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山際響
2023年2月20日 17:39
アントニオ・サラザールは独裁者である。 いや、「であった」と言うべきか。 彼がハンモックで昼寝の途中、落下して頭を打ち、意識不明の間に、世界は、ポルトガルは変わってしまったのである。 腹心のカエターノに政権が移り、サラザールは目覚めるまでの二か月間の記憶とともに、権力を喪失した。 一九六八年の事であった。サラザールこの時、七九歳。 側近は、その事実がこの元独裁者には衝撃的すぎると
2023年2月20日 12:41
「イルカなど、消さない」と彼は静かに、断言した。 ベッド脇の電気スタンドのような駅前のパブで、彼はベルギービールを飲んでいる。ピンク色の象が描かれているデリリウムという名の奇妙なビールの瓶だった。 彼はもう一度言った。「イルカなど、消さない」 彼は満足げに、ビール瓶を傾け、ゆっくりと、ビール瓶の象ではなく、その不思議な文字をなぞる。「デリリウム、というのは、せん妄状態の事だよ」 彼は言