言葉の宝箱 0465【最初から夫婦になるて決まってるわけやない。縁があったら一緒になるし、なかったらそれまで】

『鴨川食堂④おまかせ』柏井壽(小学館文庫2017/1/11)

思い出の「食」を捜していただけなかったら、私はずっと過去ばかりを追いかけてしまっていたと思います。京都東本願寺近くの鴨川食堂には今日も人生の迷い人が訪れる。司法試験合格を目指して上京する日の朝に飲んだ味噌汁、大事な約束と一緒に贈られたおにぎり、道ならぬ恋の思い出となった豚のしょうが焼き、酸っぱくないお祖母ちゃんちの冷やし中華、弱小野球チームに食堂のおっちゃんが振る舞ってくれたから揚げ、幼い息子と最後に食べたマカロニグラタン。板前の父と探偵の娘がお迎えする、看板のない食堂にようこそ。シリーズ第４弾。


『味噌汁』帰りたいのに帰れない
『おにぎり』果たされなかった約束
『豚のしょうが焼き』夫婦は仲良ぅせんとあかん
『冷やし中華』夏休みとお祖母ちゃんの家
『から揚げ』負け犬青年と消えた料理人
『マカロニグラタン』すがるのは過去の思い出ばかり。
６話連作短編集。


・何かきっかけがないと、いつまで経ってもおんなじところを、
ぐるぐる回ってるみたいな気がします　P80

・心を込めてにぎるさかいに、おにぎりは旨いんです。
食べる相手のことを考えて、てのひらにようけ愛情を込めて、
いっしょうけんめいににぎる。
それが、おにぎりていうもんやと、わしは思います　P84

・約束いうもんは口でするもんやない。心でするもんや。
心で約束したことは、そう簡単に破れるもんやない　P89

・見合いっちゅうのは、
ええこともあるけど、不都合なこともあるもんでしてな　P105

・人の一生とよう似てるんや。
生き生きした青葉からはじまって、
真っ赤に燃えて、最後は燃え尽きる　P133

・料理っちゅうもんは、料理人と食べる側の相性でっさかいな　P151

・人は誰もひとりで生まれてこれまへん。
お父さんがいて、お母さんがいて。
そのまたお父さん、お母さんがおらんと生まれへんのです　P181

・最初から夫婦になるて決まってるわけやない。
縁があったら一緒になるし、なかったらそれまでのことや　P183

・勝負にはいくら負けてもいい。
でも人生には負けるな、胸を張って生きろ　P209

・野球の試合やとかは、勝ち負けの結果がすぐに出ますけど、
人生の勝ち負けてなもんは無いもおなじです。
あえて言うんやったら、勝ったり負けたりの繰り返しが人生です　P231

・人間は今が大事なんですわ。
歳月人を待たず、っちゅう言葉があります。
一日一日を無駄にせんように。
そのためには昔のことにこだわらんことです　P281