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「サバ缶のトマトパスタ」と「笛の味」

パズルの最後のひとかけらがない。

昨夜はむすめが涙を流してオイオイ泣いていました。一生懸命だったんでしょうね。かなしくて、くやしい涙です。ぼくはそれをなだめながら、自分の最後のくやし涙はいつだったろうと思いをめぐらせました。

しかし全然思い出せない。くしゃみして米が鼻の気管に入り込んでも、ダフトパンクの片われが爆発しても、まんじゅうを落としても、心躍らせて向かったお店が臨時休業だったときも、くやしすぎて泣いちゃうなんてことはなかった。

一生懸命にやればやるほど、うまくできなかったときに大きく傷ついてしまう。オトナはそれを恐れてどこか没頭しきれない。かなしい気持ちを傍観してしまう。みたいな傾向があるのかもしれないですね。

というところで、ひとつ思い出しました。くやし涙をひとつ。小学六年生の運動会にて、僕が応援団長をつとめた時のことです。

午前の部が終わり、各々お弁当を食べ終わると応援団の見せ場「応援合戦」の時間がやってきました。ココゾ、と気張ってグラウンドの中央に据えられたお立ち台(?)にのぼり深呼吸をひとつした僕は、重大なミスを犯していたことに気づくのです。

「あ、笛。忘れてきた。」

絶望です。笛がなければ団員は動けない。練習の成果をみんなに見せるための「はじまりの合図」が出せないのです。

そんな状況下で手を差し伸べてくれたのが、佐橋先生でした。先生は僕が困っているとみるや、みずからがその口に咥えていた笛を差し出し、「山下クン!これを!」と手渡してくれました。

ああ!天はわたしを見捨てていなかった!素麺やっぱり蜘蛛の糸!と、いきたいところですが、僕も年ごろの男の子です。定年を間近に控えているとは言え、女性がさっきまで咥えていた笛です。何百の学友、父兄が固唾を飲んで見守る中での

「公開間接笛」。

ゴクリ。一瞬の逡巡。色々な気持ちがものすごい水量で押し寄せる中で僕が下した決断は「元気よく吹く。」でした。何事もなかったかのように、我が笛のように高々と秋の空に吹き上げました。

おかげで応援団は練習の成果を遺憾なく発揮して、素晴らしい演技を見せることができました。団員一同、安堵し喜びに満たされました。ありがとう。佐橋先生。

しかし同時に、その笛のメンソレータムの香りとスースー感は、僕に「とても複雑な涙」を流させたのです。

「これが、、くやし涙、、、?」


はい、与太話もほどほどに。
トップの写真は「サバ缶のトマトパスタ」です。

にんにくの薄切りとタネを抜いた鷹の爪をオイルで温めて、玉ねぎの薄切りを炒める。たまねぎのはしっこが焦げてきたら、水を切ったサバの水煮缶を投入してほぐしながら炒めてトマトソース(カットトマト缶でも可)をくわえてひと混ぜ。煮詰めておく。

そこに硬めにゆでたスパゲッティーニと茹で汁少々を加え、火を入れながらあおり、半切りのミニトマトを加えてパスタにまんべんなく絡めたら皿に盛ってドライパセリをぱらり。完成。

なんてことない一皿ですが、材料も少なくて、しゃっと作れる。やっぱりこういうのが好きです。こどももよく食べます。

わが発明!みたいな顔で紹介しましたが、インターネットで調べると山ほどレシピがひっかかりますので、おいしそうなやつで作ってみることをお勧めします。おいしいです。


それでは、また明日!




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