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言葉の宝箱 0199【家族は作るのは大変だけど、めったになくならない】

『幸福な食卓』瀬尾まいこ(講談社文庫 2007/6/15)

 主人公の父は教育大を出てすぐ地元の中学で働き始め、社会を教え21年目。小さな愚痴を聞いたことはあったが、
辞めたくなるような話は出たことはなく、いつも朝早く出勤し、
たっぷり残業、土日でもクラブで出かけ、それなりに充実そうに見えたが、五年前の梅雨に自殺未遂を犯している。
この事件を契機に、東大進学より父を愛することを最優先に
結婚を選んだ母は父の自殺する気負いですら気づかなかったと別居。
また唯一遺書を読んだ兄は地域で評判の天才児だったが、大学に進学せず、無農薬野菜を作る農業団体で働くようになる。
ふたつの出逢いと別れから、
離れてしまった家族の心が再び繋がっていく様子を描いた家族小説。
『幸福な食卓』『バイブル』『救世主』『プレゼントの効用』
四話連作短編集。吉川英治文学新人賞受賞作。

・この遺書、優れものなんだぜ(略)
真剣ささえ捨てることができたら、困難は軽減できたのに P121

・恋人も友達も何とかなるよ。あんたの努力しだいで(略)
でも、家族はそういうわけにはいかないでしょう?
お兄ちゃんの代わりもお父さんの代わりも
あんたの力ではどうすることもできないじゃん(略)
もっと大事にしろって思うし、もっと甘えたらいいのにって思うよ(略)
家族は作るのは大変だけど、その分、めったになくならないからさ。
あんたが努力しなくたって、そう簡単に切れたりしないじゃん。
だから、安心して甘えたらいいと思う。
だけど、大事だってことは知っておかないとやばいって思う P256

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