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言葉の宝箱 0490【やってみなくちゃわからない。できないかもしれないし、できるかもしれない。失敗したってかまわない】

『空に咲く恋』福田和代(文藝春秋2017/7/10)


イケメンなのに女性に触れると呼吸困難に陥る重度の女性アレルギー(おばあちゃん世代なら大丈夫)の三輪由紀。実家の花火屋を継げというプレッシャーと、やたら自分を追いかけ回す女の子たちから逃れるため放浪の旅に出た。流れ着いたのは新潟県山古志。そこでは生来のヘタレぶりを発揮し、村の人に世話になって現実逃避していることを自覚しつつも、それなりに平穏な毎日を送っていた。しかしある日、由紀の人生を変える出来事が起こる。由紀が街に出ようとした時、交通事故に遭遇したのだ。事故自体は小さかったものの、花火を積んだ軽トラックが巻き込まれていた。花火に引火すれば大惨事を招きかねない。慌てた由紀はすぐさま積荷を下すため手伝いに走り、事なきを得た。その軽トラックに乗っていたのは清倉花火店の跡取り娘清倉ぼたん。男勝りでずけずけものを言うぼたんに気の弱い由紀は圧倒されてしまう。だが、なぜかぼたんに対してだけは女性アレルギーが出ず、不思議と親近感を抱く。後日、事故で助けてもらったお礼にと由紀は清倉花火店が参加する長岡の花火大会に招待される。これまで花火から目を背けてきた由紀だったが、久しぶりに見た花火の美しさ、それを見上げる人々の姿に心を打たれる。そして自分の中にある花火への憧れに気づく。由紀は花火師になろうと決意するが、ぼたんを女性として意識した途端、彼女に対してもアレルギーが発症してしまう。おまけにぼたんにアプローチするライバルも出現。さらにせっかく帰った実家では家出に激怒していた父親に邪魔者扱いされる始末。由紀は花火師として独り立ちできるのか? 恋のゆくえは?
ヘタレ男子と元気女子が溢れる思いを空に打ち上げる
夏を彩る青春ボーイミーツガール物語。


・諦めるのは簡単だ。
自分の心を封印して、欲しいものに背を向けるだけでいい P55

・気軽にぽんと懐に飛び込んでくる子犬みたいだ P59

・花火は光と闇、音と香りが生み出す五感の芸術だ。
はかないけれど、それを目に焼き付ける者の、わずか数秒を、
まるで永遠のように引き延ばし、心に定着させる P65

・あって当然だと思っているものが、ある日、突然消えるのよ。
人間って馬鹿だから、なくしてやっと気づくわけ。
それが自分にとって、どれだけ大切だったのか P121

・僕は本当に、生きてきたと言えるんだろうか。
僕は、誰かの役に立ったのだろうか。
生まれてきて良かったと、言うことができるのだろうか。
――まだだよ。まだ全然足りない。僕はなんにもやり遂げていない。
なにひとつ。生まれてきた足跡を残していない。――こんなの悔しい。
何をぼんやりしていたのだろう。人生はこんなに短いのに。
いつどこでどんなふうに命を失うなんて、
誰にも予測がつかないものなのに。
もっと何かを――自分の人生を懸けられる何かを、持てば良かった。
自分にはできない。自分の力では無理。
そんな後ろ向きな弱気ばかり口にせず、
とにかく何でもやってみればよかった P132

・やってみなくちゃわからない。
できないかもしれないし、できるかもしれない。
失敗したってかまわないのだ P145

・誰かを好きになると、
泣きたい気分と、胸の奥がぽっと温まる気分と、
両方同時にやってくる(略)
好きという感情には、そういう二面性があるのかもしれない。
あんまり好きすぎて、辛い P147

・何より、楽な方向をめざそうとする、自分自身に負けられない P193

・人生なんてほんと、どんなきっかけで、
新しい道に出会うかわからない P211

・人間なんてね、無力なものなのよ。
どんなに必死にがんばっても、ダメなときはダメなの。
こうして手を合わせて、自分を透明にしておくの。
自分よりももっと大きな、自然とか、天候とか、
そういうものの存在を感じるの。
自分の小ささを感じて、はるかに大きなものに身をゆだねなさい。
それが、何が起きても心を壊さないコツだから P212

・人事を尽くして、天命を待つ(略)
いま必要なのは、そういう開き直りだなあ。
持てる能力の限界まで、やるべきことをやる。
その後は、天にお任せするしかないんだ。それがいわゆる<運>だ(略)
<運>には逆らえない。
熱心にやっていれば、必ず<運>が向いてくるとも限らない。
そんなに簡単なもんじゃない。
だけど、無心になって、一生懸命やってると、何かの拍子に、
こっちにふわふわと引き寄せられてくることがあるんだ P245

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