮らしているかのような気持ちになれます。

そして、日本でこうして平和に生きていられることについて一度立ち止まって考えさせられるような息を呑むできごとも書かれています。知らなくていいこともかもしれないけれど、知っておいた方が良いことがたくさん書かれているなと感じました。穏やかでありながら、気高い、そんな文章が大好きです。


・とるにたらないもの/江國香織

江國香織さんは小説も本当に核心をついてくるようなものばかりで大好きですが、エッセイは特に好きです。そのなかでもこの「とるにたらないもの」はそのタイトルの通り、日常の中に転がっている細やかだけれど、心や目に止まる素晴らしいものについて、書かれています。

使われている言葉がすべてやわらかくて優しく、ストンと心の中に落ちてきてくれます。

こうして項目がとても細かいので、適当に開いて好きなところからランダムに読むのもおすすめです。一日ひとつという読み方も良い。とるにたらないものこそ、愛すべきものだったりする、そういう日常のなかに隠れている幸せや美しさに気付かされます。

江國香織さんの表現力があまりに素敵なので、こういう見え方があるのだと、そういう文才的な面や感性的な面でも感動させられます。心が不安や憂鬱など、マイナスでいっぱいいっぱいになってしまうときに最適な一冊です。

心に荒波が立つたびに、何度も読み返しています。おかげさまでページには涙の染みがあったりますが。

自分はどういうものやことに幸せや充足感を感じるのか、改めて考えることができます。

・ひとり暮らし/谷川俊太郎

谷川さん詩人なので、主に詩集を読むことが多いですが、こんな素敵な詩を読める人は一体日常にどんな気持ちをもって、感じて、過ごしているだろうと、気になってエッセイも読み始めました。

谷川さんならではの物事の見方が私は大好きです。人によっては「ひねくれている」と思うようなことも綴られていますが、私はそこがほんとうに大好きです。

個人的な感想としては「普通ってなに」という鬱陶しい問いが、どうでもよくなる一冊でした。

自分が日頃感じているけれど、口に出してはいけないと憚られるような(勝手にそう感じているだけかもしれないけれど)ことが率直にそのまま書かれていて、なんだか勝手に「ありがとうございます」となった文章も多いです。

そして詩人ということもあって、言葉選びが最高なんです。言葉好きの人は谷川さんのエッセイの書き方すごく好きだと思います。詩を読むときのことも書かれていて、創作している人の気持ちを盗み聞きしているような気分になれるところもよかったです。

・人生って?/よしもとばなな


みんな大好きよしもとばなさん!(私が好きなだけ)。なんか結局よしもとばななさんの本に帰ってきてしまうというくらい、ほんとうにほんとうに大好きな作家さんです。どのエッセイにしようかすごく迷ったのですが、今回は本が苦手な人でもすぐに読み切ってしまうほど読みやすく、読み進めてしまうものを選びました。

小説も心を救ってくれるものが多いのですが、そんな作家さんがQ & A 形式で答えていくエッセイです。

友人や家族、恋人とか自分のまわりの人間に相談しても腑に落ちる答えがかえってこないような、誰もが抱えている悩んでいる問いに、真摯に向き合い、端的に答えてくれます。環境や人、物事を否定するような文章ではなく、受け止め方や考え方、捉え方を教えてくれるような一冊です。

この本の中には、必ず自分にも当てはまる悩みがひとつはあるのではないでしょうか。人間らしさを曝け出したような悩みや相談も多く、そこも好きでした。

自分がぐるぐると日頃から考えているようなこともあって、それに対して、よしもとばななさんはこういうものの見方をするのだなあと、感心したり、楽しくなったりもしました。

自分の思想に凝り固まってしまうときにもおすすめです。脳味噌がほぐれます。

・フーテンのマハ/原田マハ

原田マハさんの小説を紹介する前にエッセイ紹介してしまうなんて……。小説好きなものありすぎて紹介するものを選ぶのに時間がかかるのでいつか書きます。でも原田マハさんのエッセイもかなり最高です、平常心で読めるし、くすっと笑ってしまうような文章のテンポの良さと、言葉の並べ方。大好きです。

原田マハさんはとても旅が好きな方なので、さまざまな旅先での出来事を書き留めたエッセイです。旅行好きの方も楽しめる一冊だと思いますし、何より、読みやすい。イラストも散りばめられているので、情景もイメージしやすくて、楽しく読める一冊です。

そして、原田マハさんが書いている小説の原点になった話とか、場所とかも出てくるのがほんとーーーーーうに良いんです。これは原田マハさんのファンの方は共感してくれそうですが、「この本はここから生まれたのか!」と感動するし、鳥肌が立ちます。

そして、旅について書かれたエッセイなので、自分まで旅行している気分になれてこのご時世だからこそ推したいなと思いました。物書きになった経緯も書かれているし、仕事に対する姿勢や、天真爛漫な生き方も、読んでいるとワクワクします。

仕事についてずらりと書かれているわけではないけれど、私は生活や仕事のモチベーションがかなり上がりました。

・ナナメの夕暮れ、ほか/若林正恭

ここから少し芸人さんのエッセイ紹介続きます!

そうなんです、芸人さんのエッセイ、ほんとうにおもしろくて、絶対に読んでほしいです。書いている芸人さんに大ファンではない方でも絶対に「読んでよかった」と思うよな文章が詰まっています。

特に若林さんのエッセイは共感度が高すぎて泣きながら読んだ文章もあるくらいです。「わかる」「わかるわかる」「わかるーーーー」って声に出てしまうような考え方が多すぎる。そしてそういった自分の感じ方や性格をすべて丸裸にして赤裸々に書いてくれてありがとうございます、という気持ちになります。

「ナナメの夕暮れ」

ほんとうに、「みんなにはなれない自分」に苦しくなってしまったときに、これでも良いんだと思わせてくれるような言葉が多いです。若林さんと友達になりたくなってしまう人多そうです。

「ナナメの夕暮れ」

たまにnoteに吐き出してしまう自分の真っ黒な部分と似たようなところを、若林さんはエッセイに綴ってくれていて「ほんとうにね」と思ってしまうことが多くて、自分を責め立てるような気持ちから解放してくれました。

「ナナメの夕暮れ」は、輪の中に入れない人や、人といることに疑問を抱いてしまう人、人付き合いにうんざりしている人にもおすすめです。

「表参道の(以下割愛)」

こちらは比較的新しいエッセイ。海外にひとりで旅行に行き、経験したことをもとに若林さんが感じたことやそこからうまれた新しい自分の価値観がまっすぐにわかりやすい文章で書かれています。文章のところどころに写真もあるので、臨場感があってそこも好きです。

そしてやっぱり芸人さんだから、文章の書き方と盛り上げ方がすごく上手!読んでいてテンポが良すぎて気持ちよくなるし、そのときの情景や雰囲気を描く文章があまりにも上手で笑えてそこもクセになります。

そしてやはり、ナナメの夕暮れ同様に、若林さんの思想や考え方が書かれているので、共感度がかなり高いし、なにかと腑に落ちます。くわえて、自分が気づけなかったことへの回答をくれる文章も多いし、自分が言語化できないような苦しい気持ちを言語化してくれています。

人間やめたい と思った時に何度も見返しています。

・僕の人生には事件が起きない、ほか/岩井勇気


こちらもお笑い芸人、岩井勇気さんのエッセイです。本のタイトルの通り、何気ない毎日のことが岩井さんの目線で日記のように綴られています。若林さんのように核心をついてくるような共感度高すぎ!みたいな文章はあまりないですが、読み物のとしてかなりおもしろいです。

岩井さんのファンでも何でもないのですが、この方の文章の書き方が好きで2つともすぐに読み切りました。あ、そうです、読みやすさも推しポイントです。哲学的なことが書かれてなくてさっと読める本を探している人にも推したいです。

何気ない毎日を綴っているのに、感性と着眼点がとにかくおもしろい。壮絶な人生物語を書いたエッセイよりも、私はこういう日常を切り取った軽やかなエッセイの方が前向きになれたります。

そういう人、結構多い気がします。元気出したいときにもぜひ。

・東京百景/又吉直樹

又吉様ーーーーーー!又吉様は、フォロワーの方も好きな人いそうです(知らないけれど)。又吉様の文才はご存じの通り。小説では見られないような文才をエッセイで見られて勉強になりましたし、何より、東京で過ごした日々のことを鮮明に思い出しました。

誰かにとっては景色の一部に過ぎずただの背景になってしまうようなことでも、違う誰かにとってはその一瞬が、その景色が人生や考え方を大きく左右するような、かけがえのないものなのだと思わされました。

自分が日頃見落としてしまいがちな大切なことにも気付かされます。人間臭さを全面に出し切っているストレートな文章が多く、気持ちが沈鬱気味な話も多いのに、不思議と穏やかな気持ちで読めました。

「そうだよなあ」と思うこともあれば、「こういう考えや見方はしたことなかったなあ」と思うことがあったり、感情を揺さぶられたり。かっこ悪いことを書いているはずなのにかっこいい、そんなエッセイだなと私は感じました。

そして、くすくす笑ってしまうような書き方はやはりさすが芸人さんです!

・死にたいけどトッポキは食べたい/ペク・セヒ

韓国で話題のエッセイが最近SNSでもよく見られますよね。こういった啓発本に近いもの?はあまり読まないのですが、これはすごくよかったのでぜひ読んでほしいです。

うつ(鬱)病や不安障害を経験した方は、読んでいてあまりに自分と重なるところが多く気持ちがぎゅっと苦しくなるところもあるかもしれませんが、先生と著者のやりとりに心が少しずつ溶かされていくと思います。

人には言えないような自分の心の奥底にある汚いところ、真っ黒なところ、暗いところ、そういったところとの向き合い方のアドバイスをくれるような一冊でした。

著者が言うところに共感度が高すぎる悩みもあって、うぐっ、っと心臓が抉られるような情けなさを感じてしまったりもしますが、そんな自分を否定せずに生きて良いのだと、少し思えます。

嫉妬、妬み、孤独、不安、羞恥、怠惰、後悔、懺悔、そういった人間味溢れるものが、医者(先生)と著者の会話形式で繰り広げられていきます。

人として生きることに生きにくさを感じている人や、上手にやれない自分を責めてしまう人、他人を羨んでしまう人におすすめです。

・常識のない喫茶店/僕のマリ

最後はかなり明るく締めます!この本はエッセイ紹介するときがきたら必ず、何があっても紹介すると決めていた一冊です。もう声出してゲラゲラ笑いながら読みました。隣にいる彼もあまりにも私が楽しそうに読みから「俺も読む」と読んでいました。

そのくらいおもしろいです。活字を読むのが苦手な人でもこの本は絶対に読めます。読んでください。無条件に元気が出ますし、気が強くなれます。性格が暗い私でもです。わかりますか、このすごさ。根暗な人だって、底抜けに明るい人(私の恋人)だって楽しめるエッセイです。

全然綺麗な言葉が使われるとかではないんですよ、そこが最高なんです。この著者が実際に喫茶店で働きながら綴ったもので、「この喫茶店のイカれた人たちと友達になりたああああ」と心底思ってしまいます。

このエッセイをひとことであらわすなら、愉快。登場人物みんな良い意味でイカれていてぶっ飛んでいて、最高です。本のタイトルの通り「普通じゃない!」ってことが多いのですが、そこが最高なんです。

「ダメなことにはノーと言える胆力が必要だ」という言葉があるように、この小説は仕事で悩む人や働き方に苦戦する人にもぜひぜひぜひ読んでほしい。自我を大切に、自分の意志を守って、生きていいのです、と背中を押してくれます。

明るさと強さ、自由、すべてを兼ね備えたいままでにはなかったエッセイでした。

そして文章がかなり読みやすくておもしろい。文才に嫉妬してしまうくらいには。私も心に虎を飼って生きようと思います。

「くそが!」と大声で叫びたくなるようなことがあったときにもおすすめです。胸糞悪いということがあったときも、笑い飛ばしてくれます。

喋り言葉も多いので、むずかしい言葉は一切ないし、本自体の薄いのでさくっと読めます。友達にも結構すすめています。


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ここまでで文字数は、約6,000字。納期がせまっている仕事を夜において、私はこんな自己満足noteを楽しく書いているわけですよ。仕事の初稿をあげろと自分の中の自分が叫んでいますね。

頑張って書く文章は嫌いなので息抜きです。(息抜きばかりするな)

かなり絞ってこの10冊でした。ほかにも「うう、これは書きたい」と思うものがまだまだあるのでいつか書くかもしれません。

自分の記録として、こういうnoteって良いですよね。本をたくさん読むけれど、読んだ後に感じた気持ちを鮮度が高い状態で残しておくって結構難しいから、文字に起こしておくの好きです。

でもどの本も読み終えたあとに大きめの付箋に200字くらいの簡単な感想を書いて挟んであります。これおすすめです。手帳とかにずらっとたくさん書こうとすると、億劫になってしまうので。

要点やあらすじ、感じたことだけを端的にまとめる方法を探してこれに辿りつきました。

そうして、足りない点をこうやってたまにnoteで補ったりしています。

いやーすいません。熱量が大きくて簡単にまとめるという才能が欠如しています。そのくらいどれもおもしろいエッセイです。

やっぱり本って最高です。だいすきです。私の一番の味方です。ともだちです。孤独の相棒です。

ビール飲みながら書いたので誤字脱字はご愛嬌ということしてやってくださいね。


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