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山際響
2021年6月23日 17:37
そのマンションは、人通りのまばらな、ニュータウンの大通りから離れた、この世の果てのような、静かな場所にあった。二階建てで象牙色の壁を持ち、白い扉がそれぞれの階に三つほどあった。扉は見えないが、一階の左端には小さな部屋が一つ付いていて、マンションの綺麗な長方形のシルエットを少し乱している。鉄筋コンクリート造で造りはしっかりしており、柱や壁は厚そうだった。周囲には空き地が広がり、ぽつぽつと一戸建てが
2020年9月9日 20:00
雨が来る、と言語学者は空を見上げ、思った。 前方にはじっとりとした熱帯雨林に覆われた島、雨島が見える。緑の中からは高層ビルのような、雲まで届く大きな樹が突き出している。樹の幹には人工的な正方形の穴がいくつも空いていて、人が住む事も出来そうだった。 帽子のような灰色の雨雲に、島はすっぽりと覆われていて、樹の上方は雲に隠れて掠れて見える。 彼女が想像した南の島とは程遠く、陰鬱でじめじめとした印