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『平日、仕事後、余裕なし』の私が、お風呂場で息子から学んだこと。

余裕がない。

仕事から息子達のお迎えに行き
家に帰ると、余裕がない。

何の余裕かと言われれば、
ぎゃー!もう18時半!ヤバー!という時間の余裕も
洗濯、風呂、ご飯、明日の支度…あぁもう…やること山積みー!という気持ちの余裕も
ぶはぁ…仕事疲れたー…という身体的な余裕も
なんかもう全て。

要するに、私の心の余裕がない。

で、何でそんなに余裕がないのかと言えば
翌日もまた仕事があるから。

仕事があるって事は、
息子達を起こす時間が決まってて、
そうなると
〝息子達をこの時間までに、
何が何でも寝かさなくては!〟
みたいな使命感が自分の中に沸々と生まれる。

更に言えば、
息子の睡眠時間が短いと
寝起きの機嫌が信じられないくらい悪くなる。
それがしんどい。
え?!同一人物?!と思ってしまうくらい
普段の天使のような息子とは真逆の
ここは地獄なのかと錯覚してしまう機嫌の悪さの息子の相手が、
ほんとのほんとに地獄なのだ。
そんな朝は迎えたくない。

要するに、私の都合で余裕がない。


帰ってから、最初にお風呂に直行する。

いや、直行したい。

直行したいのに、
長男の「ぼくさぁ、なんかお菓子食べたい気分なんだけど」と、
次男の「キェェェェェェ!ギャァァァァ!」
(訳:ハラヘッタ!ナンカクワセロ!)の大合唱で、
なかなか上手く直行出来ない。

そんな感じなので、
平日家に帰った時の我が家は
これまたほんとに
ここは地獄なのかと錯覚するレベルになる。

なんか食べさせるにしても、
キェェェェェェ!!!となっている次男を
大人しく手洗いさせるのは無理だし、
どうせ泣いてる状況なら
ちまちま手洗いするんじゃなくて、
もう全身洗っちまいたい。
すんません、ガサツで。

足の裏からこぼれ落ちる砂。
靴からこぼれ落ちる砂。
洋服からこぼれ落ちる砂。
私の心からこぼれ落ちる絶望。
え?何で息子達の体から
こんなに砂が無限に出てくるの?
手品か何か?
あぁ、そうか。
ここは砂地獄なのね。

イライラしながら砂を適当に払い、
次男を何とか泣き止ませ、
次の関門であるお風呂場へと向かう。

私は3秒で服を脱ぎ、
長男は自分で服を脱ぎ、
次男はお風呂に入るのを嫌がり、
服を脱がされて、また泣く。
オーマイガー。
1分前に泣き止んだのに水の泡。

「キェェェェェェ!ギャァァァァ!」
(訳:フロイヤダ!ハイリタクナイ!)

またもや泣き叫ぶ次男を見ていたら
イライラを通り越して、
だんだん悲しくなってくる。

なんで私って、こんな余裕無いんだろ。
なんで次男って、こんな泣くんだろ。
もうヤダ…もうヤダよー!

そんな気持ちで
すっぽんぽんで佇んでいたら、


パチ…

パチパチパチパチ…

素晴らしいクラシック演奏を聞いた後の紳士のごとく
長男がすっぽんぽんで真面目な顔をして
パチパチと拍手を始めた。

え?
どした?

すっぽんぽんで泣き叫ぶ次男と、
すっぽんぽんで拍手を始める長男と、
すっぽんぽんで途方に暮れる私。

謎の空気が風呂場を包む。


「…えらいねぇ」


パチパチと拍手をしながら、
真面目な顔をしたまま長男が呟く。

え?と面食らった顔をして、
「何が?」と聞く私に
くるりと向き直った長男は
大真面目な顔でこう続けた。


「次男くんは、泣くのが仕事でしょ?」


今度は泣き叫ぶ次男の方を向いて、

「次男くーん!
頑張ってお仕事してえらいね!
えらいえらい!」

パチパチと拍手を送る長男。

「ママは先生がお仕事でしょ?
ぼくは保育園に行くのと、お片付けがお仕事。
次男くんは泣くのがお仕事だよ!」

本当にその通りだなと思った。
そしたらそのまま
私の心に広がっていた地獄絵図が
ふわぁっと消えて無くなってしまった。

私もすっぽんぽんで拍手をした。

「次男君、偉い偉い!お仕事頑張れ!」

私と長男が拍手をするもんだから、
泣いていた次男もキョトンとして、
何だか分からないけど
ニコニコ笑いながら拍手を始めた。

気付いたら、
すっぽんぽんの3人が
お風呂場で笑って拍手をしていた。

変な光景。

だけど、何だか救われた。

次男が泣き笑いしながら手を叩く姿が愛おしくて、
長男が当たり前のように言った言葉に感動して、
やっぱり息子達は凄いなと思った。

さっきまで地獄にいたはずなのに、
あっという間に天国だ。

こういう瞬間に
〝やっぱり子育てって良いよなぁ〟って感じる。

息子達の表情や仕草や言葉は
私を易々と地獄にも落とすし、
ひょいっと天国にも連れて行く。

でもそれって、
それだけ自分にとってこの子達が
特別なんだな、と思う。

自分がこの子達の
親なんだな、と思う。

ここまでの関係って、
今まで誰とも築いたことがないから
不思議だな、とも思う。


「ママもえらいね!」

今度は長男が、私に向かって
ニッコリ笑って拍手をする。

「ママも、いつもお仕事頑張ってて
えらいえらい!」

あまりにも曇りなき瞳で言うもんだから、
うぅ…と泣きそうになってしまった。

そうなんだよ。
私って仕事頑張ってるんだよ。
そしてそれを
誰かに認めてほしかったんだよ。
きっと。

長男の言葉と拍手が
カッスカスだった私の心に
まるで高野豆腐の出汁のように染み渡る。

「ありがとう…
長男もいつも頑張ってて、本当にえらい!
ママも長男も次男も
みんな頑張ってるもんね!」

「そうそう!それにパパもね!」

私の心のケアだけでなく
ここにいない旦那のことまで考えるなんて
ほんとどっちが大人なのってくらい
出来た人間の長男。ほんと天使。
私もあと5回くらい生まれ変わったら、
君のような天使になれますかね?
5回じゃ足りませんかね?
ところで君、
やっぱり寝起きと全然別人だよね?

余裕がない。

そんな自分が、
お風呂から出た時には
いつもと違って
余裕のあるニコニコした自分になっていた。

相変わらず明日は仕事だし、
時間は無いし、
やる事は山積みだけど。

いつもと何が違うのかと聞かれれば
ありきたりな言葉だけど
『心の持ちよう』としか答えられない。

そう。
35年生きてきて思うのは、
人生で『心の持ちよう』って
かなり大事。

いつも心が良い状態でいれれば最高だけど、
上手くいかないのが現実で。

大きくなったり
小さくなったり
丸くなったり
トゲトゲしたり
灰色になったり
ピンクになったり
心は、ころころと忙しく姿を変える。

自分で思ってた心の姿と
実際の心の姿が違うなんてしょっちゅうで。
思い込みが心を決めつけ、
勝手に自分で苦しくなる事ってよくある。

時間がない
気に入らない
終わらない
出来ない
思い通りにいかない

あれがない、これがないって
足りないものばかりに目を向けると、
心の余裕はどんどん無くなる。

だからこそ、息子の教えてくれた

がんばってる!
できてる!
えらい!
すごい!
そのままでいい!

少し前向きに物事を捉えると、
心にちょっと、余裕が出来る。

不思議なもので、
心に余裕が出来ると
鉛みたいだった気持ちが
綿毛みたいに一気に軽くなる。
何か知らんが優しく出来る。
自分にも周りの人にも。

だから大切な人や自分には、
あなたは頑張ってるよ!って教えたり
そのままでいいんだよ!って認めたり
ありがとう!って感謝したり
そんな風にして
心に余裕をつくってあげたい。

お風呂場で息子が
私にしてくれたみたいに。



さてさて、
何も知らない旦那は
帰ってくるなり一言。

「げ!!!
なんでこんな玄関に砂あるの?!
ママちゃんと片付けた?」

カッチーーーーン!!!

我が家のリビングが
その後私の怒りで地獄絵図になったのは
言うまでもない。
ようこそ、砂地獄へ。

「砂が片付けられないくらい、
ママ忙しかったんだね!今日もありがとう!」

とか言ってくれたら、
私も天使のように接することができたのに。

いかん、いかん。

褒められない
言って欲しいこと言わない
感謝が足りない

ほんと旦那に対しては
面白いくらい〝ない〟ことばかり
目についてしまう私。
でも、求めてばかりじゃなくて、
もうちょっと自分から前向きな声をかけなきゃね。
『人の振り見て我が振り直せ』って言うし。
閻魔さまになってばかりでどうする。

「パパ♡
疲れて帰ってきたのに
ちょっとした汚れにもすぐ気付いて、
いつも家のこと気にしてくれてありがとう♡」

…ってなるか!アホか!
天使への道のりはめちゃくちゃ遠い。

もしかしたら、
息子達が私に1番教えたかったのは
『千里の道も一歩から』ってことかも。
まずは旦那に優しく。

肝に銘じます。

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