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2018年5月の記事一覧
エジプト象形文字の解読 偶然を運命にした瞬間
エジプト象形文字を、超人的な努力で解読したシャンポリオン(1790‐1832)は、学校の規則や興味のない科目は無視し、古代語を読みふける変わり者の少年だった。そして言語のことになると、際限なく研究しつづける情熱の持ち主だった。
ある本では、象形文字を解読した瞬間が、こう描写されている。
「シャンポリオンは興奮のあまり半狂乱になってパリの町を走り抜け、兄が勤める図書館に駆け込んだ。そしてぼろぼろ
クレタ文明 線文字B の解読
クレタ島で発見された線文字B の解読者といえば、イギリスのヴェントリス(1922-1957)だが、そのヴェントリスに先行した研究者がいた。
アメリカはニューヨーク在住のAlice Kober という古典文献学のカレッジ教師。彼女は線文字Bの解明に魅せられ、1930年代から18万枚ものカードを作成したが、1950年、解読直前で他界した。
ヴェントリスは彼女の業績を参考に、1953年、ついに解読に
集めて分類すれば科学になる? 八木克正氏の英文法観について
八木克正『世界に通用しない英語 あなたの教室英語、大丈夫?』(開拓社、2007年10月)
この本で八木氏は、言語研究の方法について次のように述べている。
「数学や理科など自然科学にもとづいた学科と同じように、英語が科学の裏づけをもった学科になるためには、科学的な言語研究の考え方が基本になければなりません」vii頁。
「科学の裏付づけ」をもち、「より効果的に自己表現ができる英文法」171頁 が
「教室英語」はたたきなおせるか? 八木克正氏の提案について
八木克正『世界に通用しない英語 あなたの教室英語、大丈夫?』(開拓社、2007年10月)
学校で教える英語の表現が古くさかったり、間違っていたりする実態を指摘し、今後の方向を提案した本。
著者は、教科書、参考書、問題集、入試問題などを総点検して、古くさい表現や間違った文法解説を日本の英語から排除すべきだという。
「その計画の実行のためには信頼のおける10名程度のいつでも相談できるネイティブ・
カタカナ英語と闘うピーター・バラカン氏の叫び おわり
発音は、日本人の英語の「特に大きなハードル」である。6頁。
「英語がかなり話せる方でも、ときどき話の内容がわかりにくくなることがあります。これはカタカナ発音をしているからで、…せっかく文法もわかっていて語彙もあるのにもったいない」6頁。
日本人の英語をよく知るバラカン氏の直言である。
私は思う。
日本人の英語の最初のハードルは、発音ではないか。
カタカナ英語と闘うピーター・バラカン氏の叫び 4
■余計な母音を入れないことで英語のリズムが出てくる。
本書には、余計な母音が耳障りになる例がたくさんあげられている。
・語尾に余計な[i]を入れるとリズムが崩れる。とくに語尾のgeは注意。
George, prestige
・「ホワット」のように母音のはいった「ホ」を入れるとおかしい。むしろ「ワット」のほうが聞きやすい。
what, when, where, why
・-tion
カタカナ英語と闘うピーター・バラカン氏の叫び 3
■ 有名アスリート、Jamaica の Usain Bolt は、「ジャメイカのユーセイン・ボウルト」。83、91頁。
「ジャマイカのウサイン・ボルト」といった奇妙な言い方が蔓延するのは、マスコミmass media に大きな責任があると、バラカン氏。
たしかに、マスコミが「ジャメイカのユーセイン・ボウルト」と英語風に言っていたら、そのように日本人は覚えたかもしれない。
ただ、日本人が「ジャ
カタカナ英語と闘うピーター・バラカン氏の叫び 2
■ つづりe の発音は要注意である。
アクセントがあるつづりe は、原則として「エ」[ε]と読めばよい。
Beverly Hills, Chevrolet, media, theory
ところが、アクセントのないつづりeは、容易に[I] [i:]という音になる。
renovation, erase, expect
また、子音字のあとの語尾につづりeをおくと、その前の母音が長母音化(アル
カタカナ英語と闘うピーター・バラカン氏の叫び 1
ピーター・バラカン『猿はマンキ お金はマニ 日本人のための英語発音ルール』(NHK出版、2009年1月)
あの見事な日本語を使いこなすイギリス人、バラカン氏は30年以上日本に暮らしているが、いまだに違和感があるのが日本人の英語の発音だという。
「カタカナで書かれる外来語はもはや英語ではなく、日本語の一部になっていることももちろん知っています」5頁
というバラカン氏だが、カタカナ文化にモノ申す
Meghan さんは本当に「メーガン」さん?
さきごろ英王室のヘンリー王子と結婚した Meghan Markle さん。
Al Jazeera を見ていたら、アメリカ人だというだけでなく、離婚歴があり、母親がアフリカ系(biracial)だということが、英王室の歴史にとってどういう意味をもつかということが話題になっていた。
ところで、Meghan という名前のことだが、日本では「メーガン」と報道しているようだ。
じつは、英語には「エー」
日本語に訳して満足? "英文和訳" の落とし穴 おわり
上の英文に登場する冠詞と-s に注目してみよう。まず、
The pope has sent a strong message
の部分で、the pope を「法王は…」と訳した瞬間に、the の意味を無視してしまう可能性がある。このtheは、「現職の」とか、「この記事の対象になっている特定の」といった意味を表すために、英語では必要な the である。
次に、strong message には
日本語に訳して満足? "英文和訳" の落とし穴 その1
「英語がわかるとは、日本語に訳せることだ」と思っている人は多い。
この考えの、どこが間違っているか。
これはちょっとした難問なので、やや丁寧に説明してみよう。
①「日本語に訳せたら、英語がわかったことになる」というのは、直接には、「日本語にしたから、わかった」ということ、つまり、「日本語がわかった」ということである。とはいえ、元は英語だから、英語が間接的に「わかった」ことにはなりそうである。
パリの"kaki"、ニューヨークの"adzuki" は、なぜ外国語になった?
パリに行ったら、露店に柿があった。見ると、「kaki」と書いてある。
「カキは日本語ですよね」
そう売り子に言ったら、けげんな顔をして、
「kakiはフランス語だよ」
と答えたという。人に聞いた話である。
もう一つ、ちょっと似た話。
和菓子の老舗「虎屋」がニューヨークに支店を出したときのこと。
和菓子は小豆(あずき)の餡(あん)を材料に使う。ところが、欧米では豆類に高級なイメージがな
英語の音象徴 sound symbolism
世界の言語には、「イ」系の音で「小さい」とか「っぽい」といった概念を表す例がかなりあるという。
英語なら、John の愛称が Johnny だったり、oil っぽいことを oily (油っぽい)と言ったりする。
これは、「イ」というとき口が狭くなるので、この身体感覚が「小さい」とか「ちょっとそれ風」という概念に結びついたのかもしれない。
このような発音と概念の結びつきは昔から知られていて、