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青木夕海
2022年9月6日 20:15
春までは夢をみていていいですかピントをちょっとぼやかしたくて手記としてアコーディオンがひらかれるモラトリアムにながれた曲を紙で切る傷あとみたいな雨がふる金魚のいない鉢にめがけて潔癖な経験しかないひとびとの夢が集まる標本室にたんぽぽの血が白かったと知るときの昔の自分に会えるとしたら
2022年8月29日 21:39
雨粒にうたれて跳ねるあれはそうハープになれず揺れている糸ベッドから起きあがるとき柩から起きあがるのをちょっと感じる病室で誰かが死んだ音がするとても静かにナースが吐く息凍るって苦しいだろう胸もとにドライアイスを置かれる罰は広大なネモフィラ畑のような火に身体はそっと燃えてってほしい世界中こうもり傘の夜のなかおやすみだれか私はここです
2022年8月25日 18:57
切り抜きで推しの勇姿をくりかえしみる休日のしんどい朝に咀嚼音だけがほんものヴァーチャルの世界に秋の匂いがしている推したちが今日もてぇてぇドット絵の花火があがるのきれいと思う虚構の姿だから喋られることたくさんあって息継ぎをする人類総二次元時代 声帯のぬくもりだけで射精するひといつもどおりのつまらない自分だし 仮想でまとう鎧は重い脱ぎ捨てた鎧をただしく弔ったひとにだけ吹く追い風
2022年8月21日 19:47
まぶたから仄かに透けるひとみにも光は当たり初夏がくる男でも女でもいたくない、なら海がいい。白い梢に成り果てるまで。水泡はふいに破れる新しい皮膚のつめたく覗いていること美しく死ぬことはない美しく見せかけられるひとがいるのみScalpel それはあなたに開かれるためだけにある光なのです