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令和を事業・金融環境から整理してみる

この一年を通して、財務会計、業務オペレーション・システム、組織開発など色々なテーマに向き合ってきた。年末の足音が聞こえてきたこともあり、今一度、自分の頭を俯瞰してみる。

何を考えようかとノート開くと、ふとファンドのビジネスプロセスを書いてみた。

ファンドは「投資と経営」の交差点に立っている。

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今働いているSupershipは、M&Aをいくつか実施している会社である。今担当している領域は、このチャートの中でいえば、PMI領域に当たる。(色の濃い領域)

[溢れ話]
事業再生コンサルティングファームのアリックスパートナーズのプログラムのコピーが手帳から出てきた。いつか、こんなサービスを提供できるプロフェッショナルになりたいとFASの頃、眺めていたが、今は事業会社の中で、この表にあるいくつかのテーマを担当させていただいている。

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これはちょうどいいということで、今日のnoteは、金融と事業をマクロから考えてみようと思う。

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[事業-1] 事業経営の外部環境

事業経営の環境で、真っ先の思い浮かぶのは、就労人口(労働人口)の減少についてだ。具体的にはリンク先の記事で以下のように紹介されている。

政府の試算によると、日本の労働人口は2040年までに1,200万人も減少する可能性があります。つまり、労働人口が約20%減ることになります。
厚生労働省の予測では、日本の生産年齢人口は2017年の6,530万人に対し、2025年の時点で6,082万人、さらに、2040年にはわずか5,245万人にまで減少するとみられています。

これへの対応として、定年の撤廃、女性活用や外国人労働者の受け入れで数へのアプローチと生産性の向上という質へのアプローチで取り組みがなされている。(政府の政策を含め)

もう一つ思い浮かぶのは、事業サイクルの短期化です。と簡単にググってみると、これが事業サイクルの短期化を直接示しているのかはわからないが、30年以上の老舗企業の倒産率と10年未満の新興企業の倒産率は上昇傾向にある。

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さらに付け加えると、これは、終身雇用(と年功序列)の終わりを示すことであり、経営側も雇用される側も、これまでの働き方を見直していく必要がでてくる。

[金融-1] 金融側の外部環境

金融側のことを考えた時に、真っ先に出るのは、カネ余り。

流動性の高い通貨などの資産の供給量が需要量を上回る状態をさす。過剰流動性ともよばれる。経済活動が過熱気味となり、インフレーションの原因となるほか、余った通貨など資産が株式市場に流れ込み株高を招くことが多い。金融業務とは関係の薄い一般企業(ノンバンク)も貸出しに乗り出すことで地価高騰を招くほか、企業のM&A(買収・合併)が活発になる。
https://kotobank.jp/word/%E3%82%AB%E3%83%8D%E4%BD%99%E3%82%8A-1611514

投資に向けたいお金が増える一方で、投資を受ける側の数は限られている。したがって、金融側が投資をさせてもらえるように色々な工夫を行なっていく必要がある。

投資をしたいお金を持っているが投資先が限られている。出来るだけ、資金需要が増えてほしい。そういった時に、投資側は、新しいサービスが生まれること(イノベーション)や、今までは投資先ではなかったような先への投資の検討を始める。

[事業-2]組織の作り方

個人の働き方が変わる。これは働き方を変えられる社会インフラが整備され、大企業もいつまで続くかわからない。そんな可能性と必要性の掛け算から、少しずつ個人個人の価値観も変わっている。

可能性にフォーカスを当てる形で書くと、起業するためのファイナンスのインフラやバックオフィスのサポートは充実しはじめ、そもそも、事業検討を行うコミュニティや取り組みの広がりも見せている。これは、起業という形を取らず、副業という形であっても同様だ。

これを個人をエンパワーメントしている、あらゆる領域の民主化(自律分散化)が進んでいるということができる。

[こぼれ話]
分散したように見えながらも、結局、一部の個人に様々なアセットやフローが集中している。例えば、インフルエンサーと呼ばれるひとたちの現象もそう言える。

こう環境が変わると、マネジメントは従業員にコミットしてもらうことが非常に重要になる。一般的に言う所の「エンゲージメントを高める」と言うことだろう。しかも、これ、必ずしも「金」という報酬だけで高められるとは限らないところが重要だ。

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組織のストラクチャーやアサインだけでなく、関係性の質を高めていくための組織開発は非常に重要になってきている。

[金融-2]プレイヤーの多様化

2019年6月のCoral Capitalの記事「SaaS業界にはPEファンドのチャンスがある」がtwitterで流れてきて、なるほどなと。

アメリカのPE業界の人々がSaaSに興味を持ち始めた理由は、SaaSが予測可能で分かり易いからです。

PEは基本LBOで投資先のキャッシュフローを担保に資金調達するから、CFの安定性が非常に大事になることが背景にある。一方で、あくまで推測ですが、投資先を幅広く検討する必要があり、スタートアップ領域の中で比較的投資リスク(事業固有リスク)を取れるものを探さざるを得ない事情も透けて見えるところ。

また、2019年7月にPEのユニゾンがVCのグロービスと業務提携するというリリースがされた。こちらは、共同投資などユニゾンがスタートアップ投資を行うというものではないが、VCと連携するというのはなかなか興味深い。

ユニゾンは、CHCPを通じて、経営のベストプラクティス導入やCHCPグループとのシナジー創出を支援し、グロービスはベンチャーのテクノロジーを利用したより最適な病院オペレーションの構築を支援していきます。

このように金融プレイヤーの垣根も曖昧になってきた。

[こぼれ話]
VCは投資先にフレッシュマネーを入れますが、PE投資は基本的にフレッシュマネーないで支配権を獲得するものです。そのような中、PEがバリューアップするって実はとても難易度高いなと。(だからレバかけることが重要だったりするのでしょうね)

また、資金需要の小口化というトレンドも面白い。こちらは、この記事でも触れました。足元でお、ファクタリング事業のOLTA社やyup社が立ち上がり初めて、ここら辺の資金需要も顕在化していくのかもしれない。

さらに、スタートアップの資金需要への対応として、VCや事業会社の運営するCVCだけでなく、最近はデットの資金提供も増えているとのことである。

マネーフォワードがグループナレッジを最大限に活用したサービスで、かなり興味深い。

シードのデット調達支援といえばINQ(インク)の若林さん。

[事業-3]オペレーション(自動化と創造性)

労働人口の現象とSaaSの広がりによって、オペレーションの効率は不可避。そして、生産性を向上して、使えるようになった時間を、激しい事業環境に対応していくために使っていく必要がある。

CFO・経営企画領域のSaaSを開発しているログラス社の布川さんの記事で紹介されていた、バックオフィス効率化サービスまとめを参考で掲載。

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バックオフィスの生産性向上については、こちらの記事で少し触れてる。

中々、興味深いのは、オペレーションの効率化を行ない、空いた時間をイノベーションを推進するための活動に費やすというコンセプトには矛盾が横たわっている。

ここのジャンプをどのように解決していくのか。かなり興味深いテーマ。

また、働き方という面で、オンラインの活用という文脈もあり、これはこれで上記のオペレーション効率化という話とも繋がる。

オンライン・オフライン議論においても、オフラインにおける身体性というテーマがイノベーションに密接に絡み合っているのではないかと感じるところ。

[金融-3]オペレーション(与信手法)

簡単に言うと、トランザクションレンディングや、ソーシャルスコアのような今までの決算書ベースではない与信手法が注目されている。これはテクノロジーやデータの活用というメガトレンドに乗ったものと言える。

金融のオペレーションには色々と変革が起きているのだろうけど、すみません。この辺で。

さいごに

以上のように経営と金融の交差点に立つファンドのビジネスプロセスから、今の国内のマクロ環境について、メモをしてみた。わかっていたことばかりであるが、再確認できたこともいくつかある。

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個人的な今のテーマはオペレーションの効率化とできた余白の活用と矛盾と向き合う。その上で、個人・組織の創造性の回復やイノベーションを推進していく。資本主義とカルチャーの両生類。

タクシーに乗り込む時に、ふと振り返って、頭をぶつけてしまう驚きと照れくささのような感覚か。

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記事の元ネタのツイート

[Profile]
宮澤佑輔 | Supershipグループ 経営戦略本部 ビジネスプロセスデザイン室室長・事業管理部部長 | ファイナンス・ビジネスプロセス・組織開発 | PwC(監査)・KPMG FAS(M&A/Strategy)・サイバーエージェント子会社(暗号資産/ブロックチェーン)を経て現職 | 公認会計士 ヨガ講師資格保有

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