自由律俳句集「飛んでいる小蝿が俺みたい」
飛んでいる小蝿が俺みたい
蝶々見てる中学生
思ったより普通のことを言われた
和やかなムードに険しい速報
「昨日というか今日」と言う
ずぶ濡れで歩いている
人がいる街が暗い
切ってどっか飛んでいった爪を探す永遠
夕陽だと思ったら赤信号だった
猫だと思ったら枯れた雑草だった
毎年蚊を殺している
もう帰り道でなくなった道を歩く
おそらくだが鼻毛が出ている
ポケットから取り出したのはガラケー
おやすみと言ってから寝るまでの空気
洋梨が売れている
使用禁止の椅子にだけ陽があたっている
「カモシカを見たか」と聞かれた
傘で雪をつつく
なにかの虫が出た穴だ
帰ったのは自分の班だけ
捨てられたバイク三つ
風に靡く蜘蛛の巣
日本国旗みたいな厚化粧
窓の外から寒い音
灯油のにおいで思い出す
霰か雹か大粒の雨の音
風呂場で思いついて忘れた
桜の木だったんだ
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