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デザインのビジネス活用とは (Design Capability)

 ID (イリノイ工科大学デザインスクール) は、1/21から春学期に入りました。大学時代以来の、貴重な長い1ヶ月にも及ぶ冬休みはついに終わり、シーズン2のスタートです。
ところが、、日本からアメリカに戻って直ぐに風邪を引いてしまい、3週間近く鼻水と咳に苦しんでいました。極度に乾燥した気候なので、油断すると直ぐに喉をやられてしまうのです。Amazonで加湿器を2台購入し、家でも学校のデスクでもフル稼働させているのですが、授業が始まりストレスがかかるので、なかなか治らない。。マスクをかけて授業に臨んでいます。
実はこのマスクですが、アメリカでは非常に印象が悪いようなのです。アジア人は、風邪の予防や喉を守るために、気楽にマスクをしますが、アメリカでは相当に具合が悪く見えるようなのです。またアイコンタクトを重視するのか、顔や口元が見えないことも重大なコミュニケーションの障害になる気がしています。マスクをしていると、アメリカ人の学友が心配して、"Are you still sick ?" と毎日聞いてきます。そして、毎日これを飲めと薬を持って来てくれるのです。時を同じくして、コロナウィルスのパンデミック情報もあり、アジア人がマスクをしているのは、かなりネガティブに写るのかもしれません。なので、まだ咳が少し残っているものの、なるべくマスクは控えるようにしようと思います。
(ちなみに学校では、私ともう一人の日本人がデスク加湿器を使っているの、日本のスキンケア男子達と呼ばれています。)

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 さて本日は、デザインのビジネス活用について備忘したいと思います。
昨今、デザイン思考、果てはアート思考という言葉までもが流通していますが、クリエイティブな思考技術を何らかビジネスに活用するのだろう、というところまでは想像できるのではないかと思います。しかし、では具体的にどういう活用方法なのかと聞かれると、今一つよく分からないというのが正直なところです。
デザインとは、ユーザー中心の視点で物事を見ていくアプローチなので、ユーザーニーズをしっかり理解することで、戦略的に問題解決にアプローチできるということは先ず理解できます。しかし、本当にそれだけなのでしょうか? それだと別にデザイン思考でなくてもユーザー中心思考でいいと思います。多分に、世の中の期待値はさらにその先を求めているので、デザインをビジネスに活用することの意義をまだ十分に説明できていない気がします。
私の理解では、デザインはユーザー (またはカスタマー) 中心性だけでなく、人間中心性というよりハイレベル (高い概念レベル) での意義が、今のビジネスに求められて来ているのではないかと考えるのです。デザインは、多くの場面で科学やMBAの論理思考と対比されることが多く、人という生き物の性質を理解した、より人間の直感にフィットするオーガニックなアプローチ視点が重視されるようになって来ているのではないでしょうか。(*以下のような興味深い記事もあります。)

現代ビジネスの万能薬として席巻している論理思考ですが、そのフォーマットであるアリストテレスが生み出したと言われる "Reductionism" (要素還元主義: 物事を細分化して分析する思考) に、人々が行き詰まりを感じて来ていることが背景としてあるのだと思います。論理思考の特徴である直線的・機械的なアプローチのみでなく、様々なプロセスにおいてデザインの強みである人間中心のアプローチをとることによって、人の持つ潜在パワー (クリエイティビティ) を引き出し、 イノベーションを起こすことが可能になるのだと私自身は理解しています。簡単に言うと、デザイン思考のビジネス活用意義とは、人のクリエイティビティの開放にあるのではないでしょうか。
(そもそも人間とはそんなに論理的にはできてはいないからです。)

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デザインの歴史を少し振り返ると、初期の段階においてWord・Image (グラフィック) やObject (プロダクト)の領域のみに限られていましたが、現在は Strategic Design Planning (サービス・ビジネスモデル・ブランド・組織などの戦略) や、Culture System (社会システム・未来ビジョンなど)まで、広範囲のビジネス領域に応用されるようになって来ています。

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そして、下図はデザインのビジネス活用の全体像を表現しています。デザインは、Skill・Practice・Strategyの3領域から構成されます。Skillは、デザイナーとしての具体的なスキル (共感・スケッチ・図表・思考フレームワーク・文脈思考・ファシリテーション・ストーリーテリングなど)。Practiceは、それらのスキルをどのように使うかのシーン (テーマ設定・リサーチ・分析・統合・プロトタイプ・コミュニケーション) 。そしてStrategyは、ビジネスにおける問題解決のテーマ (プロダクト・インタラクション・サービス・ビジネスモデル・ブランド・組織・社会システム・未来ビジョンなど) を指しています。これら3つの次元を融合することを、Design Capability (Design Knowldge)の発揮といい、デザイン思考という言葉は Design Capability の発揮のことを包括的に意味している言葉なのです。

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 さて、デザインスクールという場所はどこもこのDesign Capabilityというものを教えているわけなのですが、特に ID (イリノイ工科大学デザインスクール)は、サービス・ビジネスモデル・ブランド・組織・社会システム・未来ビジョンなど、新領域への応用デザインに強みを持っていて、デザインストラテジスト養成の教育機関であると言うことができるかもしれません。
以前の備忘ログでも触れましたが、ミクロレベルでのデザインを、より広いマクロレベルの視野で統合していくメタデザインという役割が、今の世の中には求められていることが背景にあります。

 最後に、授業では "Design Capability介入させて問題解決を図る" という表現をよく使います。これまでと同じテーマに対する問題解決でも、デザインというレンズを通してアプローチすることで、人のポテンシャルを引き出し、それらを統合することによって、新たな打開策アイデアの創出と問題解決に結びつけるということを意味しています。
シカゴは本格的な冬を迎え、連日氷点下の気候になっていますが、デザインへの理解をさらに深めるために頑張って勉強したいと思います。

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