【天気】平年並みの「平年」とは?
■ 寒かった一日
今日は雨でなんだか寒かったですね。Twitterでも「#ヒートテック」がトレンドに上がっており、季節が一歩進んだ感じがしますね。
今日の東京の最高気温は16℃でしたが、これは0時過ぎに観測されたもので、日中はもっと低くて13℃付近だったようです。全国的にも平年より低く、今期最低となった所が多かったようです。11月中旬~下旬並みの気温となった所も多く、秋を通り越して冬に行ってしまったような感覚ですね。
■ そう言えば「平年」って何?
天気予報で「平年並み」や「平年より高い」という単語はよく聴くと思いますが、お子さんなどに、
ねぇねぇ、平年並みの平年って何?
といざ聞かれたら「うっ。。。」となる方は多いのではないでしょうか。今日はそんないざという時のためのトリビアとして、天気予報で使われる平年の意味について解説します。明日使いたくなるトリビアになると思いますが、決して自分から言っちゃだめですよ。聞かれた時にさらっと答えるのがインテリジェンスです。
■ 時間が無い人のためのまとめ
ちょっと書いていると長くなったので、まとめを先に持ってきますね!
【平年とは】
・平年値は1981年~2010年にその地点で観測された気温などの値の平均値
⇒ つまり平年は、1981年~2010年の30年間のこと。
・平年より高い/低い/平年並み
⇒ 今年の気温を1981年~2010年の30年分と比較して暖かい方から、
・1~10位・・・平年より高い
・11~20位 ・・・平年並み
・21~30位・・・平年より低い
・〇月並み・・・〇月の30年分と比較すると11~20位に入る。
・2021年に平年値が更新され、1991年~2020年の30年間になる。
⇒ それに伴いこれまでの「平年並」の基準が変わるため注意。
時間に余裕がある方は以下の記事にも目を通していただければ幸いです(^-^)
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■ 気象観測の仕組み
平年の前に事前知識として、気温や雨や風などの気象要素がどのように観測されているかをおさらいしてみましょう。天気予報などに利用される日本のオフィシャルな気象観測値は、気象庁が保有するAMeDAS(アメダス)という観測設備で観測されています。全国で約1300箇所あり、約20km四方に1つぐらいの間隔です。
観測機器と言っても、結構大きい5m四方ぐらいの草の上に気温や雨や風を測る機器があり、24時間365日体制で稼働しています(もちろんメンテナンス休止などはあります)。このアメダス君がかなり優秀な機械で、なんと既に約40年以上にわたり雨の日も雪の日も粛々と観測を行っているんですね。
アメダスは無人の自動観測設備なのですが、上の日本地図にある赤い点、気象官署と呼ばれる地点(155箇所)では、人が当番制で交代しながら、明治時代からなんと約140年にわたり観測を行っています。
最近よく聞く、「140年間で最も暑い」や、「観測史上最大を更新」等の言葉は、アメダスや気象官署などで観測してきた気温の中で最も高い、観測してきた雨量で最も多いなどの観測データを基にしたもので、「いやこの暑さは140年で一番っしょ!」という感覚的なものではありません。
ちなみに観測データは気象庁HPから無料で公開されており、誰でも閲覧&ダウンロードが可能です。
アメダスについては以下の記事にも書いていますのでご参考ください。
■ で、平年って何よ
はい。脱線しましたねすみません。今日のお題は「平年って何?」でしたね。いつも通りWikipedia先生の1文目を拝借しましょう。平年では引っ掛からず、平年値という言葉でありました。
平年値(へいねんち)とは、気温や降水量などの気象要素(気候要素)の長期平均の値のことで、ふつう30年間の平均。気候値とも言う。
はい。平年値は長期間の平均値で、普通30年間の平均という事です。思ったより長期でしたね。でも先ほどのアメダスも40年ぐらい観測しているので、この30年の平均値も問題なく計算できるるんですね。
■ 現在の平年値は1981年~2010年の30年間の平均
平年値は30年間の平均が使われているということでしたが、現在は1981年~2010年の30年間の平均値が使われています。ちょっとイメージしづらいかもしれないので実際に計算してみましょう。
例えば下の図は、名古屋の9月の平均気温を1950年~2020年まで並べたものです。この点線の1981年~2010年までの平均を取ったものが、現在の名古屋の9月の月平均気温の平年値24.1℃(赤線)になります。
ふむふむ。という感じですね。これは9月の平均気温のみの例でしたが、9月上旬の平均気温や、年間降水量や、12月の積雪深など、要素や期間ごとに色々な平年値(30年間の平均値)が計算されています。
■ 「平年より高い」、「平年並」、「平年より低い」の決め方
次はニュースでよく聞く、「平年より高い」「平年並み」「平年より低い」はとどのように決められているかを調べてみましょう。
気象庁のHPに解説がありました。まず平年値を作成している1981年から2010年までの30個のデータ(気温など)を集めます。次にそれを低い順に順番に並べます。そうすると下の図のように、1番低かった年から1番高かった年まで、順番に30個の観測値が並びますね。
※上の図では分かりやすいように平年値からの差(平年差)で並べていますが、普通に並べても順番は変わりません。
そして順番に並んだら、それを3分割します。つまり低い方から10個、真ん中10個、高い方10個の3つのグループに分かれますね。それがいわゆる、「平年より低かった」「平年ぐらいだった」「平年より高かった」という3つのグループです。
その3つのグループを作った後に、今年の気温を入れてみましょう。例えば先ほどの名古屋の例だと、2020年の9月の平均気温は25.4℃で、その数字を30年のデータから作ったグループに入れると上から4番目に入ります。つまり「平年より高い」グループですね。そのため名古屋の2020年の9月の平均気温は「平年より高かった」という事ができます。
このように、その年の気温や予測気温が、1981年~2010年の過去30年間で言うと上位何番目になるかという基準で、平年より高い・低い・平年並みが判断されています。
■ 〇月並み、とは?
このように各地点・時期で平年値を求め、今年がその30年分の中の上位何番目になるか、という基準で平年より高い・低い・並みの判断を行っています。今日の気温は「11月下旬並み」と言われていたのですが、これは、
今日の最高気温は、10月中旬の過去30年分の最高気温と比べるともちろん下位3分の1(33%)に入るぐらい低く、11月下旬の観測値と比較した時にようやく真ん中ぐらい(中位33%)に入るよ。
と解釈することができます。そうした基準で○月並みの判断を行っているんですね。
■ 10年前までの平均的な気候
はい。これであなたも平年値マスターです。明日から是非とも使ってみてください。最後にもう一つ、重要な情報をお伝えします。
平年値は過去30年分のデータで作られるというのは理解できましたが、よく考えると2010年ってもう10年前じゃね?!とお気づきの方も多いと思います。そうです。時の流れが早いことへのショックは置いておくとして、現在の平年値は10年前の2010年までの平均的な気候を表しています。
体感的に気候が変わってきたのは主に2010年以降の事だと思いますが、その近年変わってきた気候は今の平年値に反映されていないんですね。昔は猛暑日とか40℃超とかいう気温はなかなか聞かなかったですが、ここ数年はよく耳にしますよね。
だから重要な点として、
現在の平年値は10年前の2010年までの平均的な気候で、
直近10年の気候は反映されていない
という事は覚えておいてください。
■ 2021年に更新されます
そんな10年前の情報を使い続けるかというと、そうではありません。気象庁では平年値を10年毎に更新するというルールを設けており、来年2021年になると、1991年~2020年までの30年間で求めた平年値が新たな平年値として運用されます。
先ほどの名古屋の例で計算してみると、1991~2020年の30年間で求めた平均気温は24.5℃と、今の平年値より0.4℃高くなるようです。
もちろんこの数字は手計算なので、正式な値は来年5月頃の気象庁の発表を待ちましょう。
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するとどうなるか、もうお分かりでしょう。来年から「平年並み」の基準がこれまでとは変わります。下の図を見てみると、2020年の25.4℃は、現在の平年値(1981-2010年)で見ると上位4番目でしたが、来年から運用される新しい平年値(1991-2020年)で見ると上位7番目になるんですね。
まだ上位7番目だったので言い方は「平年より高い」のままでキープですが、来年平年値が更新されることで、これまでの「平年並み」の気温が「平年より低く」なったり、「平年より高い」と言われていた気温が「平年並み」と言われるようになったりという事が起きるようになります。
今の平均値が既に10年前のものなので、平年値が更新されると感覚的には今の平年値よりもしっくりくるようになると思いますが、これまでの平年並の基準が変わるという点は気に留めておいてください。
■ まとめ:平年とは
以上!長くなりましたのでまとめます。
【平年とは】
・平年値は1981年~2010年にその地点で観測された気温などの値の平均値
⇒ つまり平年は、1981年~2010年の30年間のこと。
・平年より高い/低い/平年並み
⇒ 今年の気温を1981年~2010年の30年分と比較して暖かい方から、
・1~10位 ・・・平年より高い
・11~20位 ・・・平年並み
・21~30位・・・平年より低い
・〇月並み・・・〇月の30年分と比較すると11~20位に入る。
・2021年に平年値が更新され、1991年~2020年の30年間になる。
⇒ それに伴いこれまでの「平年並」の基準が変わるため注意。
私自身も10年前は平年値の更新なんて全く気にしてなかったので、来年の平年値の更新が楽しみです。
それでは(^-^)
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