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食事について

彼が彼の母国に帰ってからというもの、食欲がほとんど、全くといっていいほど無くなってしまった。もしかしたらわたしは、人生のうちこの4ヶ月間の食事を、楽しんでいたのかもしれないし、もしかしたら贅沢していたのかもしれない。

彼の祖国は中国で、中国の人は食事をとてもとても大事にするんだということを何回も教えてもらった。広い広い中国の中にいくつもある省ごとに、名産だったり、伝統の味が全くといっていいほど異なるらしい。彼はいつも油をたっぷりと入れて野菜や肉を炒めたものなどをご馳走してくれていたが、これが本当に美味しいのだ。普段、"フライパンにひっつかないように"ということだけを理由に油をすずめの涙ほど回し入れている自分にとっては、全く新しい経験や見方だった。

彼はわたしに、中国の普通の暮らしについて、沢山のことを教えてくれた。自分が何人かも分からないほどふわふわしているわたしにとっては、それらの決まり事や、風習は、とても興味深いものだった。

日本では、最低限のものを使って料理したものが好まれる傾向にある氣がしているけど、中国の、ありとあらゆるスパイスの入った、なんとも言えない香りの火鍋のスープなども、本当に本当に素晴らしく美味しいことに氣づいた。わたしはどちらも好きだと思った。夏の暑い日に扇風機をまわしながら火鍋を一緒につつくあの時間は、本当に平和で尊いものだと感じた。

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