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山際響
2019年7月7日 07:44
一年ぶりに見た父の姿は、死に向かって突き進んでいるとは言い難かったが、生き生きしているとも言えなかった。庭にある少しくたびれた木製の椅子に座り、鏡のように磨き抜かれた湖を眺めていた。湖面は青空と白い雲を映している。時々起る小さな波紋は、そこに魚が生息している事を示していたが、噂にのぼる湖の怪物の存在を物語るものはなにひとつなかった。 私も二十年ここで暮らしたが、一度たりとも怪物を見た事はないし