【ミニ雑学】世界で最も上演されている作品はシェイクスピアではない!
大学時代、とりつかれたかのように近代劇作品を読んでいた私ですが、そのなかでも心酔して調べていたのがヘンリック・イプセン。実は、世界で一番多く上演されているのはイプセンの作品だと言う事をご存知でしたでしょうか?悲劇を書けば右に出るものはいない!シェイクスピアくんよりも、彼の作品の方が上演されているのです。
今日は、そもそもこの人だれ?何を書いた人なの?と疑問をお持ちの方に向けて、ヘンリック・イプセンについて書いてみようと思います。
①ヘンリック・イプセンってだれ?
ヘンリック・イプセン (Henrik Ibsen) (1828 – 1906)
「近代演劇の父」と称されていて、ノルウェーの紙幣に肖像が使われていた…と聞くと、なんだかいきなり偉大な人に思えてきたのではないでしょうか?
ただやたらとあご髭を伸ばしちゃった系おじさんではございません。彼の作品は、「大衆主義」や「フェミニズム」などと言った実世界で起きているテーマを扱い、当時のヨーロッパの社会情勢を鋭く”否”を示したものばかり。そのため、現代でも高く評価されているのです。
②凄い人なのは分かったけど、具体的に何が凄いの?
イプセンが生まれたのは英国ヴィクトリア朝時代の19世紀。
この頃はフェミニズムという思想も特になく、男尊女卑の文化が潜在的に根付いていた時代でした。そこに初めて、芸術的視点から取り組んだのがイプセンだったのです。彼の代表作であり、世界で一番上演されている『人形の家 (A Doll's House)(1879)』は、「夫の言いなりでいる人生から脱し、独立し一人で生きていく強い女性」と、まさにフェミニズムをテーマに描かれています。
『人形の家』のラストシーンでは、主人公の女性が男性に別れ(離婚)を告げ、家を出て行ってしまいます。これは当時、大変波紋を呼んだそうですね。この劇の台本を読むなり、とある当時のドイツ女優は「あり得ない!」と演じるのを拒んだそうです。社会に対する疑問に、真向から勝負をしていった劇作家だったからこそ、当時は賛否が分かれる作品だったみたいですね。
③その他にも…現代に通じるテーマ「数の暴力」
イプセンは「数の暴力 (Tyranny of the Majority)」と言うテーマにも向き合っています。『民衆の敵(An Enemy of the People)(1882)』、イプセン劇のなかで私が一番好きな作品がその代表例です。
意外と現代でも通じそうな話ですよね。
後味が悪い感じのバッドエンドな終わり方ですが、このまま温泉事業を進めた村の末路までを敢えて描かず、観客に答えを求めたところも、より一層「大衆の恐怖」を警鐘・批判しているように思えます。
そう言えば、先日Netflixフィルムシリーズで『Don’t Look Up』と言う映画を視聴しました。
アカデミー賞4部門にノミネートされた映画ですが、これも「大衆の恐怖」がテーマの作品。ジャンルは「コメディ」なので終始笑えますが、本当に胸クソ悪くなる(のにどこか現代社会の縮図のように見え親近感が湧く)のでぜひ、会員の方で興味のある方は見てみてください(笑)
話が脱線しましたが、いかにヘンリック・イプセンが、彼の生きた時代、そして現代に影響を与えた人物だったのかが、少し分かりましたでしょうか?
これはひとえに、彼の生きた時代の社会的問題を、真正面から捉えた作品であり観客の心を大きく動かした作品だったからと言えます。そしてその姿は、現代でも廃れず、我々の心にチクチクと突き刺さってきます。イプセンの作品は海外の色んなところで映画化されていますので、ササっと内容を知りたい方・読書の時間がない!なんて方は、ぜひ映像でもチェックしてみてください▼
🎬『人形の家』
🎬『民衆の敵』
③最後に
最後に、本日紹介したイプセンの2作品から2つ、私の好きなことばを残して締めたいと思います▼